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12月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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災害大国 あすへの備え

集落の孤立化

孤立化 どう乗り切る

 地震や大雨、豪雪などで交通が寸断されて起こる集落の「孤立化」。必要な生活物資や医薬品の備蓄で切り抜けられるが、大規模な災害で支援が遅れれば命にかかわるおそれもある。都市部の大水害でマンションに取り残されたり、旅先で缶詰めになったりする可能性もあり、誰もが無関係ではいられない。

【1】「弱点」には先手打って

■災害時の集落孤立化

内閣府の資料などから

※「問題」「対処策」をクリックし、スライドさせてご覧くさい

 土砂災害によって主要道路が通れなくなると、山あいや沿岸部、半島の集落は、他地域との行き来ができずに孤立化する。こうした集落は高齢者が多く、災害時に支援が必要な人の割合も高い。

 2004年の新潟県中越地震、08年の岩手・宮城内陸地震などでは孤立集落が発生し、住民がヘリコプターで避難した。東日本大震災でも、津波によって半島部の集落や病院、学校、高齢者施設などで、多くの人が孤立した。

 内閣府の14年の調査では、孤立化の可能性がある集落で水や食料を備蓄していたのは数%にとどまった。山村部は自宅に食料が比較的多くあるものの、医薬品や毛布、救助に必要な工具、夜間の生活や作業に使える投光器などを備える集落は少なかった。ヘリコプターが着陸できる場所がある集落は2割以下だった。

 近藤伸也・宇都宮大准教授(防災対策支援)は、巨大災害では、孤立化集落への手厚い対応は困難だとしつつ、「被害を受けているかどうかがポイントとなる」と話す。食料などがあり、生活できる力があれば持ちこたえられる。住宅が損壊しても、集落内にある重機を使って救出するなど、支援なしでも対処できる場合もある。

 問題は、集落だけで解決できる規模を上回る大きな被害が出ている場合だ。外部に状況を知らせる通信は、何が使えなくなるかわからないので複数の手段が必要だ。近藤さんは「孤立化の恐れがある集落では、大雨の時に被害を受けそうな家の住民を早めに安全な避難所などに移すなど、手に余る事態を発生させないようにすることが重要だ」と指摘する。

【2】代用品を把握/備蓄見直し

 図に示したのは、1週間を過ごすための1人分の備蓄の目安。ただ、必要量には個人差がある。公益財団法人市民防災研究所の坂口隆夫事務局長は「必要な備蓄を数字で示されても安心してはいけない。日ごろの生活に照らして自分に何が必要なのかを考えておくことが大切です」と話す。

 例えば家族に赤ちゃんがいる場合、アルファ米ではなく粉ミルクが必要だ。持病がある人は薬を切らさないよう、医師に相談のうえ早めにもらっておいた方がいい。

 住んでいる地域によっても必要な備蓄は違う。

 農村の場合、ガスが使えなくなっても薪(まき)があれば代用できる。水道が止まっても、米を炊いたり食器を洗ったりするのに沢の水があれば利用できる。トイレは簡易トイレを購入しなくても、人目のないところで穴を掘る方法がある。

 「被災した時に何か活用できるものはないか周囲を見渡して把握しておくといいでしょう。農業集落は都会に比べ活用できるものが多いのでは」と坂口さん。

 意外に重宝するのがラップだ。食器にかぶせて料理を盛り、食事が済んだらラップだけ捨てればいい。食器を洗う手間が省けるし、水を節約できる。

 家族1週間分の食料を非常用の食品でそろえようとすると、金銭の負担が大きい。賞味期限が来ても、捨てるのはもったいないし、非常食ばかり食べるのも味気ない。そこで最近注目されているのが「ローリングストック法」だ。

 缶詰やレトルト食品など、保存がきき普段から食べている食材を多めに買っておく。古いものから食べ、その分の補充を続けることで常に一定の備蓄をする方法だ。

 最近では、加熱しなくても食べやすいレトルトカレーや、従来より長期保存できる野菜ジュースなども売り出されている。冷凍したご飯やパンも備蓄になる。停電になったら、冷蔵庫や冷凍庫のものから食べ始めればいい。

■都市部、人数多く長期化

 孤立化のおそれは、山間部の土砂災害に限らない。

 14年2月の関東甲信地方などの大雪では、除雪が追いつかずに多くの集落が孤立し、道路でもトラックや乗用車が立ち往生した。

 最大で震度5強を記録した5月の小笠原諸島西方沖の地震では、首都圏のエレベーターが約1万9千台停止した。土曜夜だったが、平日昼間なら長時間閉じ込められた人も多くなったかもしれない。

 東日本大震災では、東北新幹線の多くの車両が駅間に停車した。線路や道路も被災したため水や食料を届けるのに時間がかかり、乗客は電灯や空調がとまるなかで救出を待った。

 中央防災会議が10年にまとめた首都圏の大水害の想定では、利根川の堤防が決壊して広域が浸水した場合、範囲は約530平方キロ、住民230万人が被災し、2600人が死亡すると推計している。

 浸水で身動きできなくなる孤立者は、避難率ゼロの場合で最大110万人。これだけ多いと救助のボートも追いつかず、1週間後で約59万人が取り残されたままだと試算している。上の階に逃げても速やかな支援は期待できない。

(渡辺周、編集委員・黒沢大陸)

【3】誰もが当事者になるおそれ

静岡大防災総合センター教授
牛山素行さん

 孤立化は起きそうな場所の予想ができる。数年に1度ぐらいのよくある災害ならば極端な長期化は考えにくく、対策は単純だ。生活物資を少し多めに持ち、補給がなくても、しばらくはしのげる準備をしておけばいい。毎日の通院治療を必要とするような人でなければ、直接的な犠牲者が出る恐れはないと思う。

 問題は、南海トラフの巨大地震や首都圏の大水害のような、孤立する人が非常に多いケースだ。ヘリコプターで救助するような手厚い支援は受けられず、孤立は長期化する。本当の大災害では助けはすぐには来ない。こうした場所は多めの備蓄が必要だ。

 通信手段の途絶も問題だが、衛星携帯電話は維持費がかかり、予算を投じ続けるのは難しい。無線も同時に使える数が限られる。道路が閉ざされても、歩いてでも連絡をつける手段も考えておいた方がいい。

 旅行者は、誰もが孤立化の当事者になるおそれがある。移動中の大雨や大雪で交通網が被災し、電車内や集落に取り残されるかもしれない。移動中は水や食料の準備もなく弱い状態で、土地の人の支援が必要になる。みんなが要支援者だ。

 ただ、孤立化対策は災害対策のなかでの重要度はさほど高くない。それに力を傾けすぎて、津波からの避難や耐震化のような命に直接かかわる対策を忘れてはいけない。

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著者:朝日新聞社 価格: ¥1,680

 朝日新聞のシリーズ企画「災害大国 迫る危機」が本になりました。活断層、津波、地盤、斜面災害、インフラ、火山のリスクを地域ごとに示した大型グラフィックや対策の現状などを収録。書籍化のために各地域の災害史を書き下ろしました。いつ見舞われるか分からない災害の備えとして役立ちます。B4判変型(縦240ミリ、横260ミリ)でオールカラー、120ページ。

日本列島ハザードマップ 災害大国・迫る危機

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