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Le Ballon Ovale

「接近・展開・連続」 サッカー界でも

2008年01月28日

 「接近・展開・連続」。ラグビーファンの多くに聞き覚えがあるだろう言葉が、今、サッカー界を賑わしている。昨年11月にサッカー日本代表監督に就任した岡田武史氏が掲げた日本の戦い方のキーワードだ。

 オリジナルの「展開・接近・連続」は、日本代表や早大の監督を歴任した故大西鉄之祐氏が、日本代表が体格で勝る海外の列強と戦うために考え抜いた攻撃理論を簡潔にまとめたものだった。中でも、相手防御を抜くための「接近」プレーには日本人の長所を活かして弱点である体格差を補うアイデアが詰まっていた。

 パワーがあり、腕も足も長い外国人選手と対戦する際、パスを受けて相手選手と対峙したところからステップやパワーで抜こうとしても勝負にならない。そこで考え出されたのが、相手の懐に飛び込むように接近し、すれ違い様に抜くプレーだ。例えば、CTBが縦に抜きたいなら、まず、マークの外側に向かって走る。その動きに反応したタックラーの体が外に向いた時に、その逆を突くのだ。SOからのパスをキャッチする前(理想的にはパスが放たれた後)に鋭角に走るコースを変えてマークの内側に走り込む。そして、そのスペースに放たれたパスを受け、次の瞬間には相手防御ラインの裏へと走り抜けている、という流れだ。

 防御側にしてみれば、攻撃側がどれだけ前に出てきても、その選手がボールを受けるまではタックルするわけにはいかない。マークの選手が自分に接近すればするほど防御側の選手の視野は狭くなり、精神的な余裕もなくなる。マークの動きに集中すると、ボールを持っている選手からパスを受けるタイミングをつかめないし、ボールを持っている選手に意識を向けると、自分のマークの動きについていけなくなる。こうして、防御側はタックルのタイミングをはずされ、タックルの出足も止まってしまうわけだ。

 一方で、攻撃側にとってボールをキャッチする瞬間は最も無防備になる時で、防御側に接近してパスを受けることはリスクも背負う。そんな接近プレーを可能にしたのは、短い助走距離でトップスピードに乗れる「俊敏性」、最適のタイミングでピンポイントのパスを放れる「巧緻(こうち)性」という「日本人らしさ」だった。さらに、相手の懐に臆する事なく飛び込む「勇気」も加えていいだろう。

 当然ながら、ラグビーのこんな「接近プレー」が、そのままサッカーに応用できるわけがない。しかし、約40年という時間で隔てられた2つの競技の2人の代表監督が掲げたキーワードには、一つの共通項がある。それは、「体格差を日本人らしさで埋める」という考えだ。

 大西監督率いる日本代表は1968年にニュージーランドに遠征し、当時、オールブラックスに次ぐ位置付けのチームだった23歳未満代表のオールブラックス・ジュニアから6トライを奪って23―19で快勝。さらに、1971年には極東遠征のイングランド代表と19―27、3―6という大接戦を演じている。果たして、岡田監督が指揮する日本代表はどうなるだろうか。単にサッカー流の「接近・展開・連続」を実現するだけでなく、今度はラグビー側が取り入れたくなるような新しい理論の構築を期待したい。

※Le Ballon Ovale(ル・バロン・オバル)=フランス語で楕円球の意味。

著者略歴

美土路 昭一(みどろ・しょういち)
朝日新聞東京本社スポーツグループ記者。1993年からラグビー担当。95年の第3回ワールドカップ(南アフリカ)を現地で取材した。国学院久我山高でラグビーを始め、早大に進学。2年時には大西鉄之祐監督(故人)の指導を受ける。88年入社。企画報道室、電子電波メディア局企画開発セクションなどでも勤務(部署名はともに当時)。46歳。
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