現在位置:asahi.com>スポーツ>野球>アマチュア> 記事 不祥事チームで防ごう―高校野球のかたち〈6〉2007年12月08日10時50分 横浜の監督・渡辺元智(63)には、苦い記憶がある。「(当事者が)後輩たちに土下座してわびていたことを、よく覚えています」。初の全国制覇を果たした翌81年の3月。すでに部活を引退した3年生2人によるケンカが発覚した。 「(対外試合禁止は)1年か半年か。厳しい処分になると思いました」と渡辺。けじめをつけるため、処分前に対外試合を自粛した。公式戦に復帰したのは、夏の神奈川大会からだった。 かつて不祥事があった加盟校に対する処分は厳しかった。「昭和40年代は消しゴム1個盗んでも1年間出場停止だった」と日本高校野球連盟参事の田名部和裕。とくに招待大会である選抜大会は、不祥事件の対象となった時点で、出場の道が閉ざされた。できる限り連帯責任を問わない方向へかじが切られたのは、故牧野直隆が第4代会長に就任した81年以降のことだ。 今年1月。すでに選抜大会出場を決めていた千葉経大付で、不祥事が発覚した。3年生部員が、別の生徒の窃盗未遂の現場に居合わせた。「正直、最悪の事態(出場停止)も考えた」と監督の松本吉啓(49)。 ただ、この生徒は事件に加担していない。「早く報告すれば何とかなるのでは」とも思った。処分は厳重注意。同校を含め、今春の選抜出場校の5校で大会前に不祥事が発覚したが、出場取り消しは1校もなかった。 近年の処分の傾向を日本高野連審議委員長の西岡宏堂は「不祥事が連帯責任か個人の問題かを判断する目安は5人。もちろん一律ではないが、処分期間は、例えば部内暴力で下級生が被害者なら、新チーム後は試合に出られるよう考える」。 厳格な処分に徹した第3代会長の故佐伯達夫は晩年、「戦後のすさんだ中で健全な高校野球を育てるには、そうしたやり方しかなかった」とこぼしていたという。時代背景はずいぶん変わった。連帯責任の緩和は、自然な流れかも知れない。 一方で、メールを使った陰湿ないじめなど、不祥事案は多様化する。 大事なのは「誰かがやめろ、といえる雰囲気が部にあるかどうか」というのが高野連の考えだ。一人の処分者も出さない。それがチームワークをうたう野球本来の姿である。(敬称略) ◇ 不祥事審議の流れ 日本高野連は毎月、全国から報告された不祥事案を審議委員会で審議し、日本学生野球協会審査室に上申する。同審査室は協会に属さない第三者で構成されている。現在の審査員は9人。規定にそって日本学生野球憲章第20、21条にある警告、謹慎、出場停止、除名の処分を科すことができる。高野連は第4代牧野会長時代に、警告よりも軽い「厳重注意」処分を設けている。 PR情報 |