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J's コラム
 
地域密着クラブの夢と現実

 夢と現実。Jリーグを目指しているチームは、この2つの言葉に必ずぶつかる。

 各地でJリーグを目指す動きがある。そこには、地域密着型のクラブを作り、地域を活性化しようという夢がある。一方で、クラブを作るにはお金が必要だという現実がある。

 ここで長野県の例を取り上げてみたい。北信越リーグ2部の山雅クラブを母体に、Jリーグを目指そうと、松本市に「アルウィン・スポーツプロジェクト」(ASP)という団体が発足した。来年から本格的にチームを強化するため、現在、資金を集めている。ASPは、これから夢と現実の狭間(はざま)で悩むことになるだろう。

 なぜ、長野県のことを取り上げたのか。私が長野県出身ということもあるが、サッカーが決して盛り上がっていない地域で、どんなクラブを作って、成功できるのか、一つのモデルケースとして注目しているからでもある。

 長野県は、失礼だが、サッカー不毛の地と言っていいかもしれない。私が高校時代、全国高校選手権県予選の準々決勝、準決勝は、同じ日に行われた。しかも試合会場は高校の土のグラウンド。今でこそ、環境は整備されたが、レベルの方はなかなか上がらない。同じような土地は、全国にいくつもあるだろう。

 不毛の地に理想のクラブを作ることはできるのか。心配なのはクラブの運営資金だ。地方の長野県にも、大企業がないわけではないが、支援してくれそうな企業は、大都市のように多くはない。注目を浴びない地域リーグ所属だけに、企業からお金を集めるのは大変だ。地方はどこも、こんな悩みを抱えている。

 「そんな暗い話をしないで、もっと夢を語ろう」と言われるかもしれない。でも、理想を掲げてつぶれたチームをいくつか取材してきたからこそ、心配してしまうのである。

 佐賀県鳥栖市に鳥栖フューチャーズ(現J2サガン鳥栖)というチームがあった。Jリーグを目指していたが、主力出資企業の撤退で、97年に解散したクラブである。負債総額は約10億円だった。

 当時の状況はまさしく悲惨だった。運営資金が足りず、選手の給与未払いも発生した。クラブ職員が、実家の土地を担保に借金し、資金をねん出したという話も聞いた。当時の鳥栖市長は、市長名義で金融機関から1億5000万円を借り、クラブを支援した。「これが、現実なんだな」と思った。

 ある地方のクラブに、高卒の選手で給料5万円の「プロ選手」がいた。もちろん、アルバイトや親からの仕送りがなければ、生活はできない。プロのクラブを作ることがいかに大変か。給料20万円、年俸220万円の選手を10人集めても、それだけで2200万円が必要になる。これだけ考えるだけでも、頭が痛くなる。

 一方で、希望が持てる話がある。J2のヴァンフォーレ甲府がいい例だ。一時は経営難に陥り、チームの存続が危ぶまれた。しかし、再建に成功した。入場者数、サポーター会員数、広告料収入の3項目で明確な目標を立て、単年度黒字を出すクラブに変わった。クラブが努力した結果である。現社長の手腕は、関係者に高く評価されている。

 ここで言いたいのは、クラブの中心となる人物次第で、クラブも変わる可能性があるということだ。中心人物が優秀なら、いいクラブができる。ここで言う「優秀」とは、頭の良さだけのことではない。熱意、人を引きつける魅力など様々な要素を含んでいる。

 Jリーグ入りを目指すクラブが、夢と現実の狭間で揺れているとき、クラブの中心人物が、かじ取りの方向をどう定めるか。そこが大事なことだと思う。

 人がクラブを作り、未来を握っている。長野県で、全国で、理想のクラブが誕生することを期待している。(上嶋 紀雄)

(11/19 10:32)




このコラムの掲載は随時です。





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