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03月05日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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ロケット開発 七転び八起き

写真の一部はJAXA提供

第6回 国産液体ロケット、試練続く

H1の2段目エンジンを
改良したLE5Aエンジン
=JAXA提供

 宇宙開発事業団(NASDA)は、全てを日本の技術でつくったH2ロケットを1992年に打ち上げることを目指した。H1ロケットでは米国製だった1段目エンジンを国産にする。
 2段目エンジンは、H1の2段目エンジンを改良して91年に完成した。
 1段目エンジンの打ち上げる力を補い、姿勢を調整する役割もある固体ロケットブースターも地上での4回の試験を経て90年に開発を終えた。

 一方、LE7と名付けられた1段目エンジンは開発が難航した。87年から地上で燃焼させる試験が始まったが火災事故が相次ぎ、H2打ち上げが94年に延期された。92年6月の試験では配管の溶接部分にひびが入って水素が漏れ、爆発事故が起こった。重さ1.7トンのエンジンが試験台から外れて約23メートル下の水たまりに落下した。

H2ロケット1号機=JAXA提供

H2ロケット5号機=JAXA提供  94年2月、H2が種子島宇宙センターから打ち上げられた。性能を確認するための衛星など2機を軌道にのせることに成功した。
 しかし、98年と99年の打ち上げでは衛星を軌道にのせることに失敗。

 98年2月の5号機は、2段目エンジンの2回目の燃焼が予定よりも早く停止したため、衛星を軌道に投入することができなかった。エンジンの燃焼室からガスが噴き出し、その熱が電源の配線を溶かしたことが原因と推定された。

エンジン異常停止、指令破壊

 99年11月に打ち上げられた8号機は、1段目のLE7エンジンが予定よりも100秒以上早く止まってしまった。2段目は正しく燃焼したが、速度が足りないため衛星を軌道に乗せることができないことがわかった。そこで、打ち上げ7分39秒後、安全のために機体を壊す指令破壊という命令がロケットに送られた。機体は小笠原諸島の北西に落下した。エンジンの心臓部である液体水素ターボポンプの金属製の羽根が、液体水素の逆流などによって壊れたことが原因だった。

もっと!H2ロケット8号機エンジン

H2ロケット8号機
=JAXA提供

深さ3000メートルから回収

  H2ロケット8号機の1段目エンジンは小笠原諸島の北西に落下した。故障の原因を解明するには海底からエンジンを回収する必要があった。海流が大変速く、深さも3000メートルあったが、開発責任者の五代富文は反対の声を押し切ってエンジン回収を決断した。
 打ち上げた翌年の2000年1月、一部の回収に成功した。地上で調べた結果、ターボポンプの羽根の1枚が欠けていたことがわかり、続くH2Aの設計と製作に生かされた。

H2ロケット7号機
=種子島宇宙センター

 この失敗で、NASDAは打ち上げ計画を変更した。衛星開発の遅れで後回しになっていた7号機の打ち上げをやめて、次世代のH2Aロケットの開発に集中することを決めた。打ち上げ失敗の原因を調べて7号機に時間や費用をかけるよりも、H2Aを早く完成させた方が良いと判断した。=敬称略(的川泰宣・JAXA名誉教授)

もっと!打ち上げられなかった7号機

打ち上げ中止となったH2ロケット7号機
=種子島宇宙センター

格納庫で実物を展示

  H2ロケット7号機は発射しないままに終わり、現在は種子島宇宙センターの格納庫に横たわっている。施設見学ツアーのコースになっており、毎日大勢の人が実際の機体を目の当たりにしている。
もともとは白っぽいクリーム色だった機体の断熱材の色は紫外線で変色し、濃い茶色になっている。

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筆者プロフィール

的川泰宣(まとがわ・やすのり)

的川泰宣

1942年、広島県生まれ。東大工学部を卒業、同大大学院で糸川英夫博士に教わる。日本初の人工衛星やハレー彗星(すいせい)探査機の打ち上げに携わる。2008年にNPO法人「子ども・宇宙・未来の会」を立ち上げる。朝日新聞夕刊で毎週土曜日に「宇宙がっこう」を連載中。

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