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02月27日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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ロケット開発 七転び八起き

写真の一部はJAXA提供

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第4回 世界最大の固体燃料ロケット誕生

Mロケットの進化=JAXA提供

 ロケットの大型化はさらに続いた。1997年に打ち上げられたM(ミュー)5ロケットの直径は、これまでのMロケットの2倍の約2.5メートル。全長は30メートルで、世界最大の固体燃料ロケットとなった。

【動画】M5ロケット1号機打ち上げ

 97年2月、鹿児島県の内之浦からM5ロケット1号機が飛び立ち、電波天文衛星「はるか」を軌道にのせた。「はるか」は宇宙空間で直径8メートルのアンテナを開き、世界各地にある地上の電波望遠鏡とあわせて天体を観測した。

もっと!「はるか」のアンテナ

電波天文衛星「はるか」=JAXA提供

パンストと同じ織り方

 M5ロケット1号機が97年に打ち上げた電波天文衛星「はるか」のアンテナは、パンティストッキングと同じ織り方でつくられた。直径8メートル。宇宙から来る波長の長い電磁波を受け取り、表面で反射させて受信機に導くのが役割だ。軽くて薄くて丈夫な材料と織り方を検討する会議で、設計に携わるメンバーの一人が発案。他の出席者は笑ったが、開発チームを率いる平林久はメーカーに問い合わせ、モリブデン合金という特殊な金属の糸を使ってつくった。

火星探査機「のぞみ」=JAXA提供

 M5は、ハレー彗星(すいせい)探査に続いて地球の重力からの脱出に挑んだ。98年7月、火星探査機「のぞみ」を打ち上げた。しかし、燃料をエンジンに送る弁が故障して燃料を使い過ぎたり、電源が故障したりして、火星に届いたものの火星のまわりを回る軌道にのることができなかった。

探査機「はやぶさ」を打ち上げる

 地球から約3億キロ離れた小惑星イトカワから粒子を持ち帰った探査機「はやぶさ」を打ち上げたのもM5だ。イトカワは98年に発見され、大きさは長いところで約540メートル、短いところで約210メートル。ペンシルロケットを開発した糸川英夫にちなんで名付けられた。

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【動画】探査機「はやぶさ」機打ち上げ

 「はやぶさ」は2003年5月、内之浦から打ち上げられた。05年11月、イトカワに着陸して、イトカワの表面からサンプルを採ることに成功した。その後、「はやぶさ」は数々のピンチに見舞われた。05年12月、燃料漏れで姿勢が安定しなくなって地球との通信ができなくなった。09年11月には長距離を飛ぶために開発されたイオンエンジンが故障した。

南天の天の川の前を右下から上方へ横切った
「はやぶさ」と回収カプセル

 それでもトラブルを乗り越え、10年6月に地球に帰ってきた。本体は大気圏に入った後、空気との摩擦で高温になって燃え尽きたが、切り離されたカプセルはオーストラリアの砂漠に落下し、回収された。イトカワから持ち帰った粒子は、四十数億年前の誕生間もない太陽系の姿を知る貴重な資料となった。

もっと!「はやぶさ」の最後

「はやぶさ」が最後に撮影した地球
=JAXA提供

涙で曇った地球

 探査機「はやぶさ」は10年6月13日、本体からカプセルを分離した後、大気圏に突入した。本体には高熱に耐える装備はない。
 「最後に地球を見せてあげたい」。運用チームは大気圏突入の数日前、「はやぶさ」に地球の写真を撮らせることを決めた。最初は姿勢が定まらず、真っ黒な写真しか撮れなかったが、7枚目には地球が写っていた。少し写真が汚れていたため、「あ、はやぶさ君の涙で地球が曇っている」と声が上がり、チームの数人が涙をこぼした。

「あかり」が作成した全天赤外線マップ=JAXA提供

 M5は05年7月にX線天文衛星「すざく」、06年2月には赤外線天文衛星「あかり」も打ち上げた。「すざく」は、地球がある天の川銀河の中心にも巨大なブラックホールがあることを突き止めた。「あかり」のデータをもとにつくった赤外線で見た宇宙の地図は、銀河や星の起源と進化の研究に使われている。
 M5は、打ち上げ費用75億円が高すぎるために引退が決まり、06年9月に太陽観測衛星「ひので」の打ち上げを成功させて有終の美を飾った。=敬称略(的川泰宣・JAXA名誉教授)

筆者プロフィール

的川泰宣(まとがわ・やすのり)

的川泰宣

1942年、広島県生まれ。東大工学部を卒業、同大大学院で糸川英夫博士に教わる。日本初の人工衛星やハレー彗星(すいせい)探査機の打ち上げに携わる。2008年にNPO法人「子ども・宇宙・未来の会」を立ち上げる。朝日新聞夕刊で毎週土曜日に「宇宙がっこう」を連載中。

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