メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

10月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

Round 18
トランプ大統領の世界で 庄司vs.論説委員 後編

庄司智春はアメ車が好きで、乗っている。
車だけでない、古着やブーツなどアメリカのビンテージは大好きだ。
格好いい。まさにブランドだ。 shosetsu18-2_01 けれど、トランプ就任以降のアメリカを見ていると思ってしまう。

日本車に買い替えようかな。

「メイドインUSA」をトランプはしきりに強調する。
国外でなく、アメリカ国内の工場でものを作れ、と。
他国や企業をなかば脅すように。
でも、そんなふうに作られたものは、庄司が好きなアメリカ製品と違う気がする。

アメリカはあこがれだった
「それは重要な指摘です」と
沢村はうなずく。

庄司より一回りほど年上の沢村は、
中高生のころ在日米軍のラジオ放送で
「全米トップ40」を毎週聞いていた。

イーグルスなど、
アメリカ音楽にしびれた。

shosetsu18-2_02

アメリカは世界中のあこがれだった。
中国人にもロシア人にとっても。
軍事力・経済力以上に、自由や開放感といったイメージに
彩られたソフトパワーこそがアメリカの強みだ。

「格好良かったメイドインUSAに、これからはトランプさんの顔が浮かんでしまってはね」と、沢村は強引な「アメリカファースト」に疑問を呈する。

shosetsu18-2_03

「もはやメイドイントランプみたいな」
と庄司も返す。

今までみたいに胸張って
「アメリカ好きだあ」と
言いづらくなりそう。
好きでいたいんだけど…

日本はどうつきあえば
そんなトランプのやり方に、ほかの国からは懸念が出ている。
はっきりと異論を唱えるヨーロッパの首脳もいる。
日本はどうつきあえばいいのか。

「安倍首相はゴルフもして、仲良くなったようですけど、いい兆しですか」
と庄司は質問する。

「いまのところはうまくいっています。
最初からけんかする必要はないですし」と沢村は答える。
ただ、心配な点がいくつかあるという。

「きずなができた」と日本が思っていても、予測不能なトランプにそれが通用するのか。
「取引」を重視するスタイルなので、弱みを見せればかさにかかってくる可能性もある。

さらに、泥舟でもろとも沈んでしまうことだってあり得る。
安倍政権が重視していたTPPに、トランプはまったく聞き耳を持たなかった。
日本にとっては貿易上の利益以上に、中国に対抗する秩序づくりの狙いがあったのに。

「せっかく仲良くなるのなら、トランプ大統領にひと言もの申せる関係になれるといいのですが」

戦争は起きるのだろうか
今のところ、誰もトランプを止められない。
このまま、他国の顔色などうかがわずに突き進んだら、
戦争が起きることだってあるのだろうか。
二人の小さい子どもがいる庄司としては心配だ。

「変な質問ですけど、トランプさんは
戦争をするタイプの大統領ですか」
と庄司は尋ねる。

「難しい質問ですね」
と沢村はしばらく考え込む。

トランプは、イラク戦争は失敗だった、
とはっきり言っている。
泥沼に突っ込んで、
たくさんのアメリカ人が
死んでしまった、と批判する。

shosetsu18-2_04

一方で、アメリカはもっと強くなければならない、と軍備・核兵器の増強を主張している。
今のままでは弱すぎる、他国がひれ伏す強さを、と。

理屈は分かる。
でも、アメリカが軍備を増やせば、向こうも増強しようとなりかねない。
トランプが好んで戦争をしなくても、相手を刺激すれば、何が起きるか分からない怖さがある。

「そうならないためにも、安倍さんには羽交い締めとは言いませんが、ちょっと手を抑えるぐらいの役割は期待したいです」と沢村は言う。

shosetsu18-2_05

「トランプさんが大統領になって、
いいことはあったのかもしれません」
と庄司。

世界の出来事に関心を持ち、
日米関係はこのままでいいのかと考える。
そんなきっかけに
なっているという意味では…

「自分に言い聞かせよう
としていませんか」と
沢村が尋ねると、
庄司は苦笑いを浮かべた。

「少なくとも4年間、そう考えないと持ちませんよね」

そうなんだ。
どうあがいたって、しばらくはトランプ大統領で世界は進んでいくんだから。

次回は「庄説」。21日ごろに配信する予定です。

shosetsu18-2_06.jpg

論説委員プロフィール沢村亙(さわむら・わたる)

 東京都生まれ。1986年に入社。松山、神戸での勤務を経て、社会部で警視庁を担当。これで事件記者人生かと思いきや、93年にニューヨークに赴任。いらい、ロンドン、パリ、2度目のロンドン、そして北京(清華大学の客員教員)と、計14年近くを海外勤務で過ごす。

 見かけだけは「国際派」っぽくみえるかもしれないが、帰国子女でもなければ学生時代の留学経験もなし。赴任まで海外出張すらなかった。しかも米国も英国も赴任が初めての渡航だった。当然、英語では苦労したかわり、外の世界は何もかもが目新しく「なんでも見てやろう」の気概だけは人一倍強かったかもしれない。

 思い入れが強いのは、長く過ごした欧州。ベルギーとオランダの境界では複雑に国境が入り組み、民家や店の中まで国境線が貫く村も。夜はベルギー側の寝室で寝て、目が覚めるとオランダ側の食堂で朝食をとる住民もいた。かたやアジアでは「領土」をめぐっていがみ合うせつなさを実感。そうかと思えば、英国の北アイルランドの町では、いまなおプロテスタント系とカトリック系の住民を巨大な壁が隔てる。人間の英知と愚かさが凝縮された土地を愛してやまない53歳。

もっと「トランプ大統領」を読む

!

スクラップブックの保存可能件数が5,000件に

!

紙面イメージの「地域面」がさらに充実したものになりました

注目コンテンツ