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10月20日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 6 使う勇気と使わない勇気
集団的自衛権編 庄司vs.論説委員 後編

3月下旬、どうしても気になる「集団的自衛権」について、
ニュース指南を受け始めた庄司智春。
覚悟はしていたが、やっぱり難しい。
それでも、あれこれ考えては、朝日新聞論説委員の国分高史に食い下がった。

「日本が、集団的自衛権を使えるようにしたい理由って、
もしかして、『逃げてるよね』って思われるのがいやで、何とかしたいってことですか?」

「そういう面はあります。この問題は、ずっとくすぶってきたんですよ」。
国分が解説を始めた。

「特に自民党の一部は、集団的自衛権も使えるようにしたい、とずっと思ってきた。
でも、戦後日本の安全保障のあり方を変える話だけに反対も多いし、
無理に進めると選挙に負けるかもしれない、と我慢をしてきたんです」

「今でしょ」!?

それが、ここへ来て、民族問題などがからんで国際関係が複雑になった上に、
中国の力が強くなり、米国の力が相対的に弱くなってきた。

「国の安全を確実に守るためには、集団的自衛権を認めた方がいいんじゃないか、
という人が、少しずつ増えてきた。
とはいえ、認めるには大きな政治的エネルギーが必要です。
安倍さんにしてみれば、国会のねじれもなくなって、政権がある程度安定している今、
力があるうちにやらなきゃいつできるんだ、今でしょ! と」

集団的自衛権の行使容認を認めてもいいんじゃないかという国民の中には、
多少の誤解もあるようだ、と国分は分析する。

「みなさん、尖閣などの領土問題が気になってますよね。
『さらに緊張が高まって、他国から攻められたらどうするんだ!』と」

うなずく庄司を見て、さらに言葉を重ねた。

「でも、仮に、ほかの国が日本に攻めてきた場合、まず必要なのは個別的自衛権で、
日本が集団的自衛権を使えるかどうかは、とりあえず関係ない。
万一の場合、日米安保条約に基づいて、アメリカが助けてくれることになっていますし」

「ええっ、そうなんですか」と庄司。

日本の近海で、米国の艦船が何者かに攻撃されたとき、
日本は応援しなくていいのか、という話もよく出る。

「でも、世界で一番強い軍隊を持つアメリカの艦船を、
いきなり攻撃する無謀な国があると思います?
それに、そういう時には日本にある米軍基地や日本の船が、
先に攻撃されている可能性の方が高い。
これもまた、日本にとっては、個別的自衛権で対応するケースです」

このままじゃいけないんですか?

「えーっ。じゃ、何のために? このままじゃいけないんですかね」
庄司が、思わずそう言うと、国分は、結局は国民がどう考えるかだ、と答えた。

「それが、過去の戦争への反省から
『海外での武力行使はしない』
と決めた平和国家としてのあるべき姿だと考えるのか。
それとも、米国を助けたり、
外国で起きた紛争の解決のため、 日本もできることはするべきだと考えるのか」

「どちらにしても、戦後70年近く歩いてきた道の分岐点になるわけですから、
憲法の解釈変更ですませるのではなく、国会できちんと議論をした上で
憲法改正の国民投票で決めないと収まりがつかない、というのが僕らの考えです」

仮に日本が集団的自衛権を使えるようにするとしても、
自衛隊が暴走するようなことはありえないと 近隣の国が納得できてからにするのが望ましい。

「それでも、今、国の平和を守ろうと思ったら、
集団的自衛権が必要、っていうことなんですかねえ」
と庄司がさらにつっこむ。

集団的自衛権の行使を認めれば、日米の軍事的な協力関係は強くなる。

「相手が強そうだから因縁つけるのやめよう、と思う国もあるだろうけど、
負けないようにこっちも力をつけよう、と思う国もあるでしょう」
と国分は言う。

「安全保障のジレンマ」

安全保障のジレンマ、という言葉がある。
かつて米国とソ連(現ロシア)は、巨額のお金を軍備につぎこんで
地球を何百回も破壊できるほどの核兵器を持ったが、
今、その処分に困っている。

「話し合いで、平和的に物事を収めるほうが生産的だと、僕は思うんですけどね」

「はああ。
それでも、集団的自衛権は使えるようになりそうなんですよね」

今日の庄司は、しつこい。

「安倍さんは、集団的自衛権は持ってるけど使えない、という憲法解釈を、
持ってるし使える、という解釈に、政府の判断だけで変えてしまおうとしています。
あまりに乱暴だと、以前から訴えているんですが」

自民党や公明党の中からも、やるならもっと慎重に、手続きを踏んで議論してから、
という声が強まっているが、 安倍首相に、あきらめる気配はない。

「うーん」と庄司。

「安倍晋三さんっていう人は、
いろんなことをどんどん決めて、
できなかったことをやろうとしているのは
すごいと思います。
でも、70年かけてつくった平和が崩れるのか、と思うと……。
逆に、日本のやりかた、いいね、って言ってくれる国はないんですか」

憲法9条の精神の評価は高いが、それを採り入れるために
自分の国の憲法を変えようということにはならない、と国分は言った。

「孤独ですねえ。でも僕は、逃げたって思われたってかまわないし、
そういうヤツがひとりくらいいたっていいと思う。
日本なら、集団的自衛権どうこうの前に、
攻められないようにできる知恵もあると思うし」

庄司が、きっぱり言った。
国分もうなずいた。

「誰の血も流さないことが一番大事、ということを前提に、
どうしたらいいのかを考えていけば、道はあると思いますよ」

このテーマについての庄司の「庄説」は、5月1日ごろ配信の予定です。

論説委員プロフィール国分高史

東京五輪の年に生まれ、高校教師か新聞記者かと迷ったすえに1989年朝日新聞入社。佐賀支局、西部社会部(福岡)などをへて95年に政治部。首相官邸、自民党、社民党、外務省などを担当した。社説を書くにあたっては、「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」(井上ひさし)を心がけるも、悪戦苦闘。

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