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J’sコラム

言葉に潜むアウトゥオリ・サッカーのセオリー

2006年04月27日

 鹿島のアウトゥオリ監督は記者泣かせだ。試合ごと、そして試合中も布陣をころころと変える。それでいてメディアに質問を受けると、決まってこんな風に答えてけむに巻く。

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笑顔を見せるアウトゥオリ監督=宮崎県総合運動公園陸上競技場で

 「システム変更は大した問題じゃない。現代サッカーは1人の選手が攻撃も守備もできなければいけないし、複数のポジションをこなさなければいけない。うちの選手は、それを忠実に実行しているだけだ」

 布陣の移ろいを細かく知ろうと思えば、選手から「2点目を取った後、僕はボランチに下がりました」「最初は右の下がり目で、後半から2列目に入ったよ」などの証言を集めるしかない。試合後、他社の記者と一緒になって「途中でダブルボランチになりましたよねえ」「今日の本山は右、真ん中? それともFWだったの?」なんて頭を悩ませることもある。

 今季から鹿島を率いる49歳のブラジル人。6季続いたトニーニョ・セレーゾ前監督と比べ、選手たちの評は一様に「指導がきめ細かい」。点差や地域、時間帯に応じていくつもの戦い方をチームに落とし込んでいる最中だ。そのからくりを簡単には教えてくれないから、こちらは頭が痛い。

 ただ時折、彼の思考回路が垣間見えるようなコメントも残してくれる。

 ある試合では前半なかばにFWを1枚増やす選手交代をして、それがずばり当たった。理由を聞かれると「現代サッカーは時間との戦いだ。選手同様、監督にも判断の早さが求められている」。またある試合の後、「セットプレーからの得点ばかりで流れの中から決められていない」と指摘された時は「結果で評価されるのがこの世界。どんな形の得点でも私はうれしい。それにPKだって(反則までの)過程を考えれば流れから生まれた得点だ」と返した。「セット」「流れ」と紋切り型に考えるのはおやめなさい、とでも言いたげだった。

 気難しい顔で紡ぐ言葉の奥に潜むアウトゥオリ・サッカーのセオリー。そう思うと、冒頭で紹介した言葉も「システム論にこだわってばかりいないで、もっとサッカーの本質を見なさい」と諭しているようにも聞こえる。あるいはもっと深い意味が込められているのかも。

 ペルー代表監督などを経て、昨年12月の世界クラブ選手権ではサンパウロを初優勝に導いた。南米出張中の同僚の話では、将来のブラジル代表監督候補にも名前が挙がっているらしい。そんなアウトゥオリ監督の言動が興味深い、今季の鹿島だ。(中川文如)


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