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金印株式会社の加工わさび商品の一例

収穫した西洋わさびをすり下ろすと、色は白く粘り気も少なかった

広大なうねを何往復もする収穫機械ハーベスター

土中から西洋わさびを掘り起こす収穫機械「ハーベスター」(写真上)
金印アグリ株式会社取締役・鈴木康介さん(同下)

金印株式会社の加工わさび商品の一例

その2本物を超えろ

すしや刺し身を家庭で食べる際に欠かせないわさび。その多くがチューブ入りや小袋入りなどの加工わさびだ。家庭の冷蔵庫に常備され、日本独自の辛みを手軽に味わえるようにした加工わさびには、長い年月と様々な人の工夫が詰まっている。

わさびの生産量

原材料

縁の下の力持ち

チューブわさびに記載された原材料名を見ると、本わさびと共に西洋わさびが記載されていることが多い。この西洋わさびがチューブわさびの辛みを支えている。

わさびの辛みは、すりおろして数分後をピークに徐々に失われる。西洋わさびの辛み成分は本わさびの約1・5倍あり、「縁の下の力持ち」となっている。

西洋わさびはヨーロッパ原産で、現地では「ホースラディッシュ」「レフォール」などと呼ばれる。クリームがかった白色の根茎をすりおろすと、鼻にツンとした辛みを感じる。日本には明治時代に輸入され、自生が進んだ北海道では「山わさび」と呼ばれている。

収穫した西洋わさびをすり下ろすと、色は白く粘り気も少なかった

西洋わさびは海外からの輸入が多いが、業務用の加工わさびでトップシェアの金印(本社・名古屋市)は国産にこだわる。原産地の欧州に気候が似ている北海道・網走地方が一大産地となっており、金印も主力工場を構えている。

北海道斜里町

北の大地で育む

西洋わさびの収穫時期を迎えた2016年10月下旬、金印の自社農場を訪ねた。知床半島の付け根の北海道斜里町にあり、オホーツク海も望む。うねの長さは400メートルにも及ぶ広大さだ。

広大なうねを何往復もする収穫機械ハーベスター

春に苗を植え付けた西洋わさびは、成長するにつれて緑の葉を茂らせ、大根のように根茎の部分が大きくなっていた。金印の西洋わさび生産子会社、金印アグリの取締役の鈴木康介さんは「4月でも気温がマイナスになる土地で、苗が凍ってしまうこともあります。適切な土の状況などを考えながら育てています」と話す。

月別平均気温

金印が独自に改良した収穫機械「ハーベスター」で西洋わさびが掘り起こされ、約60キロ離れたオホーツク工場にトラックで運び込まれる。西洋わさびの生産を委託されている農家の植木幸一さんは「ジャガイモやビートに比べても作業は重労働ですが、良い物ができたときの喜びがあります」と話した。西洋わさびのおすすめの食べ方を聞くと、「山わさびにしょうゆをかけてご飯にのせて。今朝もそれを食べてきましたよ」と笑顔になった。

土中から西洋わさびを掘り起こす収穫機械「ハーベスター」(写真上)金印アグリ株式会社取締役・鈴木康介さん(同下)

西洋わさびの収穫

洗浄された西洋わさびを-196℃の超低温下で凍らせて、きめの細かい粉末状にすり下ろす

西洋わさびをサイコロ状にカットし、洗浄する(写真上)
すり下ろされた本わさび、西洋わさび、副原料などを配合して練りわさびが作られる(同下)

歴史

刺し身の普及とともに

加工わさびの原点となる粉わさびは、大正初期に考案された。静岡の茶仲買人が、生わさびをお茶のように乾かし、粉にして売ることを思いついた。だが、辛みや風味が飛んでしまう短所があり、辛みを補うために洋からしを混ぜて販売していた。

粉わさびは、料亭や旅館だけではなく家庭用も売れ行きを伸ばした。参入する業者が増え、1955年には全国粉わさび協会が設立された。洋からしを混ぜない粉わさびも69年に初めて発売された。

スーパーなどの量販店が増えると、刺し身がパック詰めされて売り場に並ぶようになっていた。すぐ食べられるように、あらかじめ粉わさびを水で練った「ねりわさび」の開発が進むようになった。

チューブ入りわさびを最初に売り出したのはエスビー食品だった。粉わさびを水で溶くと、普通の状態では2、3日しか風味が持たない。そこで、香料を副次的に配合しつつ、常温でも風味を数カ月保つ技術を独自開発して特許も取得した。

そして、87年にはエスビーが本わさびを使ったチューブわさびを発売した。より本物の本わさびに近づけて色やかたさの改良を進めている。エスビーはさらに、わさび原料を100%本わさびとした「本生 本わさび」を2009年に発売した。

加工わさびの変遷

技術

揮発しやすい辛みをいかに封じ込めるか。工夫を重ねる生産現場を訪ねた。

金印のオホーツク工場

風味を閉じ込める

「これが液体窒素で冷やした容器です」。金印のオホーツク工場長、岡田貴裕さんが指さした直径約2メートルの金属容器は冷気の白い煙で覆われていた。金印が1973年に開発した、超低温すりおろし製法だ。マイナス196度の超低温ですりおろすことで酵素反応を止めて風味を閉じ込める。

マイナス196度の超低温ですりおろす

洗浄された西洋わさびを-196℃の超低温下で凍らせて、きめの細かい粉末状にすり下ろす

原料の西洋わさびはサイコロ状にカットし、洗浄する。辛みを出来るだけ維持するために、洗い方にもノウハウがある。すりおろし方でも、消費者に好まれる「繊維感」を出そうと工夫している。岡田さんは「西洋わさびの良さを発揮して、辛みだけではなく、味・甘み・うまみを引き出す製品作りを目指しています」と話した。

西洋わさびをサイコロ状にカットし、洗浄する(写真上)すり下ろされた本わさび、西洋わさび、副原料などを配合して練りわさびが作られる(同下)

西洋わさびの加工

「東京すしアカデミー」ですしを握る外国人の生徒=2010年

ヤンゴン市内のスーパーにあるすしの持ち帰りコーナー=2010年

消費

世界に広がるWASABI

「日本食は健康的」というイメージが広がった80年代、米国で寿司(すし)ブームが起こり、寿司レストランの開店が相次いだ。わさびメーカーも米国に営業拠点を置いて、加工わさびの販売を始めた。

「東京すしアカデミー」ですしを握る外国人の生徒=2010年

日本古来の本わさびは、海外で栽培条件に適した気候・土地を確保しにくい。そのため、わさびの風味の伝道者は加工わさびだった。当初は粉わさびが大半を占めたが、練りわさびも使われるようになった。

80年代後半から寿司が海外に広がり始め、輸出も目立つようになる。90年代にアジア地域、特に中国で、それまで生の魚を食べる習慣がなかったにもかかわらず、サーモンやロブスター、ミル貝などの刺し身を食べることがステータスとして定着したため、相当量のチューブ入りわさびの需要が生じた。

ヤンゴン市内のスーパーにあるすしの持ち帰りコーナー=2010年

米国では、寿司ブームと共に「WASABI」という言葉が定着した。寿司や刺し身だけではなく、ドレッシングやBBQソースの隠し味として、広く使われている。

海外では国内と同じ43グラム入りねりわさびが基本だが、日本では業務用として流通する310グラムも米国では小売り用として販売している。

日本では業務用として流通する310グラムも米国では小売り用として販売

日本加工わさび協会によると、2013年度の加工わさびの生産量は1万7000トン超。国内の販売額が216億円となる一方、海外販売額が30億円を超えた。

加工わさびの販売額

わさび 日本のフレーバー

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