トヨタ自動車の豊田章男社長は3日、同社本社で社長就任後初めて朝日新聞の単独インタビューに応じ、「規模の追求だけの成長でなく、いい車づくりを目指す」と述べ、拡大路線から転換する姿勢を鮮明にした。急速な円高には「状況は大変厳しい」との認識を示す一方、「日本でのものづくりにこだわる」と強調した。
トヨタはリーマン・ショックで販売が落ち込むまで規模重視の経営を志向していたが、豊田社長は「車づくりを通じて社会に貢献するのが我々の会社が生まれた理由」と、販売台数や利益規模にこだわらない姿勢を示した。
1ドル=85円を超える円高への対応については、「基本は売れるところでつくる」とし、現地生産を進める考えだが、日産自動車のような国内主力車種の海外生産については、慎重な考えを示した。
豊田社長は今年2月、大規模リコール(回収・無償修理)の問題に絡み、米議会下院の公聴会で証言。この際、「この立場でいられると思っていなかった」と、辞任を覚悟していたことを明らかにした。
トヨタ車の急加速の原因について、米運輸省が電子制御システムに問題は見つからず、運転手の運転ミスを示唆する中間報告をまとめたことには「安全な車社会に向けて努力していく考えは一切ぶれない」と述べるにとどめた。(中川仁樹、久保智)
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トヨタ自動車の豊田章男社長が、朝日新聞の単独インタビューに応じた。主なやり取りは、次の通り。
――社長就任後、社員に「車好きになって欲しい」と言い続けているが、なぜか。
「車づくりを通じて社会に貢献することが、我々の会社が生まれた理由。『原点回帰』を訴えるためには、それが一番分かりやすい。社員に車の楽しさやワクワク感、利便性を、頭ではなく体で感じて欲しい。車が好きであれば、仕事にも幅が出る」
――若者の車離れが進んでいる。
「というより、自動車会社が若者から離れた。私がイベントなどで自ら車を運転するのは『あのおじさんは何であんなに楽しそうなんだろう』と、子どもたちに興味を持って欲しいから。大人が格好よく見せれば、子どもは車に興味を持つはずだ」
――円高の影響は。
「今の状況は大変厳しい。だが、トヨタは日本で生まれたグローバル企業。どこの国でもよき企業市民でありたい一方、日本で頑張り続けることにこだわっていきたい」
――国内向け主力車の生産を、海外に移す考えは。
「日本でのものづくりにこだわりたい思いは強く、基本は売れるところでつくる。ただ、結果的に、そうなることもあるかもしれない」
――エコカー補助金が9月末で終了する。
「自動車産業のすそ野の広さや雇用の維持を考えると、大変ありがたい施策。地球環境の点からみても有意義。もう1、2カ月続けてくれれば良かったとは思う」
――2月に米議会の公聴会で証言したが、心境は。
「この立場でいられるとは思っていなかった。『私がしんがり役なんだ』と自分自身を奮い立たせた。言葉では理解していたつもりだが、トップの責任の重さを痛感した」
――米運輸当局が、トヨタ車の急加速問題で、電子制御の問題は見つかっていないと中間報告を出した。
「安全な車社会をつくりたい点では、私たちと米当局は共通している。安全な車社会に向けて日々努力していく考えは一切ぶれない」
――トヨタは電気自動車に消極的だとも言われるが。
「とっくの昔にスポーツ用多目的車『RAV4』の電気自動車を発売した。納得いかない。トヨタは環境対応車の分野では全方位で準備を進めている。米ベンチャーのテスラ・モーターズとの提携で、それが盤石になった」
――「現場に近い社長でいたい」が信念だそうだが。
「絶えず成長し続けるには、色んな人に話を聞くことが大切。たまに『散歩』と称して突然、販売店や工場に行く。会社の意思決定をするためにも、できる限り現場に近い情報が欲しい。痛みを伴う判断をするとき、どれだけ悲しむ人の顔を頭に浮かべたうえで決められるかが重要だ」
――投資家からは「もっと収益に目を向けて」という声が聞かれるが。
「短期的には応え切れていないということは、率直に認める。しかし、投資家からは持続的成長、長期安定成長も求められている。それに向けて努力している。必ず結果は出ると信じている」
――社長にとってトヨタとは。
「人生そのものだ。トヨタにかかわる多くの人を代表し、その気持ちを維持する責務が私にはある」
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〈豊田章男(とよだ・あきお)〉 名古屋市出身。慶大法卒。米国に留学後、現地の金融会社に就職。1984年、トヨタ自動車に入り、生産調査部や国内業務部、米合弁会社「NUMMI」の副社長などを経て、2000年6月に44歳で取締役就任。05年に副社長、09年6月から現職。54歳。
1998年から現在も放送中、テレビ朝日の長寿温泉番組「秘湯ロマン」。日本人の心の故郷〈秘湯〉を求め、全国のこだわりの温泉を紹介するDVD決定盤。