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12月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 5
景気も気から? アベノミクス編 庄司vs.論説委員

長い長いデフレの冬が終わり、春のきざしが見えてきた、という人もいる。
なのに庄司智春は、そんな気配はまったく感じない、という。
世の中全体の景気は回復しているのになぜ、と朝日新聞論説委員の田中雄一郎が尋ねると、

「わかんないすけど、娯楽は後回しになるからじゃないですかね」と言う。

「新聞業界は、若い人たちの紙の新聞離れもあって構造的に不況なので、
仕方ないところがあるんですけど、お笑いの世界もですか…。非常に興味深いですね」

気のせいだったんですか!?

それにしても、アベノミクスって何なのか。
ピンとこない、となおも首をかしげる庄司に、田中は、こう説明した。

「アベノミクスの『3本の矢』は、突き詰めれば、ひとつの目的に行き着くんです。
それは、世の中の『気』を変えること。景気も気からなんですよ」

庄司の目がまん丸になった。

「へえええー。気のせいだったんですか!?」

田中は続けた。

「経済がしけてると、お金を持っていても使わんとこか、となって、物価が下がるデフレが続く。
バブル経済の崩壊から約20年間、そんな状態がほぼずっと続いてきました」

「長年しみついたその『気』を一気に吹っ飛ばそうと、安倍政権は少々の副作用には目をつぶって、 三つの政策をセットでどんと打ち出そうとしてきたわけです」

田中が、3本の矢と呼ばれる政策は、どれも新しいものではない、
と言うと、庄司のツッコミが入った。

「じゃ、これまでは弱腰だったってことですか」

たじろいだ田中が「そう言えなくもないですが……副作用を心配している人は少なくないし、朝日新聞論説委員室も慎重派です。今のところ、最悪の副作用は出てませんが」
と言うと、庄司は身を乗り出した。

「最悪って何ですか。めちゃめちゃ知りたいっすね」

バラ色に描かれることが多いアベノミクスだが、庄司には、どうもひっかかるらしい。
田中は改めて、3本の矢とは何か、説明を始めた。

日本は借金まみれなんじゃ……

第一の矢は、「ちょっとお金使おうかな」という人や企業を増やすため、
世の中にどんどんお金を流す金融緩和。
担い手である日本銀行が、国の借金の証文である国債などを民間金融機関から
積極的に買い上げ、その代金を支払う形でお金の量を増やしている。

第二の矢は、財政政策。
政府が大型予算を組んで公共事業などを積み増し、
お金を使う機会と働き口を増やすことを狙った。

「あれっ?」。庄司が声を上げた。

「日本は借金まみれなんじゃ……。
1人あたり800万円って……」

田中が、我が意を得たり、とばかりにうなずいた。

「国全体の借金は1千兆円超。経済規模に対する割合は先進国で最悪です。
それでも、安倍さんは『気』を変えるために必要だからと、さらに借金をしたわけです」

「くーっ」。庄司が、両ひざをつかんだ。
「なんだか、パチンコで負けこんだヤツが、負けた分を一気に取り戻すってがんばってるみたいな……」

「第三の矢は、棒っ切れ」!?

田中は、アベノミクスの問題点を次々と指摘した。
景気が上向いて税収が増えれば後で返せるからと、政府が借金を重ねる、
つまり国債の大量発行を続ける。 そして、金融機関が買った国債を、日銀が買いとる。

この流れが強くなりすぎると、お金の量をコントロールするはずの日銀が、政府にどんどんお金を貸す格好になり、 デフレ脱却どころかひどいインフレになる恐れがある。

あまりにも国債が多く発行され、政府による返済が不安視されて買い渋られるようになると、
高い金利をつけるしかなくなる。
政府が利息を払うために借金を重ねれば、国家として破綻(はたん)する恐れも出てくる。
        
だからこそ第三の矢の構造改革,具体的には規制改革が重要なのだ、と田中は説いた。

「なのに、出てくる政策は、どれもインパクト不足。矢じゃなくて棒っ切れでしょ、と言う人もいます。
企業が新たな分野で活動しやすいよう規制を見直す、稼ぎが増えて賃金に回る、消費が増えるという、 いい循環をつくることが必要なんですけどね」

庄司が「3本目が弱いと、ほかの2本も折れちゃうよなあ」とつぶやく。

「筋トレ」のすすめ

「ちょっと乱暴ですけどね」と田中。

「アベノミクスは、人のからだのイメージで考えると、わかりやすい。
デフレは血流が悪くなって体温が下がり、動きがにぶい状態。
血流がよくなって体温が上がるまでお金をばんばん輸血するのが第一の矢。
第二の矢は高カロリーの料理。 借金してでも公共事業を消化すれば元気になって税収が上がる。 そして第三の矢が体幹を鍛える……」

「筋トレだ!」。筋肉芸人・庄司が目を輝かせる。

「長期的には、筋肉質の経済にしなきゃいけないんですが、自分で汗をかかなきゃいけないですから、しんどいんです。筋肉痛にもなりますし。今のままだと、輸血して栄養つけて、ぶよっとしたまま終わっちゃう」
という田中に、庄司は力強くうなずいて言った。

「筋トレ、大変ですから。大丈夫かなあ」

負けていただけないですかねえ

今年の春闘では、ベースアップを再開する大企業が多く現れた。
賃金が上がって個人が使うお金が増え始めれば、日本経済は回復する可能性が大きくなる。

「一国民としては、アベノミクスがうまくいきそうでよかったね、ですけど、慎重派の朝日新聞論説委員室としては、これまでのところ負け。
『勝てば官軍、負ければ賊軍』ですから」
と田中。

庄司の口からは、つい本音が出た。

「ここはひとつ、首相に筋トレをがんばってもらって、
田中さんたちには負けていただけないですかねえ。お笑い界のためにも」 

次回は、いよいよ「庄説」。
ついに、庄司の「気」は変わったのか!? 配信は、27日ごろの予定です。

論説委員プロフィール田中 雄一郎

1964年5月5日、兵庫県生まれの49歳。誕生日が子どもの日なのに、20代後半からハゲ始める。三重県津市と愛知県豊橋市で警察や県庁、高校野球などを担当した後は、東京~福岡の間を転々としながら経済畑を歩く。プロ野球は阪神タイガースのファンだが、大阪での勤務が2006年のわずか8カ月しかなく、しかもこの年は阪神が優勝を逃したのが心残り。現在の担当は、経済分野のうち税制・財政や国土交通関係、農林水産業、環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめとする通商問題など。

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