第77回選抜高校野球大会(日本高校野球連盟、毎日新聞社主催)の6日目の29日、第2試合に登場した市和歌山商は常総学院(茨城)と対戦し、四球や敵失に絡めて7安打で6点を奪い、後半追いすがる常総学院を振り切った。次の試合は31日の第3試合で、神村学園(鹿児島)とベスト8をかけて戦う。
1回表、2四球と捕逸などで1死二、三塁。市和歌山商は先制の好機を迎えた。打席に立ったのは4番伊藤。伊勢の投げた、外角高めの直球を無我夢中で振り抜いた。打球は三塁線を破る適時打となり、2点を先制した。
試合前、伊藤は左手首を痛めていた。球を打つ瞬間に鋭い痛みが走った。それでも伊藤は「自分が打たなくては」と毎晩、大阪の宿舎で素振りを繰り返した。
針治療を受け、テーピングを巻いて試合に臨んだ。「打った瞬間、手首の痛みは感じなかった。なんとか、田島さんを楽にしてあげたかった」と2年生ながら4番を打つ責任を果たした。
3回裏。市和歌山商はピンチを迎える。まず、先頭打者に右中間を破る二塁打を放たれ、続く打者にも中前に運ばれた。2死二、三塁、一発逆転のピンチで打者の打球はセンターに。中堅手、信下は一瞬、球を見失い後ろに下がったが、必死に球を探すと、曇り空に白球が見えた。前のめりになりながら、懸命に前へ走り手を伸ばすと白球はグラブに。ピンチを切り抜けた。
田島は7回裏まで、毎回ランナーを背負いながらも、変化球をコーナーに集めた丁寧な投球で打者を打ち取ってきた。しかし、回を追うごとに球威は落ちていった。4点差で迎えた8回裏、失策と右前安打などで、1死二、三塁とされた。
内野陣がマウンドに集まった。主将の梶本がみんなに自分の帽子を見せた。帽子には前日の晩、真鍋監督が書いた「あきらめたらあかん」の文字があった。「ここで踏ん張って、次の攻撃につなげよう」とそう言い合った。しかし、田島はその後も、犠飛で1点をかえされ、続く打者に高めに浮いたカーブを右翼席に運ばれ2点をかえされた。
1点差で迎えた9回裏。「あきらめたらあかん。思い切っていこう」そう思い直した田島は先頭打者を三振に、続く打者もショートライナーに打ち取り2死。マウンドに捕手上野が駆け寄った。「おれに任して投げてこい」。上野が出したサインは勝負球のスライダー。打球は一、二塁間を抜けると見えたが、二塁手梶本が好捕。田島が一塁のベースカバーに入り、試合は終了した。
試合後、田島は「今日の投球は70点。次の試合では100%の投球をしたい。まだ満足していません」と語った。
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◆球場に響く3000人の声援
市和歌山商の応援席には、生徒、保護者、OBら約3千人が応援に駆けつけた。おそろいの緑色の帽子をかぶり、オレンジ色のメガホンを打ち鳴らして、吹奏楽部の演奏に合わせて大きな声援を送った。
1回表、伊藤選手の左前二塁打で早くも2点を先制すると、得点した時のかけ声「ハッスルハッスル」が球場に響いた。母増美さん(41)は「ランナーをかえせるバッティングができたのでうれしい」と満面の笑みを浮かべた。
夏の甲子園に引き続き応援旗の旗手を務める坂本貴哉さん(16)は「いつもの野球ができていると思う。この調子でがんばってほしい」と応援席の一番上から応援した。
4回表、上野選手が右前へ二塁打。母直子さん(46)は28日、上野選手から「がんばるので応援してほしい」というメールを受け取った。「本当にがんばってくれました」とうれしそうに話していた。
梶本選手の兄で野球部OBの竜一さん(23)は、仕事を休んで応援に駆けつけた。「OBとして、チーム全体を応援している。少し緊張しているようで、エラーが多いので心配。まずは勝つのが第一です」とチームの活躍を見守った。
昨年の三塁手、小久保政紀さん(18)ら野球部のOB7人も応援団に加わり、走り回って応援を盛り上げた。小久保さんは「今朝後輩たちに会ったときには、みんな緊張しながらもガッツポーズしてくれた。やっぱり市和歌山商の守備は日本一。その分リズムに乗っているし、市和歌山商らしい野球をやってくれている」。
8回裏、1点差に詰め寄られたが、田島投手を中心として、冷静にピンチを乗り切り勝利。生徒らは跳び上がって喜び、目に涙を浮かべる保護者も。
田島投手の母江美子さん(50)は「ひやひやしました。勝てて感激です」と喜んでいた。