どのような社会を望むか対話を

アミーナ・モハメッド氏 2017/11/21

技術の進歩で、資金を持つ人により多くの富が集中する可能性があり、資金を持たない人は置き去りにされる恐れがあります。そこで繰り返し言われてきたことですが、社会における対話がカギになるのだと思います、どのようにして新たな包摂的な社会を生み出していくのか。成長と価値の定義はどのようなものになるのか。SDGsはある意味、この問いを投げかけています。

私はSDGsはガイドだと思っています。SDGsについて考えるのならば、その一つひとつを私たちの暮らしに反映させるべきです。貧困をなくし、パートナーシップを広げ、雇用や産業化を求めることに同意しない人はいません。問題はどのようにアプローチするかです。それぞれの社会において対話をしなくてはならず、対話の場作りも必要です。今回の集まりもその一つです。

コミュニケーションにはさまざまな手段があります。テーブルを囲んで座ったり、このようなホールに集ったりする昔ながらの方法もありますが、ソーシャルメディアもあります。これは若い人たちにとっては、はるかにコミュニケーションをとりやすい媒体です。

温室効果ガスの排出量の多くは、私たちの消費とそのための生産と関係しています。必要なものは何か、欲しいものは何か。必要なものを持っていないのなら、持つべきです。けれども欲しいものには際限がなく、しばしば紛争の引き金になります。ですから、話し合わなければいけません。

もし途上国の生活水準が先進国と同じになれば、温室効果ガスの排出量を地球は吸収できず、世界は存在できないでしょう。どのような社会を望むのか、対話が必要なのです。若者たちが2030年までに何を見たいのか、そのために私たちは何をする必要があるのか。対話が必要です。

国連は各国政府がそうした場を提供する手助けをしなければなりません。席につく人たちに偏りがないようにして、開かれた場で差し迫った課題を話し合えるように。いまの国連と関係機関はSDGsの実行に適しているとはいえず、改革が必要です。支援する国ごとに国連機関の役割とスキルを見直さなくてはいけません。これは私たちの義務です。

SDGsとの一貫性を持つために、縦割りを打破するのですね。

もちろんです。縦割りで働くことがあってはなりません。企業も縦割り体制から抜け出し、他者と協働する必要があります。国連も同様です。開発をリードしているのはUNDP(国連開発計画)ですが、健康や教育の分野、農業関連のFAOなど他の30の専門機関はすべて、開発支援のためひとつになって働かなくてはいけません。多岐にわたる課題に横断的に取り組むには、新たなスキルと体制が必要です。

大量生産、大量消費、大量廃棄の状況も変えなくてはいけません。今後の道のりについてどのように考えていますか。

持続可能性のために持っているものをあきらめなくてはならないとしたら、それがぜいたく品でもそうでなくても、誰でも惜しくなるものです。困難な道のりだと思います。それでも私たちは繁栄を分け合うすべを見つけなくては。より多くの人を教育し、栄養がぜいたくではなくなるように、資源を活用していくべきです。隣人や世界のことを、同じグローバル村の住人と考えて、これまで以上のことをする。それが結局はみなにとって良いことであり、より安全な世界へとつながります。私たちは平和と繁栄、繁栄の共有を望んでいます。分け合うことを無視すれば、その代償はあまりにも大きい。誰もが希望を持てるように、トンネルの先の光が見えるように、そして誰も排除されないように、努力すべきです。SDGsがあるので、できると思います。楽しみでもあります。

私たちは自分の行動が地球に及ぼす影響を理解しなくてはなりません。これからの行動についてとても大きな責任を負っています。あなたの言葉をお借りすれば「はいつくばりながら」、目標の達成を目指すわけです。不都合な真実とも向き合わなくてはなりません。

できます。

できるのだと。達成のカギとなるのは何だと思いますか。

あらゆる人をひっぱる覚悟をもった、誠実かつ真摯(しんし)な優れたリーダーシップだと思います。私が日本に来たのも、日本の方たちが実践例を示しながら、世界を変えるリーダーになれると信じているからです。

どのように生きるかを根本的に考えるなら、それは「害を与えない」ということだと思います。私たちは、自分たちの消費が地球に影響を及ぼすことを知っています。ある国が出す温室効果ガスは、自国だけでなく他の国の人々にも影響します。

私は今、世界の75億人のことを考え、世界中で起きている危機の解決策を模索しています。良いニュースはSDGsという解決策を手にしていることです。よくないニュースは取り組みがまだ足りないことです。お集まりのみなさんには、「自分にできないこと」ではなく、「自分にできること」を考えてもらえたらと思います。(構成・北郷美由紀、撮影・長島一浩)

国谷裕子くにやひろこ
1979年米ブラウン大卒。93年~2016年、NHK総合「クローズアップ現代」を担当し、98年に放送ウーマン賞、02年に菊池寛賞、11年日本記者クラブ賞などを受賞。近著に「キャスターという仕事」(岩波新書)。
アミーナ・モハメッド氏Amina J. Mohammed

1961年生まれ。前職はナイジェリア環境大臣。国連のポスト2015開発アジェンダ担当特別顧問として事務総長を補佐し、SDGsを明記した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の合意に大きな役割を果たした。2017年2月から現職。