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06月28日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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災害大国 あすへの備え

熱中症

暑さ、甘く見るな

 増える真夏日や熱帯夜。健康を害し、農産物にも被害を及ぼす猛暑は気象災害のひとつ。地震や豪雨のように目立つ集中した被害ではないが、犠牲者数は多い。深刻な熱中症への備えは危機意識が必要だ。


【1】熱中症 現代の「災害」

■死者、年平均500人 20年で7倍

 近年、真夏日や熱帯夜となる日数が増えた。気象庁は、「高温に関する異常天候早期警戒情報」などで注意を呼びかけ、環境省や厚生労働省などの関係省庁は連絡会議をつくり、熱中症への警戒を促している。

 気象庁によると、長期間の統計があり都市化の影響を受けにくい全国13地点の平均で、最高気温が30度以上の真夏日は、1931~40年は年36・6日だったのが、2013年までの10年で44・1日に増えた。

 07年に新設された35度以上の猛暑日は30年代はほとんどなかったが、近年は年に数日ある。

 夜の最低気温が25度を下回らない熱帯夜は、40年までの10年間は年11・2日だったが、昨年までの10年間は24・7日に倍増。コンクリートの建物などに熱がたまり、夜になっても気温がさがりにくい「ヒートアイランド現象」が起きやすい都市部では、さらに深刻になっている。

 気温上昇や高齢化を背景に熱中症で死亡する人が増えている。

 中井誠一・京都女子大名誉教授が、厚生労働省の人口動態統計から、熱中症によるとみられる死者数を調べたところ、12年までの45年間で1万1087人が死亡していた。93年以前は年平均で67人だったが、最近約20年では年平均492人に増加、20年前の7倍を超える。記録的な猛暑だった10年には1745人にのぼった。

 熱中症は、高温多湿で体内の水分や塩分のバランスを崩し、体の中に熱がたまり起こる症状の総称だ。めまいや失神、けいれん、嘔吐(おうと)、頭痛などがある。江戸時代には「中暑(ちゅうしょ)」「霍乱(かくらん)」、明治以降は日射病、えつ病と呼ばれた。

 中井さんは「かつては炭鉱労働者や炎天下で活動する軍隊で発生したことから、労働問題としての対策が中心だった。だが、近年は高齢者だけでなく、若年者などそれぞれの状況に応じた対応が必要になっている」とする。

 猛暑は、農作物や林業に被害を及ぼし、魚の生息域が変わるなどで水産業にも影響する。熱中症以外の健康被害もあり、循環器や呼吸器の病気を悪化させるほか、温暖化が蚊など媒介動物の生息域を広げ感染症の増加をもたらすとも指摘される。

■高齢者、住宅内での発生が4割

 熱中症で最も注意すべきは高齢者だ。昼も夜も暑い日が続くなか、数日かけて徐々に食欲や体力を失い、持病の悪化や感染症の併発などで、死に至る例が目立つ。最も死者が多かった10年の犠牲者の8割が高齢者だった。

 特に室内での発症が目立つ。国立環境研究所の調査では、熱中症の発生場所の4割が住宅内だった。小野雅司フェローは「高齢者は長時間を室内で1人で過ごすことが多く、発見が遅れがちになる」と話す。

 小児では保護者が様子をよく観察することが必要だ。68年以降に死亡した4歳以下の288人のうち、0歳は158人で半数以上を占める。最近の死者数は減少傾向だが、自分で移動できない乳幼児が車内に置き去りにされる事故が後を絶たない。

 小中高校生は学校の部活動などの運動で発症する。日本スポーツ振興センターによると、12年度には4971人の発症例があった。炎天下でのランニングのほか、剣道や柔道など室内競技で発症することもある。

 40~50代の男性に多いのが労働現場での熱中症だ。建設業で多く、作業の初日や2日目といった現場の暑さに慣れていない時期の発症が多い。

■死亡の3割が夜 エアコン使用を

 東京23区内で昨夏、熱中症で死亡した人の3割以上は、夜間に亡くなっていたことが東京都監察医務院の調査でわかった。そのうち屋内が9割を占め、ほとんどがエアコンを使っていなかった。

