
2008年9月25日
ビーベンス会長=田辺安啓氏撮影
今季メジャーの真っただ中、米女子ツアーのキャロリン・ビーベンス会長に「アメリカ人選手に勝ってほしい?」と尋ねたら、激怒された。「私はこのツアーを世界一のスポーツ組織にしたいだけ。国籍や人種は無関係」
豊富なビジネス経験と手腕を買われ、会長に就任したビーベンスは、報道規制やドーピング検査の導入など既存の慣習を打ち破る施策を発表。「強引すぎる」という不満がツアー内部から噴き出し、スタッフは次々にツアーを去っていった。
孤軍奮闘の中、先ごろ、会長が唐突に発表したのが、ツアー在籍2年以上の外国人選手に英語のテストを受けさせ、一定基準に満たない場合は出場停止という「英語能力テスト」。全米のみならず世界から批判が殺到し、慌てて撤回となった。
批判の最大のポイントは「アジア人に対する差別」。だが、会長に差別的意図があったとは思えない。
韓国人をはじめとするアジア人選手の強さは圧倒的。彼女たちの母国から流れ込むテレビ中継権料やスポンサー料を米女子ツアーの大きな財源とし、ツアー開催地をシンガポールや中国まで拡大した功績が評価されたからこそ、ビーベンスの会長任期は3年後の11年まで延長された。
アジア諸国との関係強化は会長自身が力を入れたビジネスの成功を意味する。それを途絶えさせる施策をわざわざ打ち出すはずはない。
失敗だったのは、アンチ・ビーベンス派たちに絶好の批判材料を与えてしまったこと。「ビーベンスは選手たちの声に耳を傾けていない」。米メディアの報道をそのまま受けて、世界各国のメディアも相乗りし、大いなる会長批判を展開した。
しかし、会長の真の声に直に耳を傾けたメディアがどれほどいるのかは大いなる疑問。ビーベンスの真意は人種差別などという次元にはなく、彼女のいつぞやの私への激怒こそが本音だ。
出るくいは打たれる。多勢に無勢なら打ち砕かれることもある。だが、才能ある「異端児」に理解者、協力者が加われば、その才能は必ずや花開き、米女子ツアーは飛躍的に発展するはずだ。そのとき突然、手のひらを返すなんてことだけは、したくない。
(在米ゴルフジャーナリスト)