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05月30日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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 日本は現在、H2Aロケットのあとつぎとなる新型ロケットの開発に乗り出しています。計画通りいけば、2020年度に試験機が飛び立ちます。新しいロケットには、何が求められているのでしょう。重要な役割を担う3人に聞きました。朝日小学生新聞で連載の「落第忍者乱太郎」の乱太郎らが質問、学園長の大川平次渦正(おおかわへいじうずまさ)先生らが解説します。(朝日小学生新聞編集部・富貴大輔)

  • 【1】新型ロケットって、どうして必要なの?

  • 内閣府宇宙政策委員・山川宏氏

     日本が必要な時に打ち上げられる力を持ち続け、宇宙利用を拡大するために必要です。ロケットは日本を元気にする技術で、今後も維持・発展させる必要があります。

    [詳しく聞く]

  • JAXA・遠藤守氏

     ロケットの大きな使い方は、宇宙を調べることと利用すること。科学技術立国として、当然持つべき技術です。常に挑戦していかないと世界トップグループにはいられません。

    [詳しく聞く]

  • 三菱重工・浅田正一郎氏

     今のロケットは値段が高くて他の国に使ってもらえません。新型ロケットを開発しないと、他国のロケットとは勝負できないんです。

    [詳しく聞く]

  • 解説

     世界で1年間に打ち上げられるロケットは70~80機。そのうち日本は4機ほどじゃ。世界のお客さんに売りこむには、ヨーロッパの「アリアン」やロシアの「プロトン」が強敵じゃな。最近はアメリカの「ファルコン9」が、打ち上げ費用が安いからと人気が出ておる。ヨーロッパやロシアも新型を計画中なんじゃ。

  • 【2】有人ロケットがあったらいいのになあ

  • 内閣府宇宙政策委員・山川宏氏

     今は日本単独で持つ必要はないと考えています。人を運ぶかどうかよりも、宇宙を生活にどんどん役立てることが大事です。

    [詳しく聞く]

  • JAXA・遠藤守氏

     国の方針としては、有人ロケットは議論している段階です。やるとなれば新たな挑戦になりますが、われわれとしてはやれると思っています。

    [詳しく聞く]

  • 三菱重工・浅田正一郎氏

     今は宇宙で行く場所がないですから、必要がありません。これが月や火星など行き先ができたら必要になるかもしれません。結局、需要の問題です。

    [詳しく聞く]

  • 解説

     人類で初めて宇宙に行ったのは旧ソビエト連邦(いまのロシア)のユーリ・ガガーリン飛行士だ。1961年のことだった。日本はまだ、人を宇宙に運んだことはない。ただ、宇宙に行った日本人飛行士は多いのだぞ。日本人飛行士の累計宇宙滞在時間は、アメリカ、ロシアについで3位となっておる。

  • 【3】未来のロケットの姿ってどんなのだろう?

  • 内閣府宇宙政策委員・山川宏氏

     次世代のロケットは、確実に、少なくとも一部は再使用されるものになるでしょう。理想は飛行機のように、燃料を入れて飛び、降りてくるもの。

    [詳しく聞く]

  • JAXA・遠藤守氏

     宇宙に行くための技術は、ガガーリンの時代から原理的には変わっていない。未開拓の分野です。将来はまったくちがう発想で、形も全然ちがうかもしれません。

    [詳しく聞く]

  • 三菱重工・浅田正一郎氏

     毎日打ち上げの時代になれば、今のような使い捨てはありえません。今は、年に数回しか打ち上げないので、繰り返し使えるロケットは需要がないのです

    [詳しく聞く]

  • 解説

     宇宙と地球を往復して、再利用できる乗り物といえば、かつてはアメリカのスペースシャトルがあったんです。しかし2011年に引退。使い捨てロケットよりも費用がかかってしまう、というのが大きな理由でした。

  • 【4】ロケットの開発者になりたいな

  • 内閣府宇宙政策委員・山川宏氏

     コミュニケーション能力が求められます

     ロケット技術者にはエンジン、構造力学、コンピューター、電気のことなど、さまざまな知識が必要です。小学生なら基本的には、算数と理科が大切ですね。

     個人的に大事だと思うのは、コミュニケーションの力です。国内外ふくめて、大勢でチームをつくってやっていくでしょうから。英語も大事ですが、まずは国語です。国語がしっかりしていないと、意思疎通できませんからね。

  • JAXA・遠藤守氏

     何にでも興味を持って

     私たちの頭にはもう「ロケットはこういうもの」というイメージがある。でも今の子どもが大きくなって、どうやって宇宙に行こう、仕事をしようと考える時、同じ発想とはかぎらないでしょうね。

     子どものうちは何にでも興味を持ち、どうしてかな?と思うことが大切じゃないでしょうか。何を勉強すればいいかと聞かれても、「勉強しなさい」とはしょっちゅう言われているだろうからね(笑い)