 異状死の原因を調べる医務院が、7~8月の死亡例をまとめたところ、原因が熱中症の死者は114人(男性70人、女性44人)で、死亡推定時間帯は日中(午前5時~午後5時)が48人、夜間が34人、不明が32人だった。このうち7月は日中と夜間の死者がそれぞれ17人、18人とほぼ同数だった。屋内で死亡した人が圧倒的に多く103人。うち90人はエアコンを使用しておらず、66人は一人暮らしだった。

 総務省消防庁のまとめによると、昨年6~9月に熱中症で救急搬送された人は5万8729人で、最多だった10年を上回った。65歳以上が2万7828人で5割近くを占めた。人口10万人あたりの搬送者数は、高知県が約75人、和歌山県が約71人、熊本県は約68人だった。今年6月は昨年を上回る4634人が搬送され、うち6人が死亡し、98人が重症だった。

 都監察医務院は「夜間も十分に水分補給したり、エアコンで正しく温度管理したりすることが重要だ」としている。

(北林晃治、高橋淳)

【2】「今何度?」電話一本でも声かけを

昭和大病院救命救急センター長・
三宅康史さん

 梅雨明け直後や猛暑日、熱帯夜が続くと、多くの熱中症患者が運ばれてくる。暑さに慣れれば次第に減るが、熱波が来たり去ったり繰り返すような夏は特に要注意だ。

 ここ数年は「熱中症弱者」の被害が目立つ。独居老人だけでなく、高齢者を介護する家族、障害者と暮らす高齢者らの孤立も防がなければいけない。

 高齢者は、運動もせず、屋内で日常生活を過ごしているだけで熱中症になる。家族や周囲の人が室内の温度を管理することが大事だ。離れて住んでいても、午後の暑い時間に「部屋の温度計は何度かな」と電話一本してみる。30度以上なら「暑いからクーラーをつけようね」と教えれば、安否確認にもなる。

 周囲に熱中症を疑うべき人がいたらどうするか。

 まず意識がはっきりしているか確認する。自分で水を飲むことができれば、現場で応急処置する。水が飲めなかったり、少しでも様子がおかしくなったりしたら、医療機関に搬送する。大切なのは、1人にせず、必ず誰かが見守ること。目を離した間に急に悪化することがある。自分が調子が悪くなったら、声をかけて助けを求めよう。

 これから行楽シーズンを迎えるが、外出は高齢者や小さな子どもら体力の弱い人に合わせた計画をたてることも必要だ。楽しくて張り切ってしまうかもしれないが、無理をしない、させないことが大事だ。

■労働中の熱中症死亡事例(2013年)

建設業 10代 8月、同僚と住宅の解体中に吐き気をもよおしふらついた。休んだが快復せず、病院で死亡
大分県
建設業 20代 8月、1人で除草していたが、倒れているのを同僚が発見。病院で9日後に死亡。外国人技能実習で作業4日目
茨城県
製造業 40代 7月、屋内の作業場で鉄筋切断作業後、会社近くで倒れ、通行人が発見。病院で翌日死亡。作業場に扇風機はあるが冷房はなし
京都府
警備業 60代 6月、交通誘導中の午後3時ごろ、体調不良で車内で休憩。約2時間後、意識を失っているのを同僚が発見。搬送されたが死亡
兵庫県
農業 50代 7月、畑でネギの植え付け作業中の午後4時半ごろ気分が悪くなり、意識を失った。病院で翌日死亡
長崎県
林業 30代 7月、山中の送電用鉄塔周辺の樹木伐採中、突然倒れ、意識不明で呼吸停止の状態に。搬送されたが死亡
三重県

 <熱中症> 高温多湿のところに長くいることで、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体の調節機能が働かなくなって熱がたまり、発症する。めまいや失神、筋肉のけいれん、嘔吐(おうと)、頭痛などが起き、対応が遅れると多臓器不全を起こして死亡する恐れがある。

