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10月17日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 13 AIIBの衝撃 「庄説」

アジアインフラ投資銀行(AIIB)という難解なテーマに挑んだ庄司智春。
中国や欧米など入り乱れる思惑を整理して、日本がすべきことは何かを庄説にまとめた。

日中歩み寄るきっかけに

中国が提唱するアジアインフラ投資銀行(AIIB)。
多数の国がお金を出し、発展途上国などへお金を貸し出す国際金融機関だ。
発展途上国が道路や鉄道をつくる時に、民間の銀行で借りるのではなく、
大きなお金を長い期間、融資してあげるわけだ。

既に各大陸にはそれぞれの銀行もある。
アジアではアジア開発銀行(ADB)が存在し、日本が一番お金を出している。
ただ、アジアはインフラが不足している国が多く、
ADBではまかなえてないのが現実だ。

世界銀行や国際通貨基金(IMF)、
ADBといった既存の機関はこれまで米欧などの先進国が主導していたが、
中国など新興国の経済力がついてきて、発言権が小さいことに不満が生まれた。
ならば新しい銀行を、中国主導で作ってしまおうというのがAIIBの始まりだ。

イギリスやドイツも手を挙げ、フタを開けてみれば57カ国が創設メンバーとして参加を表明し、予想よりも大きな規模になった。
先日、国内手続きを終えた国々が署名し、年内の運営開始をめざしている。

日本は現在入っていない。
国会では「バスに乗り遅れた」との発言まで飛び出したという記事を読んだ。
日本は大丈夫なのか?と正直思ったが、話を聞くと現段階では様子を見る方向で良いみたいだ。

世界の国際開発銀行は、どれも総裁を大口の借り手以外の国から出している。
借り手に都合よく巨額の資金を貸し出す「機関銀行」になってしまうのを防ぐためである。

世界銀行やADBから巨額の借り入れがある中国が、AIIBの最大出資国になって総裁も出すとなると、機関銀行化するのではという懸念がある。

中国が提案する、新シルクロード計画も気になる。
自国の発展のためにAIIBを利用することはあってはならない。
それはAIIBに参加する欧州のイギリスやドイツもそうだ。

日本が参加するには、今の日中関係や米中関係、日米関係も関係してくる。
世界での日本の立場を考えることも重要だ。

AIIBがうまれても、ADBがなくなるわけではない。
日本はまずは、AIIBを少し離れた距離で様子をうかがいつつ、ADBの向上に専念して欲しい。

日本は、ドイツからAIIBに入らないかと誘いを受けた。
中国サイドも、ドアを開けて待っていると発言している。
世界で、日本が必要とされている存在ということだ。

表立ってのリーダーではない。
だが、頭脳明晰(めいせき)で機動力のある、
スモールベースボールのようなスタイルで裏のリーダー的存在になり得ることに、僕は誇りを感じる。

日米が中心で進めているADBで、
中国の意見をこれまでより受け入れるのも一つの手のような気がする。
そうすることによって、日本と中国の両国が歩み寄れる良い関係が築きあげられるのではないだろうか。
ADB内での関係が良くなれば、AIIBにおける日本の必要性も強くなるはずだ。

AIIB、ADBを通じて、日中関係を始め、米中関係、世界各国が平和になることを、いち日本人として願うばかりである。

庄司智春

論説委員から

  •  庄司さんが次回「庄説」のテーマを「AIIB」でやってほしいのだという。最初は意外だった。なぜこんな地味でわかりにくく、ふだんの生活に直接かかわりがなさそうな話題に、芸人の庄司さんが興味をもったのか。 まあ、いずれにしても対談役を引き受けたからには背景も実情もきちんと理解してもらいたい。さて、どう説明したらいいものか。庄司さんはどんな点に関心があるのだろう……。

     対談の席で、庄司さんが語ったテーマ選定理由は単純明快だった。 「ニュースで何度も採り上げられているのに、よく意味がわからない。それって恥ずかしいですから」 いや、これはまずい。恥ずかしいのはメディアの側です。朝日新聞の記事を読んでも意味がわからないなんて。そう読者に言われてしまったら報道機関失格です。

     ここはきっちり汚名返上をしよう。そこで、まずはイメージしやすい例え話から始めてみた。米国が支配する国際金融ムラを「町内会」に置き換え、米国を町内会長に、中国を町に引っ越してきたばかりの新住民代表に見立てた。 この例えは割と通じやすかったようだ。ぶつけられた疑問点をひとつひとつ町内会の役員たちの思惑に置き換えて説明すると、庄司さんも納得した様子だった。 質問内容は次第に中国政府の思惑や、米英関係の亀裂などにも発展。すると、すっきり、わかりやすい説明を心がけて話す自分自身の話に、「なるほどこういうニュースだったのか」と改めて気づかされることも少なくなかった。

     日本のゆく道は「頭脳明晰で機動力のあるスモールベースボール」。庄司さんから発せられたこんな感想も、なるほど的を射ているな、と感心した。考えてみれば、日中対立の根源には、世界第2位の経済大国だった日本が急成長する中国にあっという間に追い抜かれ、引き離されたことにある。大国としての自信を得た中国は傲慢(ごうまん)になり、自信を失った日本は必要以上にその存在におびえている。ならば、実力が伴わない大国意識を日本が捨てるところから、外交や経済で生きる道が浮かび上がるのではないか。まさにスモールベースボールの精神だ。 この企画、庄司さんにニュースを教えているようでいて、むしろこちらがニュースの本質をいろんな形で教えられているようでもあった。

論説委員プロフィール原真人

 長野県出身。日本経済新聞社を経て1988年朝日新聞入社。財務省や経産省、金融庁などの経済官庁、日本銀行、経済界の取材を担当。「アベノミクス」や「異次元緩和」が将来の日本経済に及ぼす影響を問題視し、批判的な主張を続けてきた。編集委員や朝刊の当番編集長を経て、現在は論説委員として経済社説を担当。

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