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戦士のほっとタイム 内村有美

遠藤保仁(サッカー) プレーで引っ張りたい

2008年03月25日

 高原、稲本、小野ら「黄金世代」の司令塔に派手さなんていりません。周囲を引き立てる才能にあふれています。

写真「ストレスは感じない方ですが、監督になるのは絶対に嫌です。サテライトの選手をトップに上げるコーチは楽しそうですけどね」

   ◇

 ――東アジア選手権では2位に終わりました。何か煮え切らないという感じはありましたか。

 韓国と勝ち点が一緒なのに総得点で負けたので、ちょっと消化不良というか……。岡田監督になって負けてないので、トータルでは満足できるかなとは思ってます。

 ――MFはパスが大きな要素ですけど、もっと自分でシュートしたいと思ったことはありません?

 いっぱいありますよ。プロ入り3年目ぐらいまでは強引に打っていたけど、その後は確率の高い方を選んでいるつもりです。強引に打って決まればヒーローになれるかもしれませんが、プレーしやすい所にボールを出して相手がいいプレーをしてくれれば十分です。

 ――ガンバだけじゃなく、日本代表でも要になってますよね。

 代表で数えれば、キーパーを除くと上から2番目(の世代)になってしまいましたから。

 ――ええっ、そうなんですか。

 いや、3番目か。(中村)俊輔が来れば3番目ですね。ずいぶん年をとっちゃったので、声を出して盛り上げるより、プレーで引っ張りたいという感じですけど。

●あまり怒らない

 ――声を荒らげるイメージが、ほとんどないですよね。

 僕が指導者なら褒めて育てるみたいなのが好きなんです。怒鳴られていい気分にはなりませんから。そういうのは(GKの川口)能活さんや(年上でDFの中沢)佑二に任せて、できるだけ気持ちよくサッカーをさせてあげようと思ってます。

 ――そういう人って、忍耐力が強くないと駄目じゃないですか。

 心の中で「もう!」みたいなのはあるし、言うときは、優しくですが言いますよ。でも、あまり怒ったことはないですね。子育てでも嫁に怒らせてという感じです。

 ――お子さんは3人ですよね。

 家にいるときは家事もやってますよ。全員お風呂に入れてるし。子供と遊んで「疲れた」って言う人がいるけど、僕にはない。一緒に遊ぶと楽しいですから。

 ――奥さまは助かりますね。

 でも、僕はよく物忘れするんです。というか、あんまり話を聞いてない。例えば「洗濯物を干しておいて」だとか幾つか頼まれると、絶対に一つは忘れている。そんなときは小言を言われますよ。

 ――話を聞いていない……。そういえば、周囲の人は「マイペースだ」って言ってましたけど。

 人よりはマイペースかなとは思いますね。練習に遅れそうになっても急げば事故るから、(チームに)罰金を払ってでも自分の身を守ります。慌てたりとか、緊張したりとかしないタイプですかね。

●心が体を動かす

 ――大舞台でも緊張したことがないんですか?

 ほとんどないです。今までの人生で一番緊張したのは、運転免許を取ったときかな。試験場の掲示板に受験番号がパラパラ出るんですけど、僕の番号が出るまで「受かるかなー」って緊張しました。

 ――私なんてしょっちゅう緊張して、頭が真っ白になりますよ。

 高校のときにメンタルの指導を受けていたんです。駄目で元々って教わっていたので、別に失敗しても当たり前のことだと思いながらやっていたら、何か自然と体に染みついちゃいましたね。

 ――どういう内容なんですか。

 サッカーのことだけではなく、普段のことから指導されました。ゴミがあったら拾いなさいとか、玄関では家族全員の靴をそろえなさいとか。般若心経を唱えたり、高校選手権の前には滝に打たれに行ったりもしてましたね。

 ――その時のそういう時間って、大切だったんですね。

 心が体を動かすということを先生から教わったんですけど、心がしっかりしていない選手は大きな舞台で成果を出せないと思うんです。あのときは「早く帰りたいなあ」とか思ってましたけど、もっとまじめにやっておけばよかったかなという気もしています。

 ――前回のワールドカップは控えに回って、ピッチに立てませんでした。初めて立つ日が来ても、やっぱり緊張しないんですかね。

 どうなんでしょう。まあ、緊張して眠れないということは100%ないと思いますよ。

     *

 えんどう・やすひと 鹿児島県出身。鹿児島実高から98年に横浜フリューゲルス入りし、京都パープルサンガ―ガンバ大阪と移籍。99年世界ユース選手権では準優勝に輝いた。02年に日本A代表デビューを果たし、63試合出場で5得点。Jリーグのベストイレブンに5年連続で選ばれている。178センチ、75キロ。28歳。

写真

 〈有美のここだけの話〉

 冷静で、控えめで、味方が受けやすいパスを常に送り続ける。そんなイメージが強かった遠藤選手。実際お会いしてみると……本当にマイペースな方でした。

 写真撮影でちょっと無理なお願いをしても、「はーぃ」と言いながら余裕の笑顔。練習後、シャワーを浴びた後に行われたインタビューも、とても自然体な様子で行われました。

 「マイペース」といわれればその通りなのですが、ただ「マイペース」なわけではありません。言うなれば、相手に無理をさせない雰囲気を持っている、という感じでしょうか。

 きっと一緒にプレーしている選手に、「ありのままの自分でベストのプレーを目指していれば、遠藤さんは自分にフィットしたパスを出し、動いてくれる」と思わせる人なのかもしれない。そう思いました。

 まず「自分」ありきではなく、「人」ありきで考えている。しかし「人」ありきといっても決して自分を犠牲にして、などというものではなく、自分はしっかり円の中心にはいるのです。

 自分の存在をしっかり構えたうえで、変幻自在にあらゆる人や出来事に対応していく。人は千差万別。だから、様々な出来事があって当然、というところから遠藤選手の考え方はスタートしているように思いました。

 だから辛抱強く、いらだつことも少なく、大きな存在感で皆を受け入れられるのだなぁと。「自分」が頑強にあるからこそできることです。

 そして、その根っこには、彼の故郷・桜島がしっかりとありました。桜島のふもとの街で育った遠藤選手。インタビュー中も故郷の話が何度も出てきました。奥様も同郷出身の方だそうです。

 雄大な自然のなかで育った遠藤選手が、その感覚を大切にしているのがとても伝わってきました。桜島の泰然自若とした姿、ありのままを優しく受け入れてくれる姿が、遠藤選手の姿に重なりました。

著者略歴

内村 有美(うちむら・ゆみ)
元テレビ朝日アナウンサー。主にスポーツを担当し、01年世界水泳福岡大会や02年ソルトレーク冬季五輪などを取材。高校時代は陸上の走り幅跳び選手で、実際にシンクロやスケルトンにも挑戦する体当たりのリポートで人気を集めた。05年に退社。夫はタレントの内村光良さん。旧姓徳永。75年金沢市生まれ。
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