 日本生気象学会の指針

 <暑さ指数> 気温、湿度に、赤外線など体に当たる熱線(放射熱)を加味して数値化したもの。

●25以上…熱中症の警戒が必要
●28以上…外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意
●31以上…高齢者なら安静状態でも熱中症を発症する危険性が大きい

 環境省は「熱中症予防情報サイト」 (http://www.wbgt.env.go.jp/)で全国約150カ所の実測値や予測値を掲載し、1時間ごとに更新している。

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 <熱中症> 高温多湿のところに長くいることで、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体の調節機能が働かなくなって熱がたまり、発症する。めまいや失神、筋肉のけいれん、嘔吐(おうと)、頭痛などが起き、対応が遅れると多臓器不全を起こして死亡する恐れがある。

 日本生気象学会の指針

 <暑さ指数> 気温、湿度に、赤外線など体に当たる熱線(放射熱)を加味して数値化したもの。

●25以上…熱中症の警戒が必要
●28以上…外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意
●31以上…高齢者なら安静状態でも熱中症を発症する危険性が大きい

 環境省は「熱中症予防情報サイト」 (http://www.wbgt.env.go.jp/)で全国約150カ所の実測値や予測値を掲載し、1時間ごとに更新している。

熱中症を知る、防ぐ なぜ重症化…体に熱こもり、内臓にダメージ

(2015/07/15)

 暑さへの対策としては、外出時にぬれタオルを持ち歩いたり、自宅なら植物のカーテンやすだれで日差しを遮ったりする方法がある。

 「赤黄青」の色調などで危険性が一目でわかる「熱中症計」や、環境省のサイトで発表され、熱中症の危険度がわかる「暑さ指数」(http://www.wbgt.env.go.jp別ウインドウで開きます)も参考になる。服部教授は「自分は大丈夫と考えがちな高齢者ほど危険。自分の感覚ではなく、客観的な数値で判断するように気をつけてほしい」。

 「教えて!『かくれ脱水』委員会」(委員長=服部教授)のサイト(http://www.kakuredassui.jp別ウインドウで開きます)で、他にも対策を知ることができる。

(竹野内崇宏) [詳しく読む]

◆ ピックアップ

  • ◆ 屋内の熱中症 クーラーで上手に温度管理

    (2009/06/22)
    •  毎年夏に問題になるのが熱中症。皮膚血管の拡張でめまいが起きたり、脱水で頭痛がしたり。あるいは、血液の塩分濃度が下がって筋肉がけいれんしたり、意識障害が起きたり。炎天下でスポーツをする若者や作業をする労働者が発症しやすいことは知られている。ところが、高齢者では自宅にいながら熱中症で倒れる人が少なくない。

       「室内で普通に生活していて熱中症になる人が多いな、と思って調べたら、本当に多かった」と、名古屋掖済会(えきさいかい)病院の岩田充永医師はいう。06~07年の各7~9月、同病院救命救急センターを受診した熱中症患者は104人。そのうち屋内発症者が16人いた。全員が65歳以上の高齢者で、屋外も含めて熱中症を発症した高齢者全体の6割を占めた。

       屋内発症者のうち11人は、クーラーなど空調設備が自宅になかったという。残り5人の自宅にはあったが、適切に使っていなかった。岩田さんは「高齢者はクーラーが嫌いな人が少なくない。だがクーラーはぜいたく品でもないし、健康に悪いわけでもない。室内を適切な温度、湿度に保ってほしい」と呼びかける。

       高齢者は温度の変化を感じにくくなっている。屋内発症者のうち認知症を指摘された人が12人いた。部屋が暑くなっているのに気づかなかったり、クーラーの使い方を忘れたりしたことも原因のようだ。

       16人の屋内発症者のうち、10人は介助の必要のない人だった。寝たきりの人はいなかった。岩田さんは「元気だから、一人で過ごせているからと、周囲から見守られていない高齢者が危ない」と指摘する。

       日本救急医学会熱中症検討特別委員会も、06年6~8月に66カ所の救命救急センターと救急指導医指定施設を受診した熱中症患者528人を調べた。日常生活で発症した144人のうち屋内発症者は65人。平均年齢は62.5歳で高齢者が多かった。

