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8/2 10:45 シエラマドレ号の甲板。さび付いてところどころ穴が開き、危険だ=南シナ海・アユギン礁

2014 8/2 - 8/6

 「難破船」、シエラマドレ号には、フィリピン海兵隊の分隊が駐留している。冷蔵庫も冷房もなく、魚を捕って自活する。過酷な生活環境だが、駐留することそのものが仕事。実効支配を維持するための現代の防人たちである。

 「難破船」、シエラマドレ号には、フィリピン海兵隊の分隊が駐留している。冷蔵庫も冷房もなく、魚を捕って自活する。過酷な生活環境だが、駐留することそのものが仕事。実効支配を維持するための現代の防人たちである。

 「難破船」はもともと、第2次世界大戦中に建造された米軍の戦車揚陸艦だった。全長100メートル。南ベトナム政府に払い下げられたが、ベトナム戦争後、フィリピンに供与された。

 シエラマドレ号と名付けたフィリピン国軍が1999年、アユギン礁に座礁させ実効支配の拠点とした。

 中国が95年、「漁船の避難所」として、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるミスチーフ礁に建造物を構築した。対抗して、南東に33キロのアユギン礁に座礁させたのだ。

 以後、海兵隊員らを約10人ずつ交代で常駐させる。

 「難破船」乗船は、潮が満ちた2日早朝になった。

 遠目には対空砲を備え、レーダー塔が周囲を見渡す立派な巨艦だが、木と縄でつくったはしごを上ると、建造後70年の船体はさび、甲板のあちこちに穴があいていた。「梁を踏んで歩け。でないと踏み抜くぞ」と警告された。

 砲台は朽ち、ドアはないか外れている。船倉は巨大なゴミ屋敷と化していた。蚊とゴキブリが大量に繁殖し、ネズミが走り回る。

8/6 08:38 シエラマドレ号では11人の海兵隊員が駐留する

 「難破船」はもともと、第2次世界大戦中に建造された米軍の戦車揚陸艦だった。全長100メートル。南ベトナム政府に払い下げられたが、ベトナム戦争後、フィリピンに供与された。

 シエラマドレ号と名付けたフィリピン国軍が1999年、アユギン礁に座礁させ実効支配の拠点とした。

 中国が95年、「漁船の避難所」として、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるミスチーフ礁に建造物を構築した。対抗して、南東に33キロのアユギン礁に座礁させたのだ。

 以後、海兵隊員らを約10人ずつ交代で常駐させる。

 「難破船」乗船は、潮が満ちた2日早朝になった。

 遠目には対空砲を備え、レーダー塔が周囲を見渡す立派な巨艦だが、木と縄でつくったはしごを上ると、建造後70年の船体はさび、甲板のあちこちに穴があいていた。「梁を踏んで歩け。でないと踏み抜くぞ」と警告された。

 砲台は朽ち、ドアはないか外れている。船倉は巨大なゴミ屋敷と化していた。蚊とゴキブリが大量に繁殖し、ネズミが走り回る。

8/6 07:02 国旗を掲揚する海兵隊員

 サラコディン・マンギディア少尉(29)以下11人の海兵隊員は6月中旬に赴任した。船内に蚊帳やハンモックをつって暮らす。

 任期は3~5カ月だが、生活環境は過酷だ。空調はもちろん、扇風機も冷蔵庫もない。電気は発電機で夜の数時間供給されるだけ。炊事、洗濯、体を洗う水は雨水が頼りだ。

 私たちの滞在中、調理用のガスが底をつきそうになった。通りがかった漁船からボンベを買おうと交渉したが、持ち合わせがないと断られた。「天然ガスの宝庫の上にいるわれわれはガス欠だ」と隊員が自嘲する。ココナツの実でつくった炭で代替するという。

 コメと缶詰類、飲料水は運搬船、時に軍用機から配給されるが、おかずの魚や貝類は海で取って自活する。娯楽はDVD鑑賞やチェス、トランプなど。廃材を使ったダンベルなどで手作りしたジムで汗を流す。

 海兵隊は同国軍約12万5千人のうち約8千人の精鋭部隊だ。反政府ゲリラとの戦闘の前線に立つ。

8/3 13:07 スマートフォンに保存した映画を見る海兵隊員。船内は娯楽が少ない

 サラコディン・マンギディア少尉(29)以下11人の海兵隊員は6月中旬に赴任した。船内に蚊帳やハンモックをつって暮らす。

 任期は3~5カ月だが、生活環境は過酷だ。空調はもちろん、扇風機も冷蔵庫もない。電気は発電機で夜の数時間供給されるだけ。炊事、洗濯、体を洗う水は雨水が頼りだ。

 私たちの滞在中、調理用のガスが底をつきそうになった。通りがかった漁船からボンベを買おうと交渉したが、持ち合わせがないと断られた。「天然ガスの宝庫の上にいるわれわれはガス欠だ」と隊員が自嘲する。ココナツの実でつくった炭で代替するという。

