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城島 健司(ダイエー捕手) 「野球は怖い」年々実感

「捕手のだいご味は投手と真っ先に握手できること」高橋洋撮影
「捕手のだいご味は投手と真っ先に握手できること」高橋洋撮影

 1日、プロ入り10年目で通算1千本安打に到達しました。2年連続日本一を狙うダイエーをバットとリードで引っ張ってます。

 ――今季の調子はどうですか。

 数字は悪くないですが、絶好調とはいえません。打者は毎打席、投手に打撃のリズムを崩されるものなので、気を抜くと調子はすぐに下降します。打者は10回のうち7回失敗しても3割打者だよと慰めの言葉をもらいますけど、そんな気持ちで打席に入ったら、1回か2回しか成功しないでしょう。いい選手は、失敗した7回を悔やんでいますよ。

 ――自分に厳しいですね。

 厳しいというより、臆病(おくびょう)なんです。年数を重ねるほど野球は怖いと臆病になっています。ヒットを打つ難しさ、試合に勝つ難しさをいつも感じているし、成績がいいと「明日は打てないのではないか」と不安がよぎるし。シーズンオフになると「来年はこの給料に見合う働きができないのではないか」と不安になります。だから、調子がいいからといって、やるべきことをやらずに、夜の街で騒ごうとは思わないですよね。昨日と今日は同じではないんです。いい選手になるほど、球場に早く来て帰りが遅いのは、自分の打撃を毎日リセットしているからですよ。僕は楽しく野球をやろうなんていう気持ちはサラサラありません。だって、僕はすごいお金をもらっているわけじゃないですか。お金をもらう怖さと責任を感じますし、僕を支えてくれる家族にいい思いをしてもらうために人より高い報酬をもらいたいですから。

○あくまでも補佐役

 ――日本一になった昨年は140試合全イニングに出場して、捕手としては30年ぶりのパ・リーグMVPを受賞しました。

 1球たりとも気を抜かずに投手の球を受けたいと思って臨んだ年でした。僕のサイン一つで投手の給料が変わるし、投手によっては翌年、野球ができなくなるかもしれない。だから、消化試合の140試合目も開幕戦と同じ気持ちで最善のリードをしないといけない。心身ともに充実してきて、それができる時期になったので、全試合に出してくれとお願いして、達成できたシーズンでした。

 ――投手からの信頼はあついでしょう。

 どうでしょうか。でも、僕のサインを信頼して投げてくれるかどうかでボールは全く違います。データを詰め込むのも大事かもしれませんが、僕は投手を理解するために食事に連れ出したりして対話することを大事にしています。お山の大将は投手で、捕手はあくまでも補佐役だということも肝に銘じてます。外角低めに投げてくれれば、配球なんていらないわけですが、今日の投手の調子だとちょっと甘くなるな、という時に、その甘い球をより遠くに見せるために色んな球を使うんですよね。それは、投手がそこに投げてくれるだろうということが前提で、捕手は受け身なんです。亡くなった根本陸夫さんに言われていたことがやっと分かるようになりました。

○簡単でない五輪

 ――頭も良くないと。

 良くなかったですよ(笑)。小学校4年のころ、おやじから「野球と勉強どっちが好きだ」と聞かれて「野球。プロ野球選手になりたい」と言ったら、「それなら勉強はしなくていいから、試験前に徹夜で勉強している子がいるなら、朝までバットを振りなさい」と言われて。友人が塾に行ったと聞けば、その時間はバットを振ってるような子供でしたから(笑)。もちろん中学生の時から野球で飯を食うんだと思っていました。

 ――今年はアテネ五輪もあります。

 選ばれても意気揚々と「アテネに行くぞ!」とはいかないでしょうね。ペナントレースが気掛かりですし、簡単な仕事ではありませんから。昨年の五輪予選も、僕は3日間ほとんど眠れなかったし、終わって1週間ほど寝込んでしまいました。それを長嶋監督に話したら、長嶋さんも寝込んだと聞きました。予選でさえ体調を崩すほど重圧がかかったのだから、本戦となると……。アマチュア選手の夢を奪う形でプロが出場するんですから、勝たないといけない。

 ――大リーグは将来の視野に入れてますか。

 よく聞かれますけど、捕手というポジションの場合、言葉の壁があるし、家族のこともあるので、現実問題としては疑問符がつきます。ただ、僕が独身で自由だったら、挑戦する気はないといえば、ウソになります。野球をやめるまでうまくなりたいから、最高の舞台で自分の力を試したいとも思います。少なくとも言えることは、挑戦してみないか、と向こうから言われる選手ではありたいということです。でも、うーん、自分から行きますとは、言えないでしょうねえ。

◇臆病だからこそ人一倍努力する

 <後記> 鋭い眼光を見て朝青龍関を思い浮かべました。勝負に対して臆病だというのも、横綱になる人と同じです。臆病だからこそ人一倍努力するのでしょう。親分肌なのに受け身の役割に徹しているのにも感心しました。(舞の海)

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 じょうしま・けんじ 長崎県出身。大分・別府大付高からドラフト1位で95年ダイエー入り。捕手初の5年連続ゴールデングラブ賞。03年パ・リーグMVP。28歳。 (06/09)









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