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〈ゴルフ〉素顔のプロたち

初優勝支えた友情 ほろり

2008年7月10日

  • 筆者 舩越園子

写真朴仁妃=田辺安啓氏撮影

 全米女子オープン最終日の夕方。優勝した朴仁妃(パク・インベ)(19)の表彰式がそろそろ終わるというころ、メディアセンターの入り口に1人の韓国人記者がそわそわしながら立っていた。「ただ一言、おめでとうと言いたくて」

 前週のウェグマンズ最終日。18番ホールで朴がドライバーで打ったボールがギャラリーの女性の顔面を直撃。大量に出血し、救急車で運ばれた。駆け寄った朴には、どこからともなく負傷した女性の電話番号を記したメモが手渡された。

 競技を終え、バタバタと空港へ。全米女子オープンへ向かう飛行機を待つ間、朴はメモを取り出し、負傷した女性に電話をかけた。想像以上に重いけが。彼女は飛行機に乗るのをやめて試合会場へ引き返し、自分に何ができるかをツアー側に尋ねた。そのため、メジャー会場への到着は1日遅れになった。

 けがをさせた罪悪感にさいなまれ、おろおろする朴に声をかけたのが冒頭の韓国人記者。「悪いことは今週のこの場所で全部終わりだよ。悪いことの後には必ずいいことがある。来週は優勝だって転がり込むかもしれない」

 翌週。全米女子オープン会場では朴も韓国人記者も負傷した女性の話はあえて口にしなかった。朴は自分のプレーに集中し、初優勝をメジャー勝利で飾った。19歳11カ月は大会最年少優勝。周囲から見れば早々の勝利だが、彼女にとっては長い歳月だった。

 98年全米女子オープンで優勝した朴セリに刺激され、その2日後からゴルフを始めた朴は、当時9歳だった。父親から与えられた大人の女性用クラブは練習しすぎて2カ月で壊れ、以後は男性用クラブを振り続けた。

 12歳で渡米。米国でプロを目指す88年・辰年生まれの韓国人ジュニアどうしで「ドラゴンクラブ」なる女の子の会を結成し、寂しさを紛らしながら腕を磨いてきた。

 あの日から、ちょうど10年。「心が沈んだとき、私を引き上げてくれたのは母国の家族や仲間でした」

 優勝会見にやってきた朴が入り口で韓国人記者の姿に気づき、走り寄った。祝福の一言を準備して待っていた韓国人記者は、しかし無言で朴を抱きしめた。眺めていた私は、思わず、ほろっと、もらい泣き。

(在米ゴルフジャーナリスト)

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