メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

トピックス
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック
  • 【災害大国】あすへの備え

    風水害 新たな脅威

     伊勢湾台風、枕崎台風、室戸台風――。日本では半世紀前まで、千人を超える犠牲者が出る風水害が繰り返されてきた。近年は治水や天気予報が発達し大きな水害は減ったが、新たな脅威にも直面している。地盤沈下による低地の増加、増える集中豪雨、拡大した地下街への浸水。気象災害にどう備えればいいのか。

PR情報

【1】都市部を襲った主な風水害と台風の経路

堤防の老朽化 管理が課題
洪水が押し寄せた亀戸周辺(東京都江東区)=国土交通省荒川下流河川事務所提供
 【合田禄】1910年、梅雨前線による雨と、8月11日に房総半島沖を通過した台風に加え、14日に静岡県沼津付近に上陸した台風のため関東地方は豪雨に見舞われた。
 利根川や荒川などで氾濫(はんらん)が相次ぎ、上流域では土砂災害もあって、関東地方で769人が死亡、78人が行方不明となった。流失家屋は2796戸にのぼった。
 東京では現在の北区、荒川区、足立区、葛飾区、台東区、墨田区、江東区などで浸水。宮村忠・関東学院大名誉教授(河川工学)によると、当時は川が氾濫することを前提としていた地域もあったが、市街地への流入を防ぐ隅田堤の一部が決壊、被害が広がったという。
 この水害を受け、政府は20年かけて全長22キロ、幅500メートルの人工河川「荒川放水路」を造った。堤防も増え、氾濫が繰り返されてきた地域にも市街地が形成されるようになった。宮村名誉教授は「水害は減ったが、建設からかなりの時間が経っている堤防もある。維持管理に力を入れることが必要になっている」と指摘している。
耐震化・警報体制の契機
室戸台風で倒壊した四天王寺の五重塔=1934年9月22日、大阪市天王寺区
 【野呂雅之】1934年9月21日、高知県室戸に上陸した台風は中心気圧911.6ヘクトパスカル。強い勢力を保ちながら北上、朝8時すぎに大阪で瞬間風速が60メートルを超え、観測機器を取り付けていた気象台の鉄塔が倒れた。
 国内で過去最大の超大型台風。暴風と高潮の被害で大阪府内の死者・行方不明者は1888人にのぼり、全国の6割を占めた。
 すさまじい暴風で学校の古い木造校舎が倒壊。府内の死者数の37%にあたる676人は小中学生だった。35年に発刊された大阪市風水害誌によると、市内の小学校244校の7割以上が全壊・大破した。
 これを教訓にして地震や火災にも強い鉄筋の校舎づくりが進み、現在の学校耐震化につながっている。
 当時の気象予報の精度は低く、暴風警報が発令されても学校が休校にならないこともあった。いまの注意報、警報制度の原型ができたのは、室戸台風の発生翌年だ。
沈下の防波堤 かさ上げ中
浸水した名古屋市内。住民はボートやいかだで移動した=1959年9月27日、同市港区
 【森直由】1959年9月26日午後6時すぎ、和歌山県の紀伊半島に巨大台風が上陸。愛知、三重両県の伊勢湾沿岸などで被害が出た。死者・行方不明者5098人。95年の阪神大震災まで戦後最大の自然災害だった。
 被害の主な原因は高潮。台風が通過した名古屋港では、26日午後9時半ごろ、3.89メートルの高潮が発生。名古屋市南区で1417人が犠牲になり、最大の被災地となった。
 この台風をきっかけに61年、災害対策基本法が制定された。国などは伊勢湾級の高潮に耐えられる高さの堤防建設を計画。名古屋港の沖合約10キロに64年、海面からの高さ6.5メートル、総延長7.6キロの高潮防波堤がつくられた。高潮が防波堤を越えた場合の「最終防衛ライン」として、同じころに海面近くの陸上に高さ6~6.5メートル、全長26キロの防潮壁も建てた。
 防波堤は完成から半世紀近くたち、最大約1.5メートル沈下。巨大地震による津波も想定し、最大3メートルほどかさ上げして高さ8メートルに補強する工事が進む。
雨水 地下に逃がす仕組み
女性が死亡した地下の排水作業をする消防隊員=1999年6月29日、福岡市博多区
 【東山正宜】福岡市のJR博多駅周辺は最近十数年間でも2回、付近の川があふれ、地下街や駅ビルが被害を受けた。
 1999年6月29日、梅雨前線の活発化による豪雨に見舞われた。福岡市を流れる御笠(みかさ)川があふれて市中心部が冠水。JR博多駅ビルなど81の地下施設に水が流れ込み、近くの商業ビルでは逃げ遅れた飲食店従業員の女性(当時52)が死亡。市全体で3478戸が浸水した。
 1時間に約80ミリの非常に激しい雨が福岡市や上流で降ったことに加え、上流域の急速なベッドタウン化で雨水が地中にしみ込まなくなったことで、川の水位は通常状態から4時間で一気に危険水位を超えた。
 御笠川は2003年にも氾濫(はんらん)し、97の地下施設と2916戸が浸水した。
 その後、福岡市は御笠川の川底を深くしたり、周辺の土地を買って川幅を広げたりして、流せる水量を毎秒400トンから890トンに倍増させた。野球のグラウンドを1.8メートル掘り下げて大雨の時に臨時の「貯水池」になるようにしたほか、地下に最大直径5メートルの雨水管を13キロ整備して、氾濫を防ごうとしている。
 また、雨水が地表を伝って一気に川に流れ込まないように、上流の自治体と連携し、雨水が地中にしみ込む側溝を増やしている。
 市の担当者は「三たび浸水させないためにハードのほか、水位情報を携帯に送ったり、避難訓練したりといったソフト面も組み合わせて被害をなくしたい」と話す。