       屋内発症者で病歴のある人は64%いた。精神疾患が16人、高血圧9人、糖尿病8人。熱中症の予防のためにも病気を治すことが重要だ。

       「熱中症はちょっとしたことで予防可能」と同委員会の三宅康史・昭和大医学部准教授は言う。1日1回は高温環境に身を置いて暑さに慣れ、その後は必ずクーラーなどで体を冷やすことが大切だ。例えば、近くの図書館まで歩いて汗をかき、図書館でしばらく涼む。再び歩いて帰宅した後は、冷たいシャワーを浴びて体温を下げるといった具合だ。もちろん、ほどほどが大切だ。

       早期発見も重要。近所付き合いが少ない人は発見が遅れがちだ。三宅さんは「地元のネットワークが大切」と指摘する。熱帯夜が続く日に町内会などが高齢者世帯を見回れば、予防につながる。高齢の親と離れて暮らす人は、猛暑の日に電話して親の健康を気遣うのもいい。

       熱中症に詳しい国立環境研究所の小野雅司さんは、予防策として、気温や湿度などを考慮した暑さ指数を表示している環境省熱中症予防情報サイトの活用を勧める。携帯サイトもあり、外出先でも見られる。パソコンや携帯電話を使わない高齢の親を持つ人は、代わりに見て教えてあげるのもいい。

      (由利英明)

       《相談ナビ》

      ●環境省熱中症予防情報サイト
       (http://www.wbgt.env.go.jp/

      ※暑さ指数が都道府県別に示されていて、予防に役立つ。

      ●国立環境研究所の熱中症患者速報 (http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/spot/index.html

      ※患者数を知ることができる。

      ●熱中症環境保健マニュアル (http://www.env.go.jp/chemi/heat_stroke/manual.html

      ※熱中症全般について記している。

  • ◆ どうする? 子どもの熱中症対策 顔色・ひどい汗に注意

    (2012/06/23)
    •  夏を前に、熱中症予防の対策が各地で始まっています。体の機能が未発達な子どもは、熱中症のリスクも高く、細心の注意が必要です。

       子どもは12歳前後まで、汗をかいたり、体温を調節したりする機能が十分に発達していない。環境省の対策マニュアルや自治体向けの資料によると、子どもの熱中症を防ぐポイントは、大きく分けて四つある。

       (1)子どもをよく観察

       幼い子どもにとって、自分で暑い場所から避難したり、「暑い」と訴えたりするのは難しい。顔が赤く、ひどく汗をかいていたら、涼しい場所で休ませる。

       病気と気象の関係を調べている気象予報士の村山貢司さんは「激しく運動した後は、首回りから胸元をぬらしたタオルでふき、うちわや扇子であおぐといい」と助言する。

       気温が急に上がるなど久しぶりに暑い環境で過ごす場合や、気温がさほど高くなくても湿度の高い日は、いつもより注意が必要だ。

       (2)服装に注意

       太陽の熱を吸収する黒い服は避け、白っぽい服を着せる。通気性、吸湿性がよく、汗が乾きやすい素材を選び、こまめに着替えさせる。胸元の熱や汗が出ていきやすいよう、首回りはゆったりと。村山さんは「帽子をかぶり続けていると熱がこもる。時々取って、風を通してあげて」と話す。

       (3)水分を補給

       「水分をとりすぎるとバテる」というのは間違い。しっかりと汗をかき、失った水分や塩分を補給するために、こまめにスポーツ飲料などを飲ませよう。

       (4)暑さに慣らす

       ふだんから適度に外で遊ばせよう。暑さに慣らすことが予防につながる。

       中学生になると、体温の調節機能は整ってくるが、部活動などで激しい運動をする機会が増えてくる。

       日本スポーツ振興センターによると、全国の中学校で2010年度、熱中症で治療を受けたケースは2033件。うち約7割が、運動部で活動中だった。

       埼玉県熊谷市は昨年から、生徒たちに熱中症の知識を身につけてもらおうと、公立中の2年生全員を対象に講習を開いている。

       市立中条中の2年生約40人も今月、市消防本部職員らによる約1時間の講習を受けた。同本部の沼上政幸さんは、搬送した人が熱中症で亡くなった経験を語った。「体温を測ったら、1回目は42度、2回目はエラー表示。触れないくらい体が熱かった」。真剣に聴き入る生徒たちに、「朝ご飯を必ず食べて。水分も摂取できて、熱中症予防になる」と語りかけた。

