上田桃子=田辺安啓氏撮影
上田桃子(21)が自らのブログに「待ってろ世界!」とタイトルをつけたとき、その肝の据わった表現に感服した。トッププレーヤーたちが集う米国、そして世界に対し、「待ってろ」と言ってのけるからには、それなりの覚悟があるのだろう。お手並み拝見が楽しみだった。
07年、史上最年少で日本の賞金女王に輝き、日米両ツアー共催のミズノクラシックを制覇して今季の米ツアー出場権を獲得。海の向こうに広がる世界をあんまり長々と「お待たせ」しないよう、上田は世界へ到達するためのプロセスを最短・最速化した。
そして今年。米女子ツアー開幕戦SBSオープンで、いきなり優勝争いを演じた上田の全身から「来たぜ世界!」というフレーズが聞こえてきた。気が強いと言われる彼女だが、プレー中の息遣いはむしろ静かだ。感情の起伏を抑え、飄々(ひょうひょう)とクラブを振る。だが、視線だけは刺すように鋭い。そんな勝負師の目とグリップするときも見えているかわいらしいネイルアートの対比は彼女の魅力の一つだ。
元女王アニカ・ソレンスタムに敗れた上田は、今にもあふれ出しそうな涙をなんとかこらえながら「悔しかったですよ」と言った。だが、長いまつげは、すでにぬれていた。
負けん気が強いほどもろさや弱さもあるだろう。まな娘をロープの外から見守り続けた父・功一氏は「そうなんです。だから誰よりも練習して、弱さを感じないようにする」。そして、思い切りもいいのだと言う。「必ず何かをしでかす子です。小学6年のとき、試合で結果が出せなかったら、ポニーテールをばっさり切って坊主頭にしてきた。負けん気の強さは米ツアーで一番だぐらいに本人も思っているはずです」
上田のハイスピードの歩みを父親は「アイツはついている」と言った。しかし、その「運」は彼女の覚悟と度胸、何より努力が招いているのではないだろうか。功一氏は日焼けしたほおをほころばせながら照れくさそうにうなずき、「アイツは直感も鋭いんです」。
ぬれていたまつげがやっと乾き、きりっとした表情を取り戻した上田が「優勝も遠くないなと感じた」とほほ笑んだ。彼女の直感が現実になる日は、きっと遠くない。(在米ゴルフジャーナリスト)