日本が尖閣諸島を国有化したことに抗議する中国各地での反日デモは15日、約50都市に広がり、日本企業の工場が焼き打ちに遭い、日系デパートの一部が破壊されるなどした。日本製品を標的にした破壊行為や不買運動も広がっている。
山東省青島市の開発区内にあるパナソニックの工場にデモ隊が押し入り、放火した。関係者によると、一部が延焼した。同じ開発区にある別の日系工場も同様の被害を受けた。
イオン黄島店でも、デモ隊がエレベーターやエスカレーターを破壊。関係者によると、専門店も合わせて約2億元(約24億円)分あった在庫の大半が、略奪または破壊されたという。
湖南省長沙市では、日系デパート「平和堂・五一広場店」にデモ隊の一部が押し入り、店舗の1階や2階でガラスを割り、商品を壊すなどした。また、店舗前の工事現場にあった建材に火がつけられ、炎がデパートの2階まで届いた。
江蘇省蘇州市の日系デパートのイズミヤも襲撃され、ドアやガラスが壊され、1階の店舗の約7割が鉄パイプなどで破壊された。
北京市の日本大使館前では、若者を中心に2万人以上がデモに参加し、館内に押し入ろうとした。しかし、中国当局は武装警察隊を動員して阻止。ただ、地方では日系企業などへの破壊行為が黙認された。
中国では、過去にも反日デモが発生し、2005年には日本の国連安全保障理事会常任理事国入りや教科書問題をめぐって北京や上海で大規模なデモが起きた。しかし、ここまで暴力や破壊行為が広がったのは、初めてのことだ。中国の在留邦人の間では、安全に対する不安が広がっている。
中国では、ネット上などで16日も20都市以上でデモが呼びかけられている。また、満州事変のきっかけとなった柳条湖事件から81年となる18日にも、デモが広がる懸念がある。(北京=吉岡桂子、峯村健司)