       環境省のマニュアルは、激しい運動をした場合、開始から30分で熱中症になることもあると警告している。

      (及川綾子)

       ■ 意識の有無、まずは確認

       めまいや頭痛、吐き気などで熱中症を疑ったら、まずは「意識があるか」を確認する=図。意識がない時や、呼びかけに対しておかしな返事をしたら、すぐに119番通報する。

       救急車の到着を待つ間は、体を冷やすために応急処置をする。できれば冷房のきいた室内へ移す。服を脱がせて体に水をかけ、うちわや扇風機で風を送る。首やわきの下、太ももの付け根を中心に氷袋で冷やすのもいい。

       自力で水が飲めない時も病院へ連れて行く。誰かが付き添い、症状が急変しないか見守ろう。

  • ◆ 高齢者を襲う「かくれ脱水」 手足の血行で簡単チェック

    (2012/08/08)
    •  熱中症、特に注意が必要なのが高齢者だ。体内の水分量が減る、体温の調節機能が低下するといった体の変化と付き合いながら、厳しい暑さを乗り切る方法は――。

       ■ 暑さへの感覚鈍る

       救急専門官の日野原友佳子さんは熱中症について「最悪の場合、死に至る怖い病気。でも、正しい知識を持って対処すれば防げます」と話す。

       そもそも熱中症とは、高温下で体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温の調節機能が働かなくなる病気。体温上昇やめまい、けいれんなどの症状が出る。

       高齢になると、次第に体内の水分量が少なくなり、脱水状態になりやすくなる。発汗など体温の調節機能も低下する。

       「暑いと感じる感覚も、年齢とともに鈍くなります。のどの渇きを感じていないのに、熱中症になることもある。自覚のないまま進行することもあると、まずは自覚して下さい」

       高齢者が特に気をつけなければならないのが、自身の脱水状態に気付かない「かくれ脱水」の存在だ。研究者や救急医らは今年6月、「教えて!『かくれ脱水』委員会」を立ち上げ、インターネットサイトやイベントで注意を呼びかけている。

       副委員長で、神奈川県立保健福祉大教授の谷口英喜さんは「高齢者は、脱水状態になりやすく、感覚機能の低下でのどの渇きに気付きにくいため、こまめな水分補給が欠かせません。成人の場合、1日に食事から1リットルの水分がとれるので、飲み物で1リットルの水分をとるのが目安。適度な塩分補給も必要ですが、普通に3食食べていれば足ります」。

       手足の血行不良など不調があれば、脱水症の自覚がない場合も疑った方がいい。

       委員会は、手の爪を押して血行を調べるなど、簡単なチェック法=図上=をサイトで紹介している(http://www.kakuredassui.jp/)。

       飲む点滴とも言われ、薬局や医療機関で販売する「経口補水液」は、水分や塩分を効率よく補うことができる。手作りする場合は、水1リットルに対し、食塩3グラム、砂糖40グラム(ブドウ糖は20グラム)の比率で混ぜる。スポーツドリンクと同様、飲み過ぎれば糖分や塩分のとりすぎになる。谷口さんは「健康な時に飲む必要はない。おいしいと感じれば身体が欲している合図です」。

       ■ 室温「見える化」を

       室内にも夜間にも、熱中症の危険は忍び寄っている。

       東京消防庁の2011年の調査によると、60歳以上の人が最も多く熱中症にかかったのは、住宅内で58%。気温が22、23度と高くなくても、湿度70%を超えると熱中症になりやすいという。