  • 三菱重工・浅田正一郎氏

     なぜ?と考え続けてほしい

     自然でも機械でもいいけど、なぜこうなってるんだと不思議に思うことですね。そして疑問は追求していく。そうすれば理科が必要になって、楽しくなってきます。

     私は機械にめちゃくちゃ興味があって、テレビでも何でもよく分解しました。ばらした後、元にもどらないこともけっこうありましたよ(笑い)。最近の機械はばらせなくなっているから、残念ですね。

「落第忍者乱太郎」の画像はいずれも © 尼子騒兵衛/朝日新聞出版/朝日小学生新聞

 <新型基幹ロケット> H3という呼ばれ方をすることもあるが、名前は未定。H2Aロケットと同じ液体ロケットで、高さは約60メートル。打ち上げる人工衛星によって、燃料が入っている補助ブースターの本数を増やしたり減らしたりして対応できる柔軟さが特徴。通信衛星などが周回する静止衛星軌道(高度3万6千キロ)に2~6.5トンの衛星を運ぶ。打ち上げ費用はH2Aの半額の約50億円、発射場の年間維持費も半額にすることをめざす。

(イメージ図はJAXA提供)

  • ◆山川宏(やまかわ・ひろし)さんに聞く

     内閣府宇宙政策委員(京都大学教授)

     【宇宙政策委員会】政府の機関で、内閣府に設置されている。宇宙にかかわる日本の方針、その方針に必要な予算の方針を決めるのが仕事。

【1】新型ロケットって、どうして必要なの?

《山川さん》 大事なのは、日本が必要とする人工衛星を、必要な時期に打ち上げられることです。技術と、宇宙産業がしっかりしていないといけません。

 宇宙利用の拡大も大切です。宇宙を私たちの生活に役立てるには、打ち上げる衛星の数を増やす必要があります。

 今のロケットで問題になっているのは、ほかの国や民間会社のロケットよりも値段が高いこと。これが新型ロケットの開発に着手した理由です。H2Aの開発は20年近く前で、これを改修しても、値段を安くしたり、世界の新しいロケットに比べて優秀なものにしたりできません。

 抜本的に新しいデザインで、人工衛星を使う人にとって便利で、低価格のロケットをつくる。すると技術者や産業を維持でき、生活に貢献する衛星を多く打ち上げ、ほかの国や民間会社がロケットを使ってくれる——と全体がうまく回るという判断がありました。

 国や産業、生活の面で、宇宙は、日本を元気にするきっかけになります。偶然ですが、最初の試験機が飛ぶ2020年には東京オリンピックもあります。五輪といっしょに、日本を元気にできればと考えています。

【2】有人ロケットがあったらいいのになあ

《山川さん》 有人ロケットが今は必要ないと考える最大の理由は、かかるお金ですね。新型ロケットは、初号機までの開発費が1900億円。H2からH2Bまであわせて4500億円くらいかかったのを、思い切って減らしています。打ち上げ費用も、現在の半分、50億~70億円をめざしています。

 それは無人だから安くできるのであって、人を乗せるとすると、安全性を保つためなどで「立派なつくり」にする必要があります。おそらく何倍もかかるでしょう。いまの日本の状況では考えられないお金になる。

 厳しい言い方になりますが、月や火星に人間を一人送るかどうかより、宇宙をたくさんの人々に役立てることが大事です。宇宙開発全体のなかでバランスをとる必要があります。

 ただずっと開発しないと、有人技術を持たないままになってしまいます。国際的に共同で開発するロケットに参加することには、メリットがあると思います。

【3】未来のロケットの姿ってどんなのだろう?

《山川さん》 今度の新型ロケットは、「究極の完成品」になると思います。液体と固体の燃料で、垂直に上がるロケットとして、完成形に近いものになるはずです。

 その次の世代、20年~30年後のロケットは、一部か全体かはわからないが再使用されるものになります。その時のロケットの形や飛行方法には議論がありますが、再利用する方向にいくことはまちがいありません。

 背景にあるのは、今度の新型ロケットと同じで、いかに安全に、低価格な方法で宇宙に行くかということです。

 ロケットや宇宙には、夢やロマンがありますが、役に立つことが大事なんです。安くないといけません。ロケットが役に立つものじゃないと、続かないのです。結果として、夢の部分も発展しなくなります。

  • ◆遠藤守(えんどう・まもる)さんに聞く

     宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙輸送ミッション本部長

     【JAXA】 文部科学省、総務省などが監督する独立行政法人。ロケットや人工衛星、航空機などの研究、開発などを国の方針に沿って行う組織。宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団がいっしょになって2003年に設立された。

【1】新型ロケットって、どうして必要なの?

