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12月18日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 15 夫婦と姓 「庄説」

結婚して2人の子どもの父親である庄司智春は、同じ名字が家族の結束を強めていると実感している。
しかし、「夫婦同姓」をめぐる最高裁判決のニュースをきっかけに、姓には人それぞれの思いがあることに気づいた。
対談を通じて揺れた思いをかみしめながら、今回の庄説を書き上げた

選択肢が増えることで開ける未来

結婚したら名字が変わることを、真剣に考えたことがなかった。
僕が男性だからだろうか。

僕自身は7年前に結婚した。
そのとき妻の名字は、藤本から庄司に変わった。

僕が藤本姓を名乗ることは法律上可能だが、2人のなかでその選択肢はなかった。
結婚したら、妻が改姓することを当たり前のように思っていた。

夫婦同姓になることで結婚した実感があった。
妻が家の電話に「庄司です」と出た時はうれしかった。

書類に「庄司」と記入している妻を見て、幸せを感じた。
夫婦としての絆を強く感じた瞬間だった。

これは僕だけではなく、妻に聞いたら、同じ気持ちだった。
しかし、世の中には僕らのような夫婦ばかりではない。

昨年12月、夫婦同姓規定について最高裁が初めて憲法判断を示し、合憲と判断した。
「結婚後も同じ姓で生き、同じ姓で死にたい」という気持ちを抱えて苦しんできた人たちが、司法に救済の場を求めたことが、この裁判の始まりだったらしい。

結婚したら、どちらかの姓を選ばなくてはならないとする民法の規定は、約120年も前に定められた。

20年前には、結婚後も夫婦が望めば別々の姓を選べるという制度を盛り込んだ改正案を、法制審議会がまとめた。
しかし、「家族の崩壊につながる」などの反対があって実現されなかったらしい。

昔は、男性が外で仕事をして、女性が家で家事をするスタイルが多かった。
稼ぎがある夫の姓を選ぶことが当たり前とされてきた時代だったのだろう。

今は、男性が家事をして、育児に参加することも多くなった。
生活スタイルもだいぶ変わっている。
これからは、もっと女性が活躍する世の中になるだろう。

対談では、稼ぎの多いほうの姓を選ぶとしたら、という話になり、僕は「庄司ではなく藤本になってしまう」と、半分冗談で半分本当のようなことを言った。

結婚して女性が改姓することによって、仕事でデメリットがあるかもしれない。
姓が変わることが嫌で結婚しない人もいるだろうし、事実婚を選んだが、親権の問題で子供を生むことに二の足を踏むカップルもいるかもしれない。

女性も男性も、個人として活躍できる世の中にするにはもっと選択肢があったほうが良いと思うのだ。
僕らのように結婚して夫婦同姓を選ぶ者はそのままで良いし、お互いの名字を尊重し、別姓のほうが生活しやすくなるのであれば、それが良いと思う。

僕は小学2年から高校まで野球をやっていた。
中学の野球部に入ると、新1年生は部の決まりで全員丸刈りにすることが当たり前だった。
僕自身もそれに何の違和感も感じなかった。

高校の野球部もそうだった。
しかし、野球のセンス・才能はあるけれど、丸刈りが嫌で入部しない生徒も結構いた。

当時は根性論があがめられ、丸刈りにできない生徒は根性がないと判断されていたのだろう。
もちろん協調性が生まれたり、他のメリットもあるのだろう。

しかし、それよりもっとも大事にしないといけないセンスや才能を、髪形一つで縛られることで、失うメリットのほうが大きいのではないかと、僕は思うのだ。

夫婦同姓は、こんな問題とは全然違うことはわかっている。
しかし、大切なモノを見失わないで欲しい。

姓を変えずに事実婚を選択した人たちは配偶者として相続人になれなかったり、子供の親権を共同で持つことができなかったりと苦労している。

今まで当たり前だったことが、時代の変化によって当たり前ではなくなってきている。
選択肢が増えることで、時代にあった未来が開けるように思える。

夫婦同姓でも、夫婦別姓でも、お互いに認め合う世の中になってほしい。

庄司智春

論説委員から

  • 庄司さんと同じように私も、自分の家族は同じ名字がいいなあと思います。何しろ「ヤツ」という姓ですから、小さい頃は随分からかわれましたけど。 でも別々にしたいという人がいれば、それはそれでどうぞと。

