秋田藩の初代藩主、佐竹義宣(さたけよしのぶ)の実弟・芦名義勝(あしなよしかつ)が街並みを築き、佐竹北家の城下町として栄えた角館(かくのだて、秋田県仙北市)。駅の待合室には県出身のシンガー・ソングライ…[続きを読む]
旅は夢に似ている――。連載の初回にそう書いた。それでも、いつかは覚めてしまうのだろうか。 内陸線の風景に彩りを添えてきた「田んぼアート」。羽後(うご)太田駅(秋田県仙北市)を過ぎてまもなく、最後の…[続きを読む]
「旅の行き方」について説いたガイド本はある。だが、「旅の帰り方」というテーマで書かれた本はあまり聞いたことがない。全29駅をめぐる内陸線の旅。残すところ3駅となった。 西明寺(さいみょうじ)駅(秋…[続きを読む]
「朝寝して寝返りうてば昼寝かな」。俳句が趣味だった渥美清さんの作品。ごろん、ごろんと旅先の宿で横になっているフーテンの寅さんが目に浮かぶ。 ここも昼寝には最適ではないか。農家の宿「星雪館(せいせつ…[続きを読む]
無性にラーメンが食べたくなるときがある。相変わらず、スマホでいきなりネット検索する同僚がいるが、文句も言いたくなる。 「おいおい、記者なら足で稼げよ、足で」 初めて降りた松葉駅(秋田県仙北市西木…[続きを読む]
日本人は古来、性に関しておおらかなのだろう。駅がある秋田県仙北市の西木町桧木内中里地区。旧暦1月15日の夜に行われてきた奇祭「カンデッコあげ」(今年は3月2日)も、明るくユニークな祭りだ。 参加す…[続きを読む]
深い山々に沿うように走る内陸線。不思議な地名が多い。左通(さどおり、秋田県仙北市西木町)は「サントゥンオリ」(山の先にある丘や坂)が転化したという。 武者伝説もある。 佐藤功さん(78)の先祖は…[続きを読む]
戯曲や滑稽本を書いたり、発電装置エレキテルの実験をして人々を驚かせたり……。「たり」がいくつあっても足りない。江戸時代の博物学者で戯作(げさく)者の平賀源内である。「土用の丑(うし)の日」にウナギを…[続きを読む]
ガタン、ゴトンと揺られながら、ふいにオギュスタン・ベルクが懐かしくなった。優れた風景論で知られるフランスの文化地理学者である。名著「空間の日本文化」で指摘していた。 「日本の街路は、目的語を持たな…[続きを読む]
クマなどの獲物を追って山を駆けめぐる狩猟集団マタギ。森吉山(もりよしざん)(1454メートル)のふもとに広がる阿仁(あに)地区(秋田県北秋田市)は「マタギ発祥の地」といわれ、いまも伝統を引き継いでい…[続きを読む]
ここもアイヌ語に起源を持つと推測される地名だ。「石ころをいつも拾う沢」との意味があるという。かつては終着駅でもあった比立内(ひたちない)。鷹巣(たかのす)から来た列車はここで折り返した。 待合室の…[続きを読む]
待合室にそっと置かれたノート。さまざまな人が旅の思い出やメッセージを書き残している。SNSの発達がめざましい時代だが、アナログ的な伝達手段もローカル線には残っている。 アニメの世界から飛び出してき…[続きを読む]
ここに来る前、菓子を買った。「笑内(おかしない)チーズ饅頭(まんじゅう)」。ニコニコマークの焼き印が入っている。秋田県北秋田市の老舗菓子店が作っている人気商品だという。 たしかに「笑内」はインパク…[続きを読む]
「川沿いの高い所」との意味があるという萱草。やがて鉄橋「大又川橋梁(おおまたがわきょうりょう)」が近づいてきた。「トラス」と呼ばれる「鉄骨で組んだ枠」が橋の上にない。車窓から目線を少し下げるだけで空…[続きを読む]
江戸時代には銅産出量が日本一だったという鉱山の町、阿仁(あに)。さまざまな宗派の寺院が建てられたのは、全国の労働者が集まったことの証しだ。郷土料理として昔から親しまれてきたのが馬肉の煮込み。コンニャ…[続きを読む]
全長94・2キロ。鷹巣(たかのす)から角館まで全29駅の各駅停車の旅。列車の運行本数、停車時間は限られている。時刻表をこまめに調べ、オリジナルのルートを組み立て実行するのは「知的ゲーム」と言えなくも…[続きを読む]
阿仁(あに)前田を出た列車は南に向かっている。隣の前田南には4分で着いた。 無人駅。だが、2016年8月に公開され、大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」に出てきた駅に似ているとネット上で話題を集め…[続きを読む]
「2杯目のハイボールから、特ダネが生まれる」 そう語ったのは米国のジャーナリストだったそうだが、たしかに酒場にはいろいろな話が転がっている。 この日訪ねた駅前の酒場でも、常連さんが地元で話題にな…[続きを読む]
「見てみい、このツラ! メキシコの覆面レスラーやで」。なぜか関西弁だが、ネットにはこんなコメントが載っている。「ホント! マスカラスですわ。(笑) でも、ほのぼのしてる顔がいいなぁ」と反響も寄せられ…[続きを読む]
包み込むように優しい秋田の言葉。いとおしい思いをこめ、動物や食べ物の語尾に「こ」をつける。「犬っこ」「あめっこ」「お茶っこ」……。この米内沢(よないざわ、秋田県北秋田市)にもアユの養殖場を併設した温…[続きを読む]
起点の鷹巣(たかのす)から約20分。6番目の駅、上杉に着いた。「うえすぎ」ではなく「かみすぎ」。この地域を治めた中世の村落領主・上杉氏が由来との説もある。 無人駅である。商店も自動販売機もない。公…[続きを読む]
日本茶やコーヒーだけでなくウイスキーにも合う。秋田県北秋田市の名物菓子「バター餅」である。 ふんわりとした食感。蒸したもち米をつき、バター、卵黄、塩、砂糖、小麦粉を加え、片栗粉をまぶして作る。起源…[続きを読む]
内陸線の旅も4日目。なじみの店もできた。旅の楽しみはやはり「食」である。ランチタイム。「何を食べようかなあ」と思っていたら地元の人がとっておきの店を紹介してくれた。 大野台駅と合川駅の間にある踏切…[続きを読む]
内陸線の沿線は、縄文人たちの「王国」だったかもしれない。世界観や社会構造を物語る数々の出土品がそれを証明している。 小ケ田(おがた)駅から歩くこと7~8分。標高45メートルの台地上にある伊勢堂岱(…[続きを読む]
列車に乗って気づいた。ぴんと立った耳、くるっと巻いたしっぽ。りりしい姿の秋田犬(あきたいぬ)の写真が、車内のいたるところにあしらわれている。2016年暮れから運行を始めた「秋田犬っこ列車」である。…[続きを読む]
若いころに読んだ秋田の旅行記が忘れられない。たとえば盆踊りの描写。「くるりと背を向けたとき、女のうなじを流れる汗が炎にてらてらと光った」とあった。かがり火が闇夜に浮かび、あちらの路地、こちらの角から…[続きを読む]
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