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2014 7/31 - 8/2

 周辺国による領有権争いが続く南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島。私たち朝日新聞とテレビ朝日の取材班は「紛争の海」を取材するため、漁船をチャーターし、フィリピンが実効支配する島や環礁を訪ねた。

 最初にめざしたのは、同諸島のなかで中国がいま最も締めつけを強めているアユギン礁だ。礁内に鎮座する「難破船」こと、フィリピン海軍シエラマドレ号が今後、争いの「火種」になりかねない比側の最前線であるからだ。

2014 7/31 - 8/2

 周辺国による領有権争いが続く南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島。私たち朝日新聞とテレビ朝日の取材班は「紛争の海」を取材するため、漁船をチャーターし、フィリピンが実効支配する島や環礁を訪ねた。

 最初にめざしたのは、同諸島のなかで中国がいま最も締めつけを強めているアユギン礁だ。礁内に鎮座する「難破船」こと、フィリピン海軍シエラマドレ号が今後、争いの「火種」になりかねない比側の最前線であるからだ。

 7月28日、フィリピン西部パラワン島に到着した。すぐにも出港したかったが、台風12号の影響で波が高く、待機が続いた。

 31日午後1時半、同島の州都プエルト・プリンセサを出発。陸路で5時間、日系企業がニッケルを積み出すリオトゥバ港に着いた。停泊する漁船を見たとき、「思ったより小さいな」と感じた。全長は20メートルほど。

 午後8時半に出港した。台風の余波で船は揺れた。体感的には45度ずつ左右に振れる感じだ。立つことが難しいので、トイレに行くのも大変。横になってひたすら寝るしかない。

 取材班は新聞とテレビあわせて日本人6人とフィリピン人2人。この海域を管轄する自治体カラヤン群島町のユーヘニオ・ビトオノン町長とそのスタッフ2人、沿岸警備隊員3人が同乗した。船主、船長、乗組員ら10人とあわせて総勢24人が狭い船内にひしめき合い、文字どおりの雑魚寝。寝返りも打てない。

 アユギン礁はパラワン島から約200キロ。ふつうなら14時間の行程だが、強い向かい風と高い波で思うように進まない。

8/1 22:02 船の中での夕食。食べて寝るだけの航行が続いた

 8月1日午後6時半、アユギン礁まで16キロ。目の良い乗組員が、はるか水平線の近くに停泊する中国船を見つけた。中国海警局(沿岸警備隊)の大型船3111。漁船と逆方向を向き、動く気配がなかったので、全員で夕食のカップ麺を食べ始めたときだ。

 「向きを変えたぞ」。操舵士が叫んだ。中国船がUターンし、猛烈な勢いで突進してきた。日が沈みかけていた。船主のパシ・アブドゥルパタさん(40)は「礁に入るのを阻む気だ」と動揺を隠さない。

 7月28日、フィリピン西部パラワン島に到着した。すぐにも出港したかったが、台風12号の影響で波が高く、待機が続いた。

 31日午後1時半、同島の州都プエルト・プリンセサを出発。陸路で5時間、日系企業がニッケルを積み出すリオトゥバ港に着いた。停泊する漁船を見たとき、「思ったより小さいな」と感じた。全長は20メートルほど。

 午後8時半に出港した。台風の余波で船は揺れた。体感的には45度ずつ左右に振れる感じだ。立つことが難しいので、トイレに行くのも大変。横になってひたすら寝るしかない。

 取材班は新聞とテレビあわせて日本人6人とフィリピン人2人。この海域を管轄する自治体カラヤン群島町のユーヘニオ・ビトオノン町長とそのスタッフ2人、沿岸警備隊員3人が同乗した。船主、船長、乗組員ら10人とあわせて総勢24人が狭い船内にひしめき合い、文字どおりの雑魚寝。寝返りも打てない。

 アユギン礁はパラワン島から約200キロ。ふつうなら14時間の行程だが、強い向かい風と高い波で思うように進まない。

 8月1日午後6時半、アユギン礁まで16キロ。目の良い乗組員が、はるか水平線の近くに停泊する中国船を見つけた。中国海警局(沿岸警備隊)の大型船3111。漁船と逆方向を向き、動く気配がなかったので、全員で夕食のカップ麺を食べ始めたときだ。

 「向きを変えたぞ」。操舵士が叫んだ。中国船がUターンし、猛烈な勢いで突進してきた。日が沈みかけていた。船主のパシ・アブドゥルパタさん(40)は「礁に入るのを阻む気だ」と動揺を隠さない。

8/1 19:10 漁船に迫る中国海警の船

 6ノット(時速約11キロ)の漁船に対し、中国船は37ノットという。10分ほどで漁船の目の前に割り込み、強力なサーチライトを当ててきた。「ブオー」と威嚇するように大きな警笛を鳴らす。

 「ぶつけられるかも」

 私たちはあわてて救命胴衣を身につけ、柱やへりにしがみついた。

 漁船は面舵をきり、北に進路を変えるが、中国船は執拗に追ってくる。船間が約50メートルに迫った時、中国船は突然止まった。

 漁船は船長の機転で浅瀬を走り、引き潮も味方して、中国船はそれ以上進めなくなったようだ。何とか礁内に逃げ込めた。

 パラワン島の港を出て24時間がたっていた。ビトオノン町長は「何度も中国船の嫌がらせを受けたが、今回は沈められるかと一番緊張した。荒波のなかで民間船をここまで追い詰めるとはひどい」と憤った。

8/1 19:23 追跡を止めた中国海警の船サーチライトが遠ざかる

 6ノット(時速約11キロ)の漁船に対し、中国船は37ノットという。10分ほどで漁船の目の前に割り込み、強力なサーチライトを当ててきた。「ブオー」と威嚇するように大きな警笛を鳴らす。

「ぶつけられるかも」

 私たちはあわてて救命胴衣を身につけ、柱やへりにしがみついた。

 漁船は面舵をきり、北に進路を変えるが、中国船は執拗に追ってくる。船間が約50メートルに迫った時、中国船は突然止まった。

 漁船は船長の機転で浅瀬を走り、引き潮も味方して、中国船はそれ以上進めなくなったようだ。何とか礁内に逃げ込めた。

 パラワン島の港を出て24時間がたっていた。ビトオノン町長は「何度も中国船の嫌がらせを受けたが、今回は沈められるかと一番緊張した。荒波のなかで民間船をここまで追い詰めるとはひどい」と憤った。

 パラセル諸島で5月から続いた中国とベトナムの争いは、中国が7月に石油試掘作業を終え、小康を得た。その後、「中国の艦船が多数南下してスプラトリーに展開している」と、比西部方面司令部の最高幹部は証言する。

 中国は南シナ海の9割に管轄権が及ぶと主張。中国を牽制したい米国は、アジア回帰の「リバランス」政策を打ち出した。

 南シナ海の構図は、尖閣諸島をめぐり日中がせめぎあう東シナ海にも通じる。

8/2 06:53 目指すシエラマドレ号がアユギン礁に姿を見せた

 パラセル諸島で5月から続いた中国とベトナムの争いは、中国が7月に石油試掘作業を終え、小康を得た。その後、「中国の艦船が多数南下してスプラトリーに展開している」と、比西部方面司令部の最高幹部は証言する。

 中国は南シナ海の9割に管轄権が及ぶと主張。中国を牽制したい米国は、アジア回帰の「リバランス」政策を打ち出した。

 南シナ海の構図は、尖閣諸島をめぐり日中がせめぎあう東シナ海にも通じる。