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稲田法子(競泳) 最後の五輪 最高目指す

「入場を待つときが至福の時」=吉沢良太撮影
「入場を待つときが至福の時」=吉沢良太撮影

 背泳ぎの女王が五輪の舞台に返り咲きます。13歳だった初めての五輪から12年。3度目の五輪となるアテネで初のメダルを狙います。

 ――3度目の五輪は、これまでと何が違いますか。

 現役を一度退いて、自分の意思で復帰したわけですから、自分の思いに責任を感じています。過去2回は「やらなきゃ、頑張らなきゃ」だったのが、「やりたい、頑張りたい」に変わりました。タイムも伸びず追い込まれた状態で臨んだ選考会で選ばれたことは、これまでとは違った自信にもなりました。今までの中で、一番うれしい五輪かもしれません。

 ――00年のシドニー五輪の後、一時、現役を退かれました。

 大学4年生という区切りだったし、やり尽くしたと思いました。もういいな、もういいよ、という感じだったんです。レースが終わった時は、もう泳がなくていい、練習しなくていい、苦しまなくていいと、本当にホッとしました。

 ――それが「やりたい」に変化したきっかけは?。

 1年間休んでいる間、所属するセントラルスポーツのさいたま市の水泳教室で、一般の方を教えていたんですね。30、40歳から、70歳のおばあちゃんもいました。浮くこともできなかった方が泳げるようになったり、高齢の方が「少しでも速く泳ぎたいのだけど、先生どうやったらいいの?」と私に聞いてきたり。泳げるようになりたい、速くなりたいと、すごく一生懸命な姿を見て、「ああ、これだな」と気付かされたんです。水泳を素直に楽しむ姿がとてもキラキラしていて、格好いいと思えたし、もう一度自分もそういう気持ちで泳ぎたいと感じたんです。初心に戻りました。

 ――復帰されるに当たっての一番の壁は何でしたか。

 7、8キロ増えていた体重を落とすのがまず大変でした。今まで楽にできた練習にもついていけなくて。後半に強いのが自分の持ち味だったのに、最後の15メートルで差を詰められているので、今はそこを意識して練習してます。ただ、以前よりいい練習ができる時もあるし、悲観はしていません。

 ――2位で通過した五輪選考会(4月22日)を自己分析していただくと。

 予選、準決勝では望んだタイムが出なくて、体も重かった。「決勝は色々考えても、仕方がない。思い切っていくしかない」と覚悟しました。決勝を翌日に控えて、寝る前はレースのイメージがどんどん浮かんで、なかなか眠れませんでした。大ざっぱなイメージなんですけど、「あっ、今のスタートはダメ」と思うと、頭の中でスタートを繰り返したりするので、100メートルを泳ぐのに随分、時間がかかっちゃうんです(笑)。

 ――レース前の過ごし方ってとても大切なんでしょうね。

 今回の選考会前の数日は、不安が頭をもたげることもありましたが、難しく考え込んだりしませんでした。自分が積み重ねてきたことを信じました。緊張もしましたが、あの緊張感をもう一度味わいたいと思ったのは、この私自身なんだと自分に言い聞かせました。競技から一度離れてからは自分を客観視することができるようになりました。不安や緊張の中で、怖がらずに逃げずに頑張ろうとしている自分を、「結構すごいじゃん、私って」と思えました。そういう風に思えたのは初めてでした。

 ――五輪の怖さも喜びも知っているのは「強み」ですね。他の選手とは経験の差を感じます。

 絶好調でその日を迎えられることはめったにありません。良くても80〜90%の状態だと思います。ウオーミングアップで感じが良くても、本番であれっということもあります。飛び込んでバサロを1、2回打った時に、いい時は何も考えずにスッスッと進むのに、力を入れても進まない感じの時もある。そんな時でも勝負できる精神力と100%の状態に近づける準備が大切なんです。冷静でいられるように、日々の練習で自信をつけたいと思います。

 ――五輪と他の国際大会。何が違うのでしょう。

 五輪は、みんなが最高のパフォーマンスをするために集まる場所。妥協も失敗も許されません。五輪のために努力してきたのだから、そこでパフォーマンスできることは幸せなことで、逃げてはいけない所です。

 ――イメージするアテネでの最高の姿はどんなですか。

 これが本当に最後のレースだと思うので、水泳人生の中で最高だと思える泳ぎをしたい。すごい頑張ると思います。

 ――最高の泳ぎとは?

 それには結果が伴ってくると思います。やはりメダルをとりたいと思って復帰したので、メダルをとって帰りたい。

 ――一番高いところ、かしら。

 そうなれば、最高の最高です。

 ◇生徒たちも応援 無心の泳ぎ必見

 <後記>  「生徒さんが横断幕を手に選考会に応援に来てくれて」とほほ笑む稲田さん。ぜんそく治療を機に泳ぎ始めて22年。水につかるとじんましんを出すほど精神的に苦しんだ時期もありました。無心で泳ぐその背中、必見です。(進藤)

*      *      *      *

 いなだ・のりこ 埼玉県出身。早大〜セントラルスポーツ。92年バルセロナ五輪代表。00年のシドニー五輪は100メートル背泳ぎで5位。167センチ、61キロ。25歳。

(06/16)









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