2008年4月15日
コンビニのアルバイト代はすべてアウエーの遠征費に投じるという徳岡さん。勝負服は、上半身裸
特別な試合ではシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になるそうだ。京都サンガの「The Naked Division」というサポーターグループに属している。直訳すれば、「ハダカ組」とでも言うべきか。
「自分はあんまり脱がない方です。京都サポは全体におとなしい傾向にある。でも海外の試合を見ていると、裸になって気合いを入れている奴がだいたいいる。そいつら、熱いやん。興奮してるんやな、というのがあるんで、自分の中で気持ち的に熱くなる試合だけ脱ぎます」
20歳にして、サンガサポーター歴10年以上の徳岡洋平さん。京都学園大3回生だ。勝負どころで脱ぐ理由は、もう一つある。「素直に言うと、応援で選手を勝たせる『12番目の選手』という意識より、まず自分が楽しみたい。いろんなサポーターがいるけど、応援は自己満足の部分もある。サンガを勝たせたい気持ちはあるけど、常勝チームじゃないんで。J2に3度も落ちたチームで、選手たちのためだけに応援するというのは、持たないです」
自らの力で勝たせようとは思わない。上半身をあらわにして叫ぶ、ちょっと変な自分の存在と応援そのものを、まず楽しんでしまう。徳岡さんのサポーター道は、苦難の過去を歩んできたクラブならではのものと言えるだろう。「だって、サンガが負けるたびに怒っていたら、続きません」
京都市出身。サンガがまだJFLにいた小学校低学年の時、父親に試合観戦に連れて来られたのが、きっかけだった。「それまで阪神タイガースを応援していたので、応援の楽しさは知っていた。気づいた時は、父親はスタンド席にいるのに、自分はゴール裏にいました」
中学、高校は野球部だった。それでも、練習や試合が休みの日はスタジアムに足を運んだ。「パスやシュートがどうこうではなく、スタンドがどうしたら盛り上がるかとか、『サポーター』というジャンルをずっとみつめてきました」。サッカーの戦術、技術論は専門外。勝たせる応援より楽しむ応援、という姿勢は、そんなスポーツ歴も影響しているかもしれない。
気持ちがノッてくる応援には、観客で埋め尽くされるスタジアムの非日常感が欠かせない。でも、ホームスタジアムの西京極総合運動公園陸上競技場は寂しい。J1にいた2006年の平均観客数は9781人で、18チームの中で唯一、1万人を割った。J2にいた昨年は6629人に落ち込んだ。
そこで徳岡さんはチームがJ1昇格を激しく争っていた昨年11月から、ある行動に出た。「自分たちがボランティアでやりますから、公認のチラシを配らせてもらえませんか」とクラブ側に持ちかけた。以来、ホームゲームの3日前に、20人ほどの同志たちと京都駅前に立つ。「サンガサポーターですけど、一緒に応援しませんか」と呼びかけながら、クラブ側が作ったチラシ2000枚を通行する人々に手渡しする。
「スタジアムで応援する面白さを多くの人に知ってもらいたい。そのためには、我々サポーターが新しい人を取り込む活動に出ればいい」。西京極競技場はスタンドがベタッと低いうえにピッチが観客席から遠く、見にくいと悪評が高いのは確かだが、ただ嘆いている場合ではない。チラシ配りの仲間との合い言葉は、「常時2万人」。高揚感あふれる雰囲気は、自分たちが作ればいい。
「観客が少ない理由は弱いことだと思う。でも、逆にサポーターの人数で、選手の意識を変えることができるかもしれない」。まず自分が楽しみたいと言いつつ、徳岡さんのサポーター道は、やっぱりチームを勝たせたいという愛情に満ちあふれる。
鹿島から柳沢、千葉から佐藤を補強したチームは13日には神戸を破り、3勝1敗2分けと、昇格チームとしては上出来すぎる5位。平均入場者数も、現時点で1万2428人と大幅に増えている。
「今季は、最後まで走りきるという気持ちを選手たちから感じる。試合後のあいさつも変わった。去年までは並んでただ会釈するだけだったけど、佐藤選手なんか、『もっともっと盛り上がれ』と、両手で波を起こす仕草をして煽ってくれる」
サンガの新しい歴史が始まっている。(中小路徹)
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