《遠藤さん》 日本のロケットは、小型はイプシロン、大型はH2A、H2Bとあって、新型を開発しようとしています。

 そもそもどうして日本が一生懸命やるのかといえば、宇宙を知り、宇宙を使うためには、実際に行くことが非常に重要だからです。宇宙からは、温暖化や鉱物資源、海の状態など、地球を広い範囲で調べることもできます。

 ただ、宇宙にずっといるのは大変です。空気の抵抗がなくなる高度300キロ~400キロより上を、秒速約8キロで回ってようやく宇宙にいられます。それを実現するロケットは、究極の乗り物だと思います。その技術が日本にあるから、宇宙を知ったり使ったりすることを、誰かにお願いしなくても、自分の意思でできるのです。

 日本は科学技術立国といって、新しい技術を生み出して、豊かな生活をめざしています。そういう国として、ロケットは当然持つべき技。宇宙開発にかぎりませんが、新しいものに挑戦し続けないと、世界のトップグループにはついていけません。

【2】有人ロケットがあったらいいのになあ

《遠藤さん》 将来、もっと宇宙を知ったり使ったりするために、人間がもっと進出することになるでしょう。今は技術的に難しいから行く人が少ないが、宇宙に出て行くのは人間の宿命のようなものです。

 有人ロケットを可能にする技術を持っている国はそれほど多くありません。共同で宇宙開発をしているヨーロッパを一つと考えると、アメリカ、ロシア、中国、インド、それに日本くらいでしょうか。

 ただ現在、日本は国の方針として、有人ロケットはまだ議論の段階です。

 開発するとしたら、新たな挑戦になります。われわれは技術的にはできると思っているし、将来日本が開発することもあるだろうと思っています。新型ロケットについても、有人ロケットに発展できるような高い安全性、信頼性を考えながら設計しようとしています。

【3】未来のロケットの姿ってどんなのだろう?

《遠藤さん》 ガガーリンの宇宙飛行から50年たちましたが、残念ながら、技術的にはそんなに進歩していません。性能はずっと良くなっていますが、原理は同じ。使い終わった燃料タンクを捨てながら加速していきます。そうしないと宇宙に到達できないからです。

 今は人工衛星とロケットが別のもので、宇宙で使う人工衛星をロケットは運ぶだけです。これがたとえば一体になって、行き帰りが自在にくり返しできるようになれば、ロケットを使い捨てにはしなくなります。

 今、宇宙にある人工衛星は修理できません。ロケットと一体になれば、こわれたらもどってきて地上で部品を交換し、また行けばいい。そうなればもっと安く宇宙に行けますし、使い方も変わってくるでしょう。

 その時のロケットは、今の鉛筆のような形とは全然ちがうかもしれませんね。

  • ◆浅田正一郎(あさだ・しょういちろう)さんに聞く

     三菱重工業 防衛・宇宙ドメイン技師長

     【三菱重工と日本のロケット】 H2AやH2Bなどに続き、新型ロケットをJAXAと共同で開発する民間企業。H2A、H2Bの打ち上げ事業も担当し、各国や会社にロケットを売りこむ立場。

【1】新型ロケットって、どうして必要なの?

《浅田さん》 日本のロケットが外国に使ってもらえないのは、たんに値段だけの問題です。信頼性が高い(H2A、H2Bは成功率96%)といっても売れません。打ち上げ実績のとぼしいファルコン9(アメリカの民間会社が作ったロケット)が安いからと売れている。H2AやH2Bでは、外国のロケットと勝負できません。

 新型は、価格で勝負できるものを作らないかぎり、何の意味もありません。これまでロケットには特殊な部品を使うことが前提となっていましたが、世間に流通しているものを使うようにしないと。考え方を変えるのは難しいですが、やらないと生き残れません。

 H2Aは1996年に開発が始まりました。今なら、開発を経験した人が残っています。H2AやH2Bの問題点を解決できるように、思いを伝えることができます。人材は、いずれいなくなってしまう。人から人じゃないと、紙などではなかなか伝わらないのです。本を読んでできるのだったら、どの国だってできるはずですから。

【2】有人ロケットがあったらいいのになあ

《浅田さん》 国際宇宙ステーションくらいなら、今はロシアが宇宙飛行士を運んでいますが、輸送手段としては十分足りているでしょう。ほかに行き場がないので、今は日本が有人ロケットを持ってもしかたありません。中国が開発しているのは、自分たちの技術力を世界にアピールする目的がある。日本の場合は、それでみんなに納得してもらうのは難しいでしょう。

 もともと宇宙開発は、人類の存在領域を広げるためにやってきました。いずれは外に出て行くでしょうし、日本が有人ロケットを必要とする日もくるでしょう。

 しかし日本は有人輸送をしたことがないので、簡単ではないと思います。有人の場合は、打ち上げに失敗した時どうやって人を帰還させるかが勝負になります。最大限の努力で助けなければいけません。設計も考えないといけないし、対応する法律、救助態勢をどうするといった問題が出てきます。

【3】未来のロケットの姿ってどんなのだろう?

《浅田さん》 需要が広がるかどうかで、未来のロケットも変わるでしょう。宇宙は今、通信放送、気象観測、GPS(位置情報システム)などで使っていますが、もっとちがう使い方もできます。たとえば人工衛星で発電して、電気を地球に送る。エネルギー産業のかぎをにぎる存在になり、ロケットが毎日上がる時代になるでしょう。

 そうなれば、毎回使い捨てるようなロケットではなくなります。逆に、今なぜ使い捨てにしているかというと、年間で数回しか打ち上げないものを再利用できるロケットにしても、開発費がかかるだけでもったいないからです。

 開発費のもとがとれるくらい打ち上げ回数があるようなら、まちがいなく、完全再使用のロケットになると思います。

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