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アイスランドを調査報道の聖地に ウィキリークス後押し

2010年8月17日10時28分

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写真ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジュ氏=AP

 【パリ=稲田信司】アフガニスタン駐留米軍の機密文書を暴露して注目を集めたウェブサイト、ウィキリークスが、北欧の小国アイスランドを拠点にして活動を強化しようとしている。情報源保護などの環境を整え、調査報道を進めやすい「聖地」にアイスランドを変えるための立法措置に向け、サイト運営者らが同国の議員を支援している。

 アイスランド議会は今年6月、調査報道の環境整備立法の土台となる政策の指針を、賛成多数で承認した。

 昨年、IT関係者の招きでアイスランドを訪れたウィキリークスの運営者らが「世界で最も報道の自由が保障された国」にするための法案づくりを提案したことが出発点だった。賛同した議員や弁護士らが、法案の骨格となる指針づくりにまず着手していた。

 指針は、報道の自由、特に情報源や内部告発者の保護に関する各国の法律などを参照した形で、体系的な法文としてはまだ整理されていない。推進派の議員らによると、議会の委託を受けて文化省が9月から法案の文面づくりに着手する。法律の形に仕上げるのは1〜1年半先になる見通しという。さらに、ノーベル賞に相当するような、世界的に権威のある「言論の自由賞」を創設する構想もある。

 そもそも、ウィキリークスがアイスランドで注目されるようになったのは昨年夏。金融危機で暮らしが深刻な打撃を受けたなか、ウィキリークスは大手銀行の内部文書を公開し、ずさんな融資の実態を暴いた。バブルに酔った銀行への不満を募らせていたアイスランド国民の関心を一気に引きつけた。

 「世界で情報の透明性が最も高い国になることで、金融危機で地に落ちた信頼を回復したい。カネの流れが不透明で脱税の温床となっているタックスヘイブン(租税回避地)と逆の発想だ」。法案の旗振り役、ビルギッタ・ヨンスドティル議員はそう語る。

 ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジュ氏は朝日新聞記者に対し、「巨大メディアが情報の発信源を握る現状では、真実が埋もれてしまう。アイスランドは小さい国だが民主的。ネット先進国でもあり、資金力がないメディアや個人にとって聖地になる潜在力がある」と語った。調査報道で告発された国や企業からの名誉棄損訴訟など、賠償請求で対抗されることを懸念するメディアや情報提供者にとって活動の拠点になり得る、と期待している。

 この夏、ウィキリークスがアフガン駐留米軍の機密を暴露したことを受け、米国政府はウィキリークスの規制を求める声を強めている。だが、アイスランド政府はあくまで法整備を進める構えだ。

 連立与党の一翼である左派・緑の党のオグムンドゥル・ヨーナスソン議員は7月末、地元紙に「我が国は、北大西洋条約機構(NATO)に加盟していることの是非を住民投票で問うべきだ」と語った。批判されるべきなのはウィキリークスではなく、アフガンに駐留を続ける米軍中心のNATOだという主張だ。

 ただし、ウィキリークスのような活動を後押しする法案づくりに懐疑的な専門家もいる。英イーストアングリア大学のマリス教授は「言論の自由の名の下に、インターネットを無法地帯にしてはならない」と指摘する。

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