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世論挑発 集める支持――扇動社会5

2010年5月7日16時31分

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写真三橋貴明氏の政治資金パーティー。マスク姿で鳩山政権をネタにする場面も=4月3日、東京・秋葉原、山本裕之撮影

 「日本で差別されているかわいそうな朝鮮人。朝鮮に帰れ!」。冷たい雨の中、スピーカーから罵声(ばせい)が響いた。

 3月末の京都。在日コリアンが多く暮らす地域を、日の丸や横断幕を手にした人々がデモした。住民が隊列に立ち向かおうとする。機動隊が割って入り、怒声が飛ぶ。

 その様子をつぶさに撮影し続ける男性がデモ隊の中にいた。小型カメラ装着のパソコンで撮られた映像は、動画サイトで生中継された。

 「戦争きたーーーーー」

 「ゴミ共を排除しろ」

 「たたきだせええええ」

 見ている人からの投稿が切れ目なく画面に映し出される。現場に緊張が走るたび、投稿は増える。デモを取材した記者の映像が流れると、《反日マスゴミ》などと批判する投稿が画面にあふれた。

 彼らが「祭り」と称するデモは約1時間続いた。約60人のデモを生中継で見たのは延べ3千人以上。投稿は2万5千件を超えた。デモが終わると、撮影役の男性は記者に軽く会釈した。

 生中継したのは「在日特権を許さない市民の会」(在特会)。長崎県対馬市議会に外国人参政権反対の意見書を持ち込んだ団体だ。2006年末結成。「行動する保守」を掲げてネットを中心に会員を増やし、現在8700人。東京の本部のほか全国25支部を構える。

 「我々への中傷だって構わない。どんな形でも報道してほしい」。同会の支部長の一人は話した。

 「一体感が楽しかった」

 デモの1週間前に入会した大津市の無職男性(25)は言った。ネットの掲示板に「街宣に行きたい。交通費を振り込んでくれたら行く」と書くと、ネット銀行の口座に誰かが700円を振り込んだ。

 在特会の桜井誠会長(38)は4月、支援者に講演した。

 「みなさんの活躍を、動画や生中継で全国の人たちが見ている。あなたたちに触発されて各地で抗議の声を上げ始めた。大変、結構なことだ」

 刺激的であるほど瞬時に大きなうねりとなるネット上の「世論」。その支持を集める人に既成政党がにじり寄る。

 《未来の日本は、中国や北朝鮮と一体の連邦体制になり、情報統制や管理が進む》

 経済評論家の三橋貴明氏(40)は昨年、「シミュレーション小説」を出版した。ネットの掲示板「2ちゃんねる」で韓国経済のもろさを指摘して注目された。小説では民主党政権への警戒感をにじませ、今夏の参院選では自民党公認で比例区に立つ。

 4月初め。東京・秋葉原で三橋氏の後援会が「コスプレ政治資金パーティー」を開いた。雑居ビル地下のバーに、派手な衣装やマスクで仮装した約100人が集った。動画サイトに、坂本竜馬に扮した三橋氏の姿が流れた。

 「『マスゴミ崩壊』という本を書いた三橋のパーティーに、マスコミが14社来ました」。後援会の幹部の声に、一斉に拍手が起きた。

 「ネットの代表が政治に打って出ることがうれしい」。会場を訪れた、東京都葛飾区の会社員、佐々木克人さん(31)はそう話した。「ネットでは双方向のやりとりで正しい意見が残る。新聞やテレビは、初めから結論ありき、だと感じる」

 公認発表後、後援会の会員数は1500人を超えた。

 4月12日、自民党本部で三橋氏の講演会があった。約100人の聴衆に、来賓の麻生太郎前首相は呼びかけた。「インターネットの票は、おれたちに見えない票。その核が皆さんだ。いい成果を出せるように、ネットの力を貸してほしい」=おわり

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