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〈ゴルフ〉素顔のプロたち

省エネ撤回、一球入魂 アンソニー・キム

2008年5月15日

  • 筆者 舩越園子

写真アンソニー・キム=田辺安啓氏撮影

 省エネ推進が叫ばれる昨今だが、ゴルフをする際に風変わりな「省エネ」を心がけてきたプロゴルファーがいる。

 韓国人の血を引くアメリカ人、アンソニー・キム(22)は「僕の肉体が持つ全エネルギーをインパクトでボールに伝えたい。だから素振りをせずにエネルギーを節約している」。

 こんな「省エネ」の仕方は、かつてどんなプロゴルファーからも聞いたことはなかった。果たして「省エネ」効果はいかがなものか。興味津々になった。

 ロサンゼルスで生まれ育ったキムは、まだ20歳だった06年に米男子ツアーのテキサスオープンに推薦出場。いきなり2位に食い込んで注目を集めた。

 軽々と300ヤードを超えるパワフルなドライビング。ベルトのバックルには頭文字を自らデザインした「AK」の文字。ファッションセンスも光る若き飛ばし屋は将来の大物と期待された。

 同年のQスクール(予選会)を突破し、07年からフル参戦開始。幾度も優勝争いに絡み、初優勝は間近と言われたが、トップ5に3度入るも勝てずじまい。「やっぱりエネルギーを無駄遣いしているんだ」と自分に言い聞かせたキムは、素振りをしない流儀にこだわり続けた。

 そんなキムが今年から素振りを始めた。開幕早々のボブ・ホープ・クライスラー選手権で3位タイ。4月のベライゾンヘリテージで2位タイ。そして5月のワコビア選手権で念願の初優勝。「去年までの僕は未熟な子供だった。すんなり勝たせてもらえなかったことは、ほおを引っぱたかれたような刺激だった」

 敗北を繰り返したキムは試合経験から攻守のメリハリやゲームマネジメント、状況判断の大切さを痛感したと言う。「一球一球に込めるべきものはエネルギーじゃない。経験から身につけた全思考、全能力をボールに伝えるべきなんだ」

 一球入魂。だから「省エネ」は撤回――。キムは確かに成長した。しかし、だからと言って彼が成熟した大人になったのかと問われたら、あえて「ノー」と答えたい。いつかきっと「初優勝したころの僕はまだまだ未熟だった」と感じる日が来る。限りない将来性と可能性を秘めた逸材だからこそ、もうしばらく「発展途上」でいてほしい。

(在米ゴルフジャーナリスト)

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