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10月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 7 消費増税は何のため? ウォームアップ

庄司智春が、東京・築地の朝日新聞東京本社に再びやってきた。
消費税が8パーセントに上がって、しばらく経っていた。


増税、仕方ない?
「消費税が上がって、何か影響ありましたか」

対談の部屋への道すがら、記者が尋ねると、庄司はこう応じた。

「うーん、息子が通う保育園の保育料も上がって、借りている駐車場の料金も。
でも、仕方ないかな、って感じですかね」

仕方ない。そう言ってはみたが、心中ではちょっとひっかかる。
税金をしっかり納めているなら、ちょっとは見返りがあってもいいんじゃないか。
しかし、実感は、まるでない。
新聞記事を読むと、消費増税で、社会保障が充実するらしいのだが。

モヤモヤした庄司を迎える、今回の論説委員は浜田陽太郎。
穏やかそうな表情で、自己紹介を始めた。

半沢直樹世代
「庄司さんとちょうど10歳離れた、1966年生まれ。バブル経済が真っ盛りの時に、会社に入りました。 当時は、企業がどんどん採用していて、 最初は人生をなめていた世代です」

浜田の回顧によると、
特に銀行の採用意欲はすさまじかったらしい。
どうやら、半沢直樹世代のようだ。

「それでは、私から庄司さんにうかがいたいんですけど」
自己紹介を終えると、浜田はおもむろに逆質問を繰り出した。

「芸人って、厳しい世界じゃないですか。あえて、飛び込んだのは、なぜですか」

うん?
今回のテーマに関係あるのか?
戸惑いながら、庄司は語り始める。10代後半で迎えた人生の分岐点だ。

芸人にチャレンジしてみたい
子どものころからバラエティー番組が好きだった。
お笑い芸人に憧れた。
でも、なれるわけないよ、と高校卒業後、自動車関係の会社に就職した。

入社3日目、全国の新入社員が一堂に会した集まりが、転機だった。
意欲に満ちた大卒の同期がまぶしくて、劣等感に打ちのめされた。
こんなに差があって、この会社でやっていけるのか。

それならば、いちどはお笑い芸人にチャレンジしてみたい。
芸人になるにはどうしたらいいか、真剣に考えるようになった。
翌年、東京にオープンした吉本興業の養成所に入り、そこで相方と出会うのだった。

失敗しても、日本だから
「庄司さん、サーカスに空中ブランコってありますよね。そこには下にネットが張ってあります。
あれがなければ、空中ブランコにチャレンジするでしょうか?」
浜田が、問いかける。

まあ、しないかも、死にたくはないし。 「庄司さんが、お笑いという何の保障もない世界にチャレンジできたのも、
じつは社会保障があったからかもしれませんよ」

うん、何のことだ? そんなこと意識したことはないんだけど。

「失敗しても、日本だから、まさか飢え死にはしない、
どこかに働き口があって、そんなにひどい目には遭わないだろう、
って思っていませんでしたか」

確かに、仕事なんかで、色々な国に行かせてもらったけれど、
日本に生まれて良かったとすごく感じる。いまのところは……

「将来は不安なんですか」

「不安ですねえ」
浜田の問いかけに、庄司は即答した。

芸人の道を選んだからには、路頭に迷っても仕方がない、と生きてきた。
でも、家庭を持ち、変わりつつある。
自分はどうなっても構わないが、子どもは……。

誰もがやりたいことにチャレンジできる社会
もしも……。
浜田がシビアなシミュレーションをしてみせる。

「庄司さんが、ぜんぜん売れなくなって、お金がなくなった。
お子さんが、大学に行きたいけれど、勉強をさせてあげられない。困りますよね」

浜田は、こうした教育の部分まで含め、社会保障を考えるべきだと主張する。
庄司がお笑いの世界に飛び込んだように、
誰もがやりたいことにチャレンジできる社会、その基盤が社会保障というのだ。

ただし、そのためには、お金がかかる。
「社会保障は、保険料と税金を充てているけど、税金部分はほとんど借金で賄っています。
つまり、次世代につけを回している。
そこを何とかしましょう、というのが消費増税なんです」

次回は、6月12日ごろ配信します。

論説委員プロフィール浜田陽太郎

庄司智春より10歳年上の「バブル入社組」。初任地の宮城県でコメ農家に泊まり込み、田植えと稲刈りを体験取材。週刊誌アエラの記者時代には「コンビニで24時間ぶっ通しで働く」ルポにも取り組んだ。経済部を経て、2000年に新設された「くらし編集部」で、社会保障の取材を本格的に始める。人前で話すのが苦手という弱点克服のため、市民講座で落語を習ったときの高座名は「早口亭金朝」(緊張すると早口になるから)。6月からグローブ編集部員。

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