       どんな住宅が危険なのか。屋内の熱中症対策について研究する慶応大教授の伊香賀俊治さんは昨夏、気温35度以上の猛暑日に、マンションなどコンクリートの集合住宅と木造の戸建て住宅で、室温の違いを調べた。

       集合住宅では、日中に室温が31度前後まで上がると、夜まで下がらなかった。一方、戸建ては日中に33度まで上がったが、夜間は28度まで下がったという。伊香賀さんは「コンクリートの建物には、朝まで熱がこもることがある。戸建てよりも熱中症になりやすい環境です」と指摘。どちらも最上階は熱が屋根から室内に伝わるため、下階に比べて暑いという。

       伊香賀さんがすすめるのが、部屋に温度計と湿度計を置き「見える化」すること。「感覚に頼らず、目で確認することが大事。気温は28度、湿度は70%以下に保つ。節電も大切ですが、気温や湿度が高いときは無理せず、日中でも夜間でも冷房を使って下さい」

       日本生気象学会は、暑さの指標となる暑さ指数(WBGT)をもとに注意を呼びかけている=図下。

       ■ 冷房の風、天井に

       エアコンの風が苦手な人は多い。空調機器メーカーのダイキン工業が20~70代の700人に聞いたところ、55%が冷房が苦手と答え、特に70代女性では64%に達した。

       体に負担のかからないエアコンの使い方を、同社商品開発グループ香川早苗さんに聞くと、「まずは、風が直接体にあたらないように、風を天井に向けて下さい」。

       冷気は下に向かうが、部屋の上下で温度むらができると、上部の暖かい空気をエアコンが感知し、部屋を冷やしすぎてしまうことがある。そんな時は、扇風機を使って空気をかき回す。「扇風機の風も壁や天井に向けると、跳ね返って優しいそよ風になります」

       時間や電気代がかからないようにするには? 「おすすめは自動運転」と香川さん。「設定温度になれば運転はほとんど停止状態になり、電気の無駄遣いを防ぎます」

       就寝時はタイマーを使って、眠りが最も深い最初の2、3時間に運転するといいという。

      (斎藤健一郎、畑山敦子)

  • ◆ 熱中症予防、エアコン活用を 搬送の高齢者、半数「使わず」

    (2013/07/06)
    •  熱中症で救急搬送された高齢者のうち半数が、部屋にエアコンがあるのに使っていなかったことが、日本救急医学会の調査で分かった。2013年、政府は7月から3カ月間、節電を求めているが、調査の担当者は「エアコンをうまく活用して、暑さを乗り切って」と呼びかけている。

       日本救急医学会が2012年7~9月に、全国103の救急医療施設に熱中症で救急搬送された2130人の症状などを調べた。重症度や発症のきっかけなどを聞き取って集計した。

       室内にいて搬送された患者について、エアコンの使用状況を「使用中」「(設置しているが)停止中」「設置なし」に分けて聞き取った結果、65歳以上は「停止中」が111人と53%を占めた。40歳未満と40~64歳は「設置なし」が最も多かった。

       高齢者は暑さやのどの渇きを感じにくく、体温の調節機能が低下するため熱中症になりやすい。エアコンを設置していても、「冷房が体に障る」「電気代がもったいない」などを理由に使用を敬遠するケースが目立つという。

       環境省は、対策として室温が28度を超えないよう呼びかけている。扇風機を併用して直接エアコンの風を当てないように注意し、温度上昇や冷やしすぎを防ぐため手元に温度計を置くことを勧めている。

       同学会の熱中症に関する委員会の三宅康史委員長(昭和大教授)は「真夏に比べ、梅雨明け直後は体が暑さに慣れていない。特に高齢者はエアコンを上手に使って、体調に気をつけてほしい」と話している。

      (川原千夏子)

  • ◆ 家の中の安全:熱中症、除湿と断熱で防ぐ

    (2013/07/22)
    •  暑い日が続く。外出時は日傘を差すなど対策をとる人が多いが、家ではどうだろう。油断していると、熱中症になってしまうかもしれない。

       東京都監察医務院によると、東京23区内では2013年、梅雨が明けた7月6日から18日までの13日間で47人が熱中症で死亡し、うち44人が屋内で発症していた。全員50代以上で、9割以上がクーラーを使っていなかったという。

