繁栄の分かち合い方、考えよう

アミーナ・モハメッド氏 2017/11/21

SDGsを突き詰めていくと、自分たち自身の問題だということがわかり、自らの足元に目を向けることになりますよね。先進国が途上国を手伝うことだけではない。

「誰も置き去りにしない」という普遍的なアジェンダ(行動計画)を続けるなかで、まずは自分たちの社会で誰が取り残されようとしているのか、明確にすることから始めて下さい。

やるべきことは問うことです。自らの社会に対して、世界の他の地域に対して、どういった価値をもたらすことができるかを。そしてどうすれば世界中の人々に豊かさと多様性をもたらすことができるのかということを。

私たちは何らかの形でつながり合っています。日本の周りに壁を作って不安定要因をなくすことはできません。私たちは地球村の一員なのです。

包摂性は日本にとっても極めて重要な課題です。SDGsは成長と同時に包摂性を考えるツールになるのでしょうか。

その国の成長の恩恵は誰もが受け取るべきです。それが誰も置き去りにしないということです。成長が繁栄と平和をもたらし、私たちはそこに属することを願います。だからこそ、教育制度が重要です。健常者にとっても、障害者にとっても、貧富の差にも関係なく、誰にでも大事なのです。

SDGsの達成に必要な技術革新を生み出すには年間で2兆5千億~5兆ドルが必要だと言われています。資金をどうやって引き出していきますか。

達成しようという意志がどこにあるのか、リーダーシップのありかを問わねばなりません。この世界に暮らす75億人に行き渡るお金はあると思います。だからこそ、各国の指導者たちに疑問を投げかけざるを得ません。民間セクターには、余っている資金をすべての人のためにより良い形で投入する方法を考えてほしいものです。

今日の不安定な状況においては、繁栄をどのようにしたら分かち合えるか、考えなくてはいけません。なぜなら、そうしないことの方がよっぽど高い代償を払うことになるからです。排除は誰の助けにもなりません。あまりにも多くの国が平和の対価を払っていないことを、私たちは目にしています。

2030年がどういう社会であってほしいかを見据えて投資を始めることが大切です。環境保護や社会問題への貢献、企業統治の観点から投資するESG投資も加速化させる必要があります。

成功例が重要で、その意味ではメディアの役割が大きいと思います。うまくいった例からは、失敗例よりも何倍も学ぶことができます。そしてもっと取り組みについての情報が必要です。(再生エネルギーを促進する融資である)グリーンボンドの仕組みや、年金基金を見直して長期的な投資を増やすメリットなどについてです。まだ大規模にやることは難しく、実際は小さく行われています。どうすれば弾みをつけられるか。国どうしの協力や、新たなイニシアチブが有効だと思っています。

思い出して下さい。SDGsは193カ国が自発的に合意したものです。法的拘束力がないからこそ、実現させなくてはいけません。私たちは、それがたどりつくべき未来だと理解しているのですから。ただ、その方向へと進むには大きな推進力が必要です。何もしないことが一番簡単です。けれども、いろいろ働きかけながら目標を達成すると決めたのです。苦痛と困難が伴うのは仕方ありません。(構成・北郷美由紀、撮影・長島一浩)

国谷裕子くにやひろこ
1979年米ブラウン大卒。93年~2016年、NHK総合「クローズアップ現代」を担当し、98年に放送ウーマン賞、02年に菊池寛賞、11年日本記者クラブ賞などを受賞。近著に「キャスターという仕事」(岩波新書)。
アミーナ・モハメッド氏Amina J. Mohammed

1961年生まれ。前職はナイジェリア環境大臣。国連のポスト2015開発アジェンダ担当特別顧問として事務総長を補佐し、SDGsを明記した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の合意に大きな役割を果たした。2017年2月から現職。