2008年7月8日
大移動をものともしない札幌サポ。右下でVサインをしているのが、砂様命の米田さん
Jリーグ各クラブのサポーターは全国各地にあまたいるが、この人たちは半端でないハンディを抱えていると思う。コンサドーレ札幌のサポーターたちだ。アウエー戦は、どこへ行くのも飛行機の大移動。関東のクラブなら、「ちょっと隣の県まで足を伸ばそうか」という程度のアウエー戦も多い。それに比べ、時間とお金の投じ方は並大抵ではない。
6月29日のガンバ大阪―コンサドーレ札幌戦。そんな北のサポーター道のパワーに触れようと、万博記念競技場のアウエースタンドに行ってみた。
一口に札幌サポといっても、みんながみんな北海道から来ているわけではない。関西在住者もいれば、東京から来たという人もいる。そんな中、北海道から押し寄せた一団を見つけた。そして、「あの人、相当にコアですよ」と誰もが認める女性が函館市の看護士、米田恭子さん(自称30歳)だった。
「はい。毎年、平気で新車が買える額を応援につぎ込んでます」。いきなりの不躾な問いに、米田さんはあっけらかんと答えてくれた。
今回の大阪遠征は安い航空チケットを使えたため、2泊のホテル代を含め、2万5000円で済んだが、関東遠征なら平均4万円程度かかるという。函館在住だから、ホームゲームの応援も結構大変。まず札幌までの電車賃だけで往復1万4000円。横断幕をスタンド前部に垂らす場所を取るには、朝から並ぶ必要がある。となると、前日の札幌入りが原則。その宿泊代を合わせれば、結局2万円くらいになるという。
なんと言ってもスケジュールが超ハード。この大阪遠征は、前日28日の午前10時に夜勤が明け、午後2時の飛行機で大阪入りした。試合翌日の30日は、大阪から函館への直行便が取れなかったため、神戸から札幌へ。せっかくなので昼からの練習試合を見て、練習後の選手を「出待ち」して激励。夜7時半頃の特急に乗り、約3時間かかって函館へ(北海道は広いのだ)。自宅に着くのは夜11時半頃だった。そして、7月1日の朝から日勤に入った。
「これはまだ優しい方です。J2だった去年は、1週間のうち自宅滞在時間が2時間、ということもあった。夜勤をやって愛媛へ行き、帰ってすぐ夜勤とか」
函館への直行便が少ないのも体力勝負に拍車をかける。東京羽田から函館への最終便は午後5時半。関東での昼間の試合は、まずこれに乗ることはできない。だからその後の便で札幌に降り立ち、電車に乗り継ぐことが多い。「午後10時札幌発の『急行はまなす』というのがあって、函館着が午前3時前。とてもお世話になってます」
札幌のサポーターになったのが2003年。それまでは元日本代表のMF名波浩(現磐田)を個人的に応援していたが、札幌サポの知人に誘われてスタジアムに行き、仲間ができはじめると楽しくなった。そして、米田さんをのめり込ませる決定的な要因がMF砂川誠(米田さんの呼び方に合わせ、以下は砂様)の存在。柏レイソルから移籍してきたばかりだったが、「うまい」と一目惚れした。
もう砂様から離れられない。ほとんどすべてのアウエー戦に足を運ぶ。移動時間が睡眠時間。一緒に暮らす親からは「そろそろ体のことを考えたら」と心配されるが、「行かないとかえって体調がおかしくなる」そうだ。
「試合に合わせて休みを取るために勤務を調整します。職場の皆さんが温かくみてくれているおかげ。札幌サポはアウエーの応援に来たくて来れない人がたくさんいる。私はそんな周囲の協力があるので幸せです。なんと言っても夢中にさせてくれる砂様に感謝してます」。なるべく砂様の近くにいたい。常ににスタンド最前列にいようとするのも、そんな気持ちからだ。
「試合後半になると、選手はつらくなる。でも、マイボールがラインを割りそうな時、自分たちの声で選手はもう一歩が踏み出せるかもしれない。そんな後押しになれば、と思って、行ける限り、行くのです」
自らの声がピッチに届き、選手の背中を押すと信じる心。米田さんのサポーター道は、選手個人を応援する人にしろ、クラブ全体を応援する人にしろ、そのすべての精神性に共通するものかもしれない。それプラス、ちょっとミーハーな追っかけ精神。それが北の強者の超体力勝負を支えている。(中小路徹)