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12月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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  • 【災害大国】あすへの備え

    降れば大雪 減らぬ雪害

     雪害は、地震や津波、台風のように一度に大きな被害は出ないが、毎年100人を超える犠牲者が出続けている。地球温暖化の影響で雪は減少傾向にあり、かつては多くの犠牲者を出した雪崩の対策も進んだが、雪による交通事故や、雪下ろし中の事故は絶えない。雪に対する社会の対応力が低下しているのだ。

【1】豪雪地帯、備える力低下

 防災科学技術研究所の集計では、2000年以降の雪害による死者数(雪による交通事故死も含む)は雪が多い15道府県で計100~300人で推移しており、大地震や台風直撃のような災害に比べて目立たないが、毎年多数の犠牲者が出ている。

 内閣府のまとめでは、自然災害別の死者・行方不明者数で雪害が最も多い年は、12年までの20年間で9回あった。60年代ごろまでは雪崩が多かったが、近年では除雪中の事故や交通事故による死者が大多数になっている。

 雪が減る中で、被害が減らないのは、備える力が低下しているからだ。豪雪地帯は過疎化が進み、高齢化率も高い。高齢者が1人で除雪作業をすることが増えた。屋根から転落した時に発見が遅れることも被害を拡大させている。10年度の雪による犠牲者の約66%が65歳以上、1人で作業中の死者が約66%だった。

 長岡技術科学大の上村靖司准教授(雪氷工学)は「雪害は水害と違って、毎年同じ場所で続けて起きる日常的な災害。被害の様相は、社会の変化を反映して変わる。近年は除雪にともなう被害が最大の課題だ」と指摘する。

 対策が進んだために起きるようになった被害もある。道路の除雪が進んで家の前の雪もなくなり、雪下ろし中に落下すると、クッションとなる雪がなく、地面に激突してしまう。また、積雪の減少で社会が大雪に不慣れになり、久しぶりに大雪が降った近年は注意不足で被害が増えたと指摘されている。たまにしか雪が積もらない都市部の被害も多く、東京消防庁によると、昨年1月の大雪で550人以上が転倒によるけがなどで病院に搬送された。

 近年の積雪被害を受け、内閣府大雪の防災対策の検討会を設置、12年に必要な対策の報告書をまとめた。具体的には、雪下ろしの時の命綱の着用、非常時に助けを呼べる携帯電話の用意などの徹底が必要と指摘。地域一斉雪下ろしやボランティアによる協力体制といった除雪作業中の事故防止策、除雪不要の住宅普及や情報の共有による車の立ち往生防止策――など、雪に強い地域作りが必要とした。

 上村准教授は「ヘルメットや安全帯なしで屋根の雪下ろしをするのは、素人が災害復旧工事をしているようなもの。注意すれば防げる被害も多い。落下事故対策をしっかりすれば被害を大きく減らせる」と話す。

 豪雪地帯の自治体は財政力が弱く、除雪を担う建設業者も減っている。気候変動で、急な大雪の増加や雪質の変化も指摘されており、社会の変化とともに「進化する雪害」への対応は今後も必要だ。(合田禄、編集委員・黒沢大陸

【2】進む温暖化、降れば大雪

 温暖化が進むと雪の降り方はどう変わるのだろう。気象庁によると豪雪地域はさらに雪が増え、それ以外の地域では雪の回数や量は減るが、一度降れば大雪になる可能性があるという。

 雪は全国的に減少傾向にある。1962年からの50年で、年最深積雪は東日本で56%、西日本で72%、北日本で18%減った(いずれも日本海側)。温暖化が進むとこの傾向が強まる。

 だが北海道や本州の山沿いの豪雪地域では、逆に雪が増える見込みだ。海面水温が上がり、水蒸気量が増え、雪雲が発達しやすくなるためという。

 気象庁の予測では、今世紀後半に温室効果ガスが現在の1・8倍ほどに増えた場合、冬の平均気温は3~3・5度上昇。その結果、月ごとの降雪量は本州のほとんどの地域では数十センチ減るが、北海道や本州の豪雪地域では、逆に20~40センチ増える。

 気温が上がると、大気が抱えていられる水蒸気の量が増え、1回あたりに降る雪の量も増える。豪雪地域では大雪の頻度も上がると見られる。本州では雪の回数や全体量は減るが、局所的に「降れば大雪」になるという。同庁気候情報課は「夏のいわゆる『ゲリラ豪雨』と同じようなメカニズム」と説明する。重く湿った雪となり、「雪下ろしなど、雪害にはこれまでと違う対策が求められる可能性もある」(同課)という。(石川智也)

【3】教訓忘れ、社会が不慣れに

上石勲(かみいしいさお)
防災科学技術研究所、雪氷防災研究センター長

 雪害の傾向は約30年前から変化している。大雪が続いた1980年代は雪崩が民家を襲うことが度々あり、86年には新潟県糸魚川市の雪崩で13人が亡くなるなど、雪崩の危険箇所を十分に把握できていなかった。その後、予防柵を設置したり、事前に危険箇所を確認したりするなどの対策が進み、雪崩で亡くなる人の数は減った。

 80年代後半からの約20年は温暖化で雪が減ったと言われるが、ここ数年はまた大雪が続いている。雪が少ない期間が続くと、雪国でも大雪の教訓が忘れられ、除雪作業などにうまく対応できなくなる面がある。

 最近の大雪では、雪下ろしを担う若い世代が減り、高齢者が除雪中に転落する事故が増えた。平成18年豪雪では、屋根からの転落で40人以上が亡くなった。また、水路に転落すると、水が冷たく助けることも困難で死亡事故につながることが多い。

 都会でも雪害は起こる。積雪に慣れていないと、滑る靴を履いて外出してしまったり、自治体に十分な数の除雪車が用意されていなかったりする。転ばないように慎重に歩いたり、スノータイヤを装着して速度を落として車を運転したりすることが必要だ。高層ビルが多い場所では、日陰が多くて雪が溶けにくいという都会特有の現象もある。

 昨年は北海道中標津町では雪に埋もれた車の中で母子4人が死亡するなど、雪に慣れているはずの北海道内で9人が犠牲になる暴風雪があった。「雪の博士」として知られた故中谷宇吉郎氏は「雪は天から送られた手紙」という言葉を残したが、改めて、雪という手紙は冷たく、怖い面もたくさんあることを痛感した。

災害大国 被害に学ぶ

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著者:朝日新聞社 価格: ¥1,680

 朝日新聞のシリーズ企画「災害大国 迫る危機」が本になりました。活断層、津波、地盤、斜面災害、インフラ、火山のリスクを地域ごとに示した大型グラフィックや対策の現状などを収録。書籍化のために各地域の災害史を書き下ろしました。いつ見舞われるか分からない災害の備えとして役立ちます。B4判変型(縦240ミリ、横260ミリ)でオールカラー、120ページ。

日本列島ハザードマップ 災害大国・迫る危機

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