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12月11日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 8 裁判員に選ばれたら 庄司vs.論説委員 前編

裁判員たちが、実際にどんな話をして、判決を決めているか、
新聞記者でもなかなか分からない。
論説委員の井田香奈子の率直な言葉に、庄司智春は戸惑う。

言えないことばかり?
ネタになるかも、って言ったら不謹慎だけど、
みんながあまり知らないことを体験して、おもしろおかしく伝えたい。
それが、芸人ってものだけど……。
守秘義務って、そんなに言えないことばかりなのか。

井田が解説する。

判決は多数決で決まるが、
何対何だったかはダメ。
だれがどんな発言したかはもちろん、
どういう意見が出たかもダメ。

最初はみんな無罪だと思ったけれど、
裁判官の発言で有罪に傾いた、
といった評議の経過もダメ。

ダメダメ尽くし、じゃないか。
気持ちがなえかけた庄司に、井田は、海外の事例を持ち出した。

「アメリカの陪審員には守秘義務はないんです」

オープンなアメリカ
井田は、アメリカに留学して陪審制度を学んだ。
そこで、経験談をことあるごとに聞きあさった。

アメリカの対象事案は、刑事だけでなく、
民事も含まれ、日本よりずっと多い。
経験者も、それだけ多いのだ。

「話をふると、みんな一つや二つ、陪審員ネタを持っているんです」

例えば、こんな話。
レストランを訪れると、駐車場が離れていた。
車を止めて向かう途中に、別の車にはねられ、それでレストランを訴えた。
こんな、あほみたいな裁判に、おれがつきあわなければならないんだ、と。

マイケル・ジャクソンが少年への性的虐待の罪に問われ、無罪となった事件では、
評決後にニュース番組の生中継に陪審員がこぞって出演。
あげくに、何人かは「やっぱり有罪だと思う」と言った。

面白い、でも、アメリカの話でしょ。

裁判員の意外なランチ
「いやいや、日本でも、何も話せないわけではないはず」
井田はそう言って、『裁判員のあたまの中~14人のはじめて物語』(現代人文社)という本を紹介した。

制度が始まって間もない頃に裁判員を務めた男性が、
自らインタビュアーになって、ほかの経験者を訪ねる。
井田も、これを読んで、裁判員の心情で分かったことが多かったという。

裁判員としての苦労や葛藤だけでなく、トリビア的なディテールもお勧めだ。
午前中に裁判員に選ばれ、午後すぐに法廷。そのときの、昼食とはどんなものか。

庄司は想像する。
「きっと塗り箱みたいな器のちょっと豪華なお弁当で、これから頑張りましょう、って、親睦会的なランチですかね」

井田が首を振る。
「おかずも選べず、あげくに自腹。勝手に持ってきて、500円を徴収されたらしいです」

えー、それは、ないでしょ。
そういう生々しい話、ツイッターやブログで、発信したら面白いのに。

「裁判が終わるまではダメでしょう。
でも、この本は、弁護士が監修しているぐらいだから、
オープンにできる話は、いっぱいあるはずです」

よし、決めた。

おれが裁判員に選ばれたら、弁当の写真は必ず撮る。
それで「ダウンダウンDX」で「裁判員に選ばれて出てきたのは、こんな弁当です」としゃべるぞ。 井田が応じる。
「長丁場の裁判も増えてます。
何を食べ、どのくらい休憩があるか、そういう情報は知っておいたほうがいい。
庄司さんみたいな人が、楽しく伝えれば、裁判員制度はもっと国民に浸透しますよ」

おれでも役立つこと、あるかも。

「それでは、庄司さん、裁判員をやってもいいな、と思いますか」
井田が改めて尋ねた。

うーん。

死刑とか、究極の判断にかかわることもあるんですよね。
そんな重大な事件に当たったら、責任を負えるだろうか。
真顔に戻る。考えれば考えるほど、心が乱れていく。

次回は、7月31日ごろ配信します。

論説委員プロフィール井田香奈子

初任地の札幌で北海道南西沖地震、ホスピスの長期取材を経験し、いかに生き、死ぬかを考えさせられたことが記者としての土台になっている。2001年から司法制度改革を担当し、戦前の陪審制以来の市民の裁判参加が実現したことには格別の思い。08ー11年、ベルギー・ブリュッセルに勤務し、EUやNATOなどの国際舞台のかけひきを目の当たりにした。司法も国際政治もそうだが、お固くみえるルールを私たちの幸せのためにどう生かしていくか、をきちんと伝えられたらと思う。気分転換は各国料理を作って旅行した気分になること、野山に分け入ること。

もっと「裁判員制度」を読む

  • きょうも傍聴席にいます。(2014/05/22)

     事件は世相を映し出します。傍聴席から、朝日新聞記者が「現代(いま)」を見つめるシリーズです。

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