地盤沈下・増える豪雨・地下街の拡大…高まる都市のリスク

台風6号(2012年7月17日)気象庁提供

 【編集委員・黒沢大陸】東京、大阪、名古屋の3大都市圏が最後に大規模に浸水する高潮に見舞われたのは20世紀の半ば以前だ。1959年の伊勢湾台風までは、58年の狩野川台風、53年の南紀豪雨、47年のカスリーン台風など千人以上が犠牲になる風水害が相次いだ。

 戦後、水害対策は充実したが、国土技術政策総合研究所の上総周平所長は「災害が減ったのは堤防や水門整備の効果もあるが、たまたま大きな台風の直撃を免れた幸運が大きい」と話す。

 この間、様々な機能の都市への集中が進み、3大都市圏の人口や国内総生産(GDP)は全国の半数を超える。地下水のくみ上げによる地盤沈下も進み、標高ゼロメートル地帯は577平方キロに広がり、そこに400万人が住んでいる。商店街や地下鉄など地下の利用も増え、水害に見舞われた場合の影響は拡大した。

 内閣府や国土交通省は大規模な水害の被害想定をしている。室戸や伊勢湾台風級の台風が最悪のコースで襲来した場合、東京湾岸では最大230万人が浸水被害を受け、死者は7600人。大阪湾岸では165万人が浸水被害、要避難者は102万人。伊勢湾岸では浸水域内に240万人、要避難者は57万人にのぼると予測している。

 近年は短時間の豪雨が増加したと指摘され、地球温暖化が進めば海面は上昇、台風は大型化すると懸念されている。近年では93年の豪雨、2004年の台風23号、11年の台風12号による被害もあり、それぞれ100人近くが犠牲になった。

 関西大の河田恵昭教授は「水害を受けてきた土地の歴史を知らない人が非常に増えた。歴史は繰り返す。最悪の場合にどうなるかの情報を共有して備える必要がある」と警鐘を鳴らす。

【2】風水害の危険が迫ってきたら

テレビやラジオ、インターネットなどで気象情報をよく確認、早めの避難を。 水害の緊急時、切迫時には、自宅の2階など「垂直避難」も

日ごろから危機意識を持ち、非常時の行動を想定しよう

弟子丸卓也(でしまる・たくや)
気象庁気象防災推進室長

 日ごろ家や職場、学校、通勤通学路が何に対して危ないのか想像力を働かせて考え、災害時の行動を事前に決めておくと、非常時に早めに動ける。自宅は低い土地か、近くに崖や大雨であふれそうな小川や水路がないか。浸水した地下室は水圧で戸が開かなくなる恐れがある。ビル風でけがをする人もいる。

 昨年の九州北部豪雨のように、急に雨が強くなって何時間も続き、避難所に行く余裕がないこともある。いよいよ危機が迫った段階では誰も助けに来てくれない。いざという時に短時間で身を守ることを考えてほしい。

 避難所に行くのが危険なこともある。雨が強くなって道路に水が流れ、川との境がわからなくなった道を移動するのは危険だ。本当に安全に避難場所に行けるのか考えてほしい。近くに頑丈な建物があれば避難させてもらうのも一つ。様子を見て、何が一番安全かを考えて行動してほしい。避難に時間がかかる人は、早めの行動が大切だ。

 近所で声をかけあって一緒に行動するのもよい方法だ。適切な避難場所を知る人がいるかも知れない。助けを呼ぶ時の役割分担もでき、最も安全なお宅に退避できる。不安もやわらぐ。

 災害にはめったに遭わないから、警報が出ても自分のことと思わない。よその地域の災害が報道された時、身近で起きた場合に置き換えて頭の体操をするのも大切だ。

 開けた場所でやる野外スポーツは逃げ場がないこともある。天気予報を見て、大気が不安定で雷や竜巻の恐れがあるときは慎重な判断が必要だ。雷注意報が出たら避難するなど、事前に考えておく必要がある。竜巻注意情報が出た段階だとかなり切迫している。昨年のつくばの竜巻のように、積乱雲の移動が速く、晴れていても10分で竜巻が来ることがある。底が真っ黒な雲が近づいてきたら、見ている場合ではなく、すぐに避難しなければいけない。

 現在の雨や雷、竜巻の状況がわかる気象庁や気象会社のウェブサイトを、携帯端末で1時間に1回ぐらい見れば、雨雲の接近を確認できる。(弟子丸卓也・気象庁気象防災推進室長)

日本列島ハザードマップ 災害大国・迫る危機

著者:朝日新聞社
価格: ¥1,680

 朝日新聞のシリーズ企画「災害大国 迫る危機」が本になりました。活断層、津波、地盤、斜面災害、インフラ、火山のリスクを地域ごとに示した大型グラフィックや対策の現状などを収録。書籍化のために各地域の災害史を書き下ろしました。いつ見舞われるか分からない災害の備えとして役立ちます。B4判変型(縦240ミリ、横260ミリ)でオールカラー、120ページ。

注目コンテンツ

  • ショッピング普通のボールじゃありません

    外で転がしてアイスができる

  • ブック・アサヒ・コム山口果林と安部公房の20年

    隠し通した交際とがん闘病

  • 【&M】ピットウォークで美の競演

    スーパーGT第4戦

  • 【&w】akkoが語る

    オーガニックに魅せられて

  • Astand「妻よ恋しい」から嬬恋村

    時をこえて伝わる妻への愛

  • 朝日転職情報

  • 就活朝日2014