現在位置:
  1. asahi.com
  2. スポーツ
  3. コラム
  4. 戦士のほっとタイム〈内村有美〉
  5. 記事

大神雄子(バスケットボール) 「神様」にあこがれて

2008年4月8日

  • 筆者 内村有美

写真「少しでも大きくみせたくて、身長測定のときに髪の毛を立てたこともありました。ハードジェルでバリバリに固めると2センチは伸びますよ」=筋野健太撮影

 日本の司令塔が米女子プロリーグWNBAの入団テストに挑みます。バスケットの本場アメリカには、特別な思いがありました。

   ◇

 ――Wリーグのプレーオフでは惜しくも連覇を逃しましたけど、4月にはWNBAの入団テストがまってます。

 昨年プロになった時点で結果には相当こだわっていたので、すごく悔しかったですね。この負けを糧にできるのはアメリカでしかないんじゃないかなと思ってます。コミュニケーションが大事なので、まずは英語力。あとはボディーランゲージ。

●大学生と一緒に

 ――身長170センチは小柄な方だと思うんですけど、バスケットに触れたきっかけは?

 真剣に始めたのは小学2年のときに、アメリカでバスケット教室へ通ってからですね。父が1年ほどアメリカの大学へコーチ留学したんです。アパートの隣が公園だったので、バスケット好きの大学生に入れてもらってやったりもしてました。

 ――大学生って男の子とか。

 はい。最初は隅っこの方で遠慮しながらドリブルしてると、「ヘーイ、カモン」なんて呼んでくれるんです。パスをくれたりノーマークをつくってくれたり、すごく優しくて。シュートも打たせてくれるので、公園に行くのが本当に楽しかった。

 ――すごい環境ですね。

 リカちゃん人形とか男の子だったらミニ四駆なんかで遊ぶと思うんですけど、私の趣味はNBAのカード集めでしたから。お小遣いをもらっても、お菓子じゃなくてNBAカード。みんながテレビでディズニー映画を見ていても、私はひたすらバスケットのビデオを見て選手のまねをしていました。

 ――だれのまねを?

 やっぱりマイケル・ジョーダンのシュートフォームですよ。日本ではツーハンドでシュートする女の子が多いんですが、私は小さいころからワンハンド。最初は力もなくて届きませんでしたけどね。

 ――ニックネームの「シン」はジョーダンからついたとか。

 もちろん大神の「神」ですけど、高校の先輩が「ジョーダンはバスケットの神様だから、日本でバスケットの神様になれるように」ということで「シン」と名づけてくれました。

 ――「シン」って呼ばれただけあって、高校3年間で七つのタイトル(総体2回、国体2回、選抜3回)を獲得。華やかなバスケット人生ですよね。

 優勝よりも2回負けたことの方が鮮明に覚えているんです。まず1年の総体で負けたんですが、入学前に「9冠を取る」って言いながら最初の大会で途絶えてしまった。もう一つは3年の国体での1回戦負け。決勝が当たり前だっただけに、どこかに甘さがあったんだなって。

●根はネガティブ

 ――すごく明るくてガッツがあると思うんですけど、そういうときは落ち込むんですか。

 根はネガティブなんですよ。負けたときは、ほとんどしゃべらないし部屋から出ない。Wリーグで負けたときはボールを持ったまま、真っ暗な夜の体育館で寝っ転がったりもしますね。

 ――真っ暗なんて怖そう。

 海じゃないけど、静かな中だとボールやシューズの擦れる音が聞こえてくる感じがするんです。目は閉じているので、間違いなく泣いていると思います。そして、ゆずの「栄光の架橋」を聞く。最高です、あのシチュエーション……。自分で演出していますよね。

 ――試合中の熱いプレーからは想像つきませんよ。例えば、自分にしかないプレースタイルって何ですか。

 ひたすらボールを追いかけたいとは思ってます。それもあってボールを取りにいったときに勢い余って床にぶつかったり、相手のひざやひじが顔に当たったりして30針は縫っていますね。お酒を飲むと顔が赤くなるので、傷跡が浮かび上がるんです。フランケンシュタインみたいになっちゃうんですよ。

 ――全力で挑む姿が格好いいから女の子のファンが多そう。

 女子高のときは、バレンタインで30個ぐらいチョコをもらったことがありますね。中学のときにも家にチョコが届いたんですけど、父が喜んでいたら「大神先輩へ」って書いてあって。父は大学の先生なんで、「先生じゃなくて先輩だからお前だ……」みたいな感じでした。

 ――お気の毒で……。日本の女の子だけじゃなく、WNBAでは大注目されると思います。

 日本人が海外でもやっていけることを証明したいし、それが使命だと思って行ってきます。

     *

 おおが・ゆうこ 山形県出身。愛知・桜花学園高からジャパンエナジー(現JOMO)入りし、01年世界ジュニアで得点王に。Wリーグでは4度の優勝に貢献した。04年アテネ五輪に最年少で出場。25歳。http://www.shin−oga.com/で日記を公開中。

写真

 〈有美のここだけの話〉

 とにかく、あまりにも元気でハキハキして礼儀正しい大神選手。体育会系のパワフルな風が吹いているような、そんな存在感の選手でした。

 バスケットに対する気持ちを少し照れながら話してくれたのですが、あまりにも想いが熱すぎて汗をかきながら……。そんな姿は、とてもキュートでもありました。

 順風満帆にきたバスケ人生に思われることも多いようですが、悔しさや苦労はたくさん味わってきました。悔しいとき、うれしいときも、何かあるときには、たった1人で体育館の真ん中で大の字に寝て目を閉じる。それは、彼女のバスケへの気持ちを研ぎ澄まし、夢へのエネルギーを補給する大切な時間なのだろうと思いました。

 まっすぐに、純粋に突き進む弾丸のような大神選手。アメリカのWNBAのコートで、はじける笑顔で元気よく飛び回る姿を楽しみに待ちたいと思います。

プロフィール

内村 有美(うちむら・ゆみ)

元テレビ朝日アナウンサー。主にスポーツを担当し、01年世界水泳福岡大会や02年ソルトレーク冬季五輪などを取材。高校時代は陸上の走り幅跳び選手で、実際にシンクロやスケルトンにも挑戦する体当たりのリポートで人気を集めた。05年に退社。夫はタレントの内村光良さん。旧姓徳永。75年金沢市生まれ。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内