       熱中症患者の情報を分析している国立環境研究所(茨城県つくば市)によると、患者は気温25度を超えたあたりから出始め、31度超で急激に増える。33度を超すと、65歳以下の世代は用心するためか発生率が頭打ちになるが、高齢者は上がり続けていた。小野雅司フェローによると、65歳以上の世代は半数以上が自宅で倒れており、「お年寄りは暑さを感じにくくなり、対策が取れていない人も多いのではないか」とみる。

       家の中での熱中症を防ぐにはどうすればよいか。慶応大の伊香賀俊治教授(建築環境工学)は冷房を適切に使うことのほかに、四つの対策を挙げる。

      (1)温湿度計や熱中症計を設置する
      (2)ベランダに緑のカーテンを作ったり、よしずを立てかけたりする
      (3)戸建て住宅の寝室は最上階を避けて1階に移す
      (4)集合住宅は夜も温度に気を付ける
      =図

       一昨年夏、東京西部の多摩ニュータウンで集合住宅と戸建て住宅計57戸で、居間の温度や湿度を計った。すると、特に集合住宅では、日没後も朝まで温度があまり下がらなかった。築20年以上の建物が多く、断熱が不十分だったとみられる。最上階は中間階よりも暑く、夜は天井の温度が日中より高い部屋もあった。

       「昼間、屋上のコンクリートに蓄えられた熱が夜に伝わる。寝ている間に熱中症になる危険もある」。暑さを我慢していると体力を消耗し、より発症しやすくなるという。

       調査に協力した住民グループ「TAMA市民大学」には教授の助言をもとに対策に取り組んでいる人がいる。

       集合住宅に住む田栗太可志(たかし)さん(66)は、温湿度計をつけた。「湿度も重要。70%を超えたら冷房の除湿モードをつける」。昨年、建物の大規模修繕に関わり、全戸の窓を二重サッシに替え、冷房の利きもよくなった。別の集合住宅の男性は危険度を知らせてくれる熱中症計を使い、ベランダによしずを立てかけた。

       戸建て住宅では屋根のペンキに遮熱性の塗料を使う手もある。1級建築士の井上恵子さん(47)は都内の自宅でそうしてみた。「夕方帰宅した際のモワモワとした感じが軽くなりました」と、効果を実感している。

      (丸山ひかり)

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会員限定 阪神大震災・「あの日」の紙面

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 1923年9月1日の関東大震災から1年たった24年(大正13年)9月15日、大阪朝日新聞は、付録として「関東震災全地域鳥瞰図絵」を発行した。絵図は吉田初三郎画伯が描いたもので、関東大震災の主要な被害のほか、当時の交通網や世情も反映され、裏面は「震災後の一年間」と題して、被害状況と復旧状況をまとめ、各地の写真を載せている…[続きを読む]

  • 「表面・関東大震災俯瞰図絵」ビューアーへ
  • 「裏面・震災後の一年間」ビューアーへ

◆ 地震動予測地図

地震調査研究推進本部の資料から

◆ 女子組版「災害時連絡カード」

印刷して切り抜き、財布などに入れてお使いください

 鹿児島県・口永良部島で29日、噴火があった。箱根山では火山性地震が増え、噴火警戒レベルが引き上げられた。昨年は御嶽山が噴火、桜島や西之島は活発に噴火を続け、蔵王山でも地震が増加、日本が火山列島だと痛感している。…[続きを読む]

著者:朝日新聞社 価格: ¥1,680

 朝日新聞のシリーズ企画「災害大国 迫る危機」が本になりました。活断層、津波、地盤、斜面災害、インフラ、火山のリスクを地域ごとに示した大型グラフィックや対策の現状などを収録。書籍化のために各地域の災害史を書き下ろしました。いつ見舞われるか分からない災害の備えとして役立ちます。B4判変型(縦240ミリ、横260ミリ)でオールカラー、120ページ。

日本列島ハザードマップ 災害大国・迫る危機

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