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12月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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Round 18
トランプ大統領の世界で 庄司vs.論説委員 前編

対談は異例の幕開けとなった。

「読みが間違っていました」
庄司智春の目の前に座った朝日新聞論説委員の沢村亙はそう切り出し、頭を下げた。

「いきなり、謝罪ですか」
思ってもみなかった行動に、庄司はのけぞった。どうして、こんな事態となったのか。 shosetsu18-1_01

初めての連続対談
昨年8月にさかのぼる。
二人は同じように机をはさんでいた。テーマはアメリカ大統領選。
民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプの決戦が迫っていた。

過激な言動で注目されるトランプは、話題の中心だった。
この型破りな男が、超大国のリーダーになったらどうなってしまうのか。
ただ、当時はクリントン有利という観測が支配的だった。

興味はそそられるけど、あくまで実現しないシナリオ。
そんな認識を二人は共有しながら、対談は進んだ。

しかし、昨年11月の大統領選の結果は、ご存じの通り。
予期せぬ展開を無視できず、「庄説」始まって以来初めて、続けて同じ対談相手と相まみえることになった。

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予想外したメディア
トランプ勝利のニュースを聞いたとき、庄司は驚愕した。
沢村だけでなく、日本のメディアの多くがクリントン優勢と報じ、すっかり信じていた。

全然違うぞ。なぜ、こんなことが起きたんだ。

「結果が出た後では、何とでも言えるんですが」

沢村はそう前置きをしたうえで、日本の報道のもとにもなった、アメリカのメディアが予想を外した理由の説明を始めた。
一つは、「隠れトランプファン」の存在だ。
女性蔑視やマイノリティー差別など、決してほめられない発言を繰り返すトランプ。
表だって支持するのはためわれるという層が相当数いたという見立てだ。

もう一つは、トランプを批判するメディアを毛嫌いしている人々だ。

世論調査の電話がかかってきても、何も答えずに切るか、うその回答をする。
こうして調査の精度が狂ってしまった。

そんなこともあるんだ。
とはいえ、なってしまったものは仕方ない。

そう思っていたけれど、1月に大統領に就任してからも、庄司は驚かされてばかりだ。

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就任後も「誤算」
「そこも誤算なんですよ」と沢村はこぼす。

いくら選挙中にムチャクチャ言っても、そこはアメリカ大統領。
就任したら現実的な対応に落ち着くのではないか、と期待があった。

ところが、イスラム教徒を狙い撃ちにしたような入国禁止、メキシコ国境の壁建設など、公約通りの政策をがんがん繰り出す。

「現地の記者は朝起きると、彼のツイッターを見ることから始まる。それは政府の役人も同じみたい」と沢村。

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根回しなしにツイッターで発信するから、聞いてないよ、とあちこちで振り回される。

トランプのニュースは、日本にも途切れることなく流れてくる。

「最初が肝心」とばかりにかましているだけ?
いや、なんか世界が変わろうとしている。
庄司にはそんな予感がしてしまう。

トランプ化する世界?
「問題なのは、トランプみたいな人がほかの国も出ていることです」と沢村はだめを押す。

4月から5月にかけて大統領選があるフランスを例に挙げる。
話題をさらうのが、極右政党の女性党首マリーヌ・ルペン。
反移民・反エリートを掲げて支持を広げている。

「まんま、トランプじゃないですか」
庄司は、すかさずつっこむ。

「そういう人が、現在のところ、一番人気ですから」と沢村は応じる。

「えー」。庄司はうなった。
そんなに支持されてるの?

ただフランスの大統領選は投票が2回あり、1回目で上位2人を決めて、2回目で決選投票となる。

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「アンチ・ルペンも多いから、決選投票ではそうした票が結集して、彼女が大統領になる可能性はそんなに高くは…」
ここで、沢村は言いよどんだ。

「確定的な予測は言わないほうがいいですね。トランプのことがありましたから」

庄司は苦笑した。
弱気にもなるよな、あの大統領選を経験したら。

沢村は言った。
「世界中で何が起きるか分からなくなってしまっているんですよ」

次回は4月14日ごろに配信する予定です。

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論説委員プロフィール沢村亙(さわむら・わたる)

 東京都生まれ。1986年に入社。松山、神戸での勤務を経て、社会部で警視庁を担当。これで事件記者人生かと思いきや、93年にニューヨークに赴任。いらい、ロンドン、パリ、2度目のロンドン、そして北京(清華大学の客員教員)と、計14年近くを海外勤務で過ごす。

 見かけだけは「国際派」っぽくみえるかもしれないが、帰国子女でもなければ学生時代の留学経験もなし。赴任まで海外出張すらなかった。しかも米国も英国も赴任が初めての渡航だった。当然、英語では苦労したかわり、外の世界は何もかもが目新しく「なんでも見てやろう」の気概だけは人一倍強かったかもしれない。

 思い入れが強いのは、長く過ごした欧州。ベルギーとオランダの境界では複雑に国境が入り組み、民家や店の中まで国境線が貫く村も。夜はベルギー側の寝室で寝て、目が覚めるとオランダ側の食堂で朝食をとる住民もいた。かたやアジアでは「領土」をめぐっていがみ合うせつなさを実感。そうかと思えば、英国の北アイルランドの町では、いまなおプロテスタント系とカトリック系の住民を巨大な壁が隔てる。人間の英知と愚かさが凝縮された土地を愛してやまない53歳。

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