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10月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 10 ウクライナ情勢 庄司vs.論説委員 後編

ウクライナをめぐり、ロシアとアメリカの関係が険悪に。
そんなニュースを聞くと、第3次世界大戦が起こるのか、そんな心配が庄司智春にわき上がる。

第3次世界大戦が起こる?
「まあ、そう簡単にはならないでしょう」
論説委員の国末憲人は、
庄司を安心させるように応じた。

「ロシアとアメリカが戦争したとして、
ロシアに味方する国は、そう簡単に見つからないでしょう。
クリミアの併合を承認した国はほとんどありません。
勝敗は、はなっからついています」

世界を二つの陣営に分けていた冷戦時代から、国際情勢はまったく変わった。

「アメリカを始め旧西側諸国がもっとも恐れたのは、
核兵器でもソ連軍でもなくて、共産主義という思想だったと思います。
世界中にそれなりに広がっていましたから。
でも、もう共産主義が難しいことは分かってしまい、世界の対抗軸になりえません」

加えて、戦争を防ぐ仕組みが整備されてもきた。
100年前、オーストリア皇太子暗殺をきっかけとして世界中を巻き込む第1次世界大戦に一挙に発展した。
ただ現在は、当時はなかった国連や欧州連合(EU)があり、
ことが起これば仲裁する存在がいる。

そうか、ちょっと安心ではある。

新しい戦争の形
「しかしですね」と国末。

「世界戦争が起きなくても、世界がいろいろな形でつながっている時代です。
私たちが、どう紛争に巻き込まれるかわかりません」

ウクライナの問題はその不条理をまざまざと見せつけた。
マレーシア機が突然撃墜され、オランダ人やオーストラリア人がたくさん乗っていた。

「戦争の形も変わっています」と国末がたたみかける。

サイバー戦争みたいなことは、どこで何をしているか見えない。
核兵器も大国の管理が及ばない。
技術の進化に、国家さえも追いつけていない。

いやあ、やっぱり怖いわ。
生きている間に、新しい形の戦争が起きる気がする。
そして世界が変わってしまうんだ。いやあ、やっぱり恐ろしい。

日本にできること
不安にさいなまれる庄司だが、
気を取り直して尋ねる。
日本に、何かできることはあるのか。

「まず核兵器でいえば、広島・長崎の訴えはまだまだ大きな意味がある」と国末は力説する。

広島に勤務経験のある国末は、原爆資料館でぼうぜんと立ち尽くすアメリカ人をしばしば見た。
アメリカではまだ被害があまり知られていない。訴え続ける必要がある。

反対に、旧ソ連ではアメリカに対抗する意味もあり、
原爆被害を積極的に教えていて、それもあって日本に同情的な人も多いという。

「もう一つ、日本は戦後70年近く戦争をやらずにきました。その信頼は高い」

もっと積極的にリーダーシップをとったほうがいいということ?

「日本がうまくまとめてくれたら、
と思っている国はあると思います。
でも、あまりデカい顔はしないほうがいい。
いま中国はアフリカでお金を持っているから
歓迎される半面、嫌がられもする。
日本は、草食系の魅力を大事にしたいですね」

世界を少しでも笑顔に
海外に行っても、日本人は優しくされる。戦後の積み重ねのおかげだ。
しかし、僕ら芸人って、何もできないよなあ……

「私たち新聞記者も難しいですよ。
でも、イラク戦争に取材に行った時、
現地でバラエティーのテレビ番組『風雲!たけし城』が大人気でした。
庄司さんは海外で芸を披露されたことはありますか」

韓国の番組に呼ばれたことがある。
おしりでクルミを1分間に40個ぐらい割って、ギネスに載ったことがあるのだ。
それを聞きつけ、びっくり人間集合みたいな番組に出たっけ。

「痛くないんですか?」。国末が目を丸くする。

痛いです、むちゃくちゃ。

国末は言う。
「笑っている人は戦争しないですからね、戦争の時は笑うのがいちばんですよ」

そういえば最近、日本の芸人が海外でうけている話を耳にする。
陣内智則さんがラスベガスで英語で公演したり、
COWCOW(カウカウ)の「あたりまえ体操」がインドネシアで人気だったり。

夢が広がる。
何もできないと思っていたけれど、世界を少しでも笑顔にできるならば、
僕らも捨てたもんじゃないかも。

「ウクライナでクルミ割りをぜひ」
国末のエールに笑い声がわき、対談は幕を閉じた。

次回は「庄説」。12月11日ごろに配信します。

論説委員プロフィール国末憲人

1987年に入社。富山、徳島、大阪、広島での勤務の後、パリ支局員、パリ支局長、日曜版「GLOBE」副編集長を経て、2014年7月から論説委員。主な担当は欧州と中東。「世界のどこにでも行くぞ」をモットーに、アフリカのジャングルの村を訪ね、シベリアの果ての街に足を運ぶ。パレスチナやイラク、グルジアの戦場で取材したことも。ただ、欧州や中東アフリカの多くの国を訪れたものの、アジアの経験は薄く、中国には行ったことさえない。身近な国をもっと知らないと。国際記者への道はまだまだ遠いと実感する日。51歳

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