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Behind the Scene 西村欣也

ぼやきが育む人間力 好調楽天に「情の野球」

2008年04月11日

 心が変われば態度が変わる。

写真好調な楽天。野村監督のベンチでのつぶやきも大きな力だ=戸村登撮影

 態度が変われば行動が変わる。

 行動が変われば習慣が変わる。

 習慣が変われば人格が変わる。

 人格が変われば運命が変わる。

 運命が変われば人生が変わる。

 楽天の野村克也がよく口にするヒンドゥー教の教えだという。

 楽天が開幕前の予想を覆して5割に踏みとどまっている。「不思議か。今に見ていろ」。野村監督は言う。確かに今年の楽天はAクラスに入ってクライマックスシリーズに進出できるのではないか、という期待をファンに抱かせる。「種をまき、水をやり、花を咲かせる」。そう言ってきた3年目の年だ。

     ◇

 「再生工場」と「新製品工場」がフル稼働している。

 山崎武司はいかにしてよみがえったのか。「最初は自分とは合わない人だと思っていた」と山崎は振り返る。「僕は義理、人情を大切にするタイプ。理論派の野村監督とは水と油じゃないかって」。それが、違ったという。「オリックスをクビになって悔しかったろう。見返してやれ」。そう最初に声をかけられた。さらに「野球は生きるための手段。人生を生きることが大きな目標」とも言われたという。

 これで、山崎の意識が変わった。「野村さんは野球がすべての人だと思っていた。それが、人間教育を一番に考えている人だとわかった」

 ベンチでは監督の近くに座る。「あのピッチャーなら、あのカウントでこういう球を投げてくる」。キャッチャー目線のつぶやきを聞き続けた。これが当たる。かわいたスポンジに水が吸い込まれるように、山崎は相手投手の配球を考えるようになった。昨年38歳で本塁打、打点の2冠を獲得した男には、こんな背景があった。「今年のキャンプでも、山崎は目の色が違った。2冠がたまたまと言われてたまるか、という反骨心がはっきりみえた」。野村監督は言う。

 「新製品工場」からは田中将大がエースに育った。「マー君、神の子、不思議な子」。野村監督は昨シーズン、田中をこう形容した。山崎は言う。「ベンチにいても、後ろで守っていても、気合がガンガン伝わってくる。野手はあいつになんとか勝たせてやりたいという気持ちになるんです」

 さらに要である捕手に2年目の嶋基宏が定着しつつある。「古田(敦也)が一人前になることで、ヤクルトが強くなったように捕手の育成は絶対に必要」。野村監督は打力不足に目をつぶりながら、嶋を育てつつある。

     ◇

 野村監督の野球は「データ野球」だと言われるが、僕は本当は「情の野球」なのではないか、と思っている。

 試合後のぼやきも、それがマスメディアを通して、選手にどう伝わるか、を計算している。

 最近、野村監督は自著「野村の眼」(KKベストセラーズ)で「自己コントロールとは、欲から入っていかに欲から離れるか、が最重要だと信じる」と書いている。続けて「欲望そのものがなくなっては進歩はない。では、進歩とは何か。私は自問自答する。人間、沈まないとジャンプはできない。それが謙虚さであり、素直さである。(中略)これが無形の力、すなわち考える力、感じる力、備える力の基である」。

 できるかどうか、は別の問題として、野球だけに通じる話ではない。「人間力」と言い換えてもいい。

 弱者が道を切り開いていく上で、確かに最も必要とされる「力」だ。「70代でユニホームを着ているのは私一人になった。寂しいが、欲は消えていない。クライマックスシリーズにも出てみたいし、優勝して、有終の美を飾りたい。私は欲を持っている。そこからうまく離れられるかどうかは、これからの戦いにかかっている」

 ゲーム後の野村監督のぼやきを楽しみにしながら、楽天の今季の戦いを見守っていきたいと思う。(編集委員)

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