    そもそも「同じ名字」の心をさぐると、「夫の姓にそろえるもんだ」という固定観念が自分の中にもチラチラします。いまはむかし、結婚したばかりの妻が旧姓でポイントカードをつくっているのを見て、ぎょっとしました。 「同じ名字というなら私の方に合わせてよ、と奥さんに言われたらどうします?」という庄司さんへの質問は、そのまま自分への問いでもありました。有名人夫婦をいじる楽しさというのも、まあちょっと、ありましたが。

    「なんで同じ名字じゃいけないのかなぁ」と対談では揺れていた庄司さん。結論までにはけっこう悩まれたのでは、と推測します。 この問題のひとつのカギは「自分が(姓を/○○を)変えて当たり前といわれる側に立たされても、そのシステムを支持しますか?」ということだと思うのですが、野球部の丸刈り問題と重ねてきたあたり、好きです。かしこまった言葉でこと足れりとせず、自分のフィールドに引き込む。朝日新聞の社説、庄説に負けてませんか?

    ブログなどを拝見すると、庄司さんは息子さんを幼稚園に迎えに行ったり、奥さんの誕生日にケーキをつくってあげたり。そんな姿勢も「家族の形はいろいろでいいんじゃない?」という結論につながったのではないでしょうか。「ミキティー!」の叫びは伊達じゃなかった!

論説委員プロフィール谷津憲郎(やつ・のりお)

 1994年に入社。東京社会部、那覇総局などを経て2015年秋から現職。20年間「おまえの意見なんてどうでもいい。事実をつかめ」と戒められてきたのに、いまや「で、主張すべき論は何?」と問われることに戸惑う44歳。社会部でも「何でも屋」としての遊軍が長く、専門分野を尋ねられるのが苦手です。ただし2回勤務した沖縄は関心事。沖縄国際大ヘリ墜落に走り、仲井真知事の埋め立て承認に嘆息しました。高校生の時、生まれた日には何があったのかと調べたら、翌日の朝刊1面は「沖縄、26年ぶり復帰確定/日米外相が協定に調印」の文字。ふぅ~んと無関心だったあの時の自分に将来を教えてやりたい。

もっと「夫婦と姓」を読む

  • (教えて!結婚と法律:1)同姓規定、背景に「家制度」(20151125)

     「結婚により夫婦は同じ姓になる」「女性は離婚後6カ月は再婚できない」。この二つの民法の規定が、憲法に違反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁大法廷が判決を言い渡します。「個人の尊重」や「男女平等」に反すると判断すれば、法改正に向けて動き出す契機になります。

  • (教えて!結婚と法律:5)夫婦別姓、各政党の立場は?(20151202)

     2014年9月29日、臨時国会の参院本会議。壇上の安倍晋三首相が所信表明演説で、女性が輝く社会の実現について「日本社会が本当に変わるのか」と力を込めたときだった。

  • どうして夫婦同姓なの 民法の規定、最高裁が初の憲法判断へ(20151102)

    結婚や家族のあり方に関わる大きな問題について、最高裁が近く初めて判断する。「女性の活躍推進」をうたう政府は、国際社会から改善を求められても夫婦別姓を認めない。歴史を振り返り、世論の動向や各国の仕組みを紹介する。

  • 「部屋とYシャツと私」と夫婦別姓 平松愛理さんは今(20151213)

     1992年の大ヒット曲「部屋とYシャツと私」を歌ったシンガー・ソングライターの平松愛理さん(51)はその後、結婚、出産、離婚を経験した。いま、夫婦別姓の問題をどう考えるのか。最高裁が16日に出す判決を前に聞いた。

  • 「結婚後の姓」、思い悩む若者 夫婦別姓訴訟、最高裁判決(20151217)

     結婚した男女は同じ姓にすることを定めた民法は、憲法に違反しないと、最高裁が判断した。夫婦が同じ名字を名乗ることは社会に定着しており、合理性が認められるという理由だ。結婚とは、家族とは――。未婚の若い世代も、自分の問題として受けとめ、悩んでいる。

  • 夫婦の姓、どう向き合うべきか 4千近い意見から考える(20151217)

     結婚に伴って姓を変え、不便、不利益、アイデンティティーの喪失を感じる人は今後も絶えることはないでしょう。「夫婦は同姓」を合憲とした最高裁判決の先、私たちが考えなければならないのは何か。

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