 コメと缶詰類、飲料水は運搬船、時に軍用機から配給されるが、おかずの魚や貝類は海で取って自活する。娯楽はDVD鑑賞やチェス、トランプなど。廃材を使ったダンベルなどで手作りしたジムで汗を流す。

 海兵隊は同国軍約12万5千人のうち約8千人の精鋭部隊だ。反政府ゲリラとの戦闘の前線に立つ。

 軍歴20年のエンリケ・エラシオン軍曹(43)は前線勤務よりきついとこぼす。「家族と離れ、時間をもてあます。忍耐が必要だ」

 環礁の外側に昨年4月から中国船が常駐。このころから、環礁に近づく船への妨害も始まった。通常は2隻が南北に停泊し、4隻の時もある。週2回は400メートル程度まで近づいてくる。

 今年3月には中国船が比水産庁の船に無線を通じ、英語で「ここは中国の領海である。退出しなければ、何が起きても責任はそちらにある」と警告した。

 8月4日午前9時、私たちを追いかけた海警3111が接近してきた。「訪問者があると、いつも偵察に来る」とロランド・ウォン伍長(28)。中国のものとみられる偵察機がその後、上空を旋回した。

 フィリピンは、スプラトリー諸島のうち九つの島や環礁を占有するが、中国船の監視に常にさらされ、近づく船が妨害されるのはここだけだ。

 中国にとっては、ミスチーフ礁に近いうえ、シエラマドレ号を、周辺の海域で最も脆弱な拠点とみているからと推測される。海警の船を送り、フィリピン側によるシエラマドレ号の大規模補修を阻止し、崩れ落ちるのを虎視眈々と狙っているようにみえる。

8/2 07:34 取材班がパラワン島で集めた海兵隊員へのメッセージ

 軍歴20年のエンリケ・エラシオン軍曹(43)は前線勤務よりきついとこぼす。「家族と離れ、時間をもてあます。忍耐が必要だ」。家族との連絡は、1本だけの衛星電話に向こうからかけてもらうしかない。

 環礁の外側に昨年4月から中国船が常駐。このころから、環礁に近づく船への妨害も始まった。通常は2隻が南北に停泊し、4隻の時もある。週2回は400メートル程度まで近づいてくる。

 今年3月には中国船が比水産庁の船に無線を通じ、英語で「ここは中国の領海である。退出しなければ、何が起きても責任はそちらにある」と警告した。

 8月4日午前9時、私たちを追いかけた海警3111が接近してきた。「訪問者があると、いつも偵察に来る」とロランド・ウォン伍長(28)。中国のものとみられる偵察機がその後、上空を旋回した。

 フィリピンは、スプラトリー諸島のうち九つの島や環礁を占有するが、中国船の監視に常にさらされ、近づく船が妨害されるのはここだけだ。

 中国にとっては、ミスチーフ礁に近いうえ、シエラマドレ号を、周辺の海域で最も脆弱な拠点とみているからと推測される。海警の船を送り、フィリピン側によるシエラマドレ号の大規模補修を阻止し、崩れ落ちるのを虎視眈々と狙っているようにみえる。

 3月末まで5カ月間駐留したフィリピン海軍のマイク・ペロテラ中尉(31)は「手を入れなければ、シエラマドレ号はあと5年で崩れて不思議はない」。マニラ駐在の外交官は「崩壊したとたんに中国が環礁を占拠するだろう」とみる。

 軍は補給や兵士の交代に軍艦でなく、民間船を使う。「摩擦を避け、攻撃の口実を与えないため」(西部司令本部幹部)だ。

 「最後の血の一滴が尽きるまで降参しない」。船内のタンクにはこんな書き込みがあった。だが、中国軍との装備の差は歴然だ。

 ゲリラとの実戦経験の豊富なラジク・サヌシ軍曹(39)は言う。「中国船が本当に攻めてきたらどうする? 正直言って分からない。神のみぞ知る、だ」

8/4 09:07 シエラマドレ号の近くまで接近する中国海警3111

8/2 11:09 「最後の血の一滴が尽きるまで降参しない」。船内のタンクの書き込み

 3月末まで5カ月間駐留したフィリピン海軍のマイク・ペロテラ中尉(31)は「手を入れなければ、シエラマドレ号はあと5年で崩れて不思議はない」。マニラ駐在の外交官は「崩壊したとたんに中国が環礁を占拠するだろう」とみる。

 軍は補給や兵士の交代に軍艦でなく、民間船を使う。「摩擦を避け、攻撃の口実を与えないため」(西部司令本部幹部)だ。

 「最後の血の一滴が尽きるまで降参しない」。船内のタンクにはこんな書き込みがあった。だが、中国軍との装備の差は歴然だ。

 ゲリラとの実戦経験の豊富なラジク・サヌシ軍曹(39)は言う。「中国船が本当に攻めてきたらどうする? 正直言って分からない。神のみぞ知る、だ」