人生の転機を迎えたストックホルムの街で、夏見がついに表彰台に立った。昨年3月、この地で自己最高のW杯8位になっていなければ、スキーを脱いでいたからだ。
昨年2月の世界選手権札幌大会で5位入賞を果たし、10年バンクーバー五輪に向けて周囲の期待は高まった。しかし、心の中では「引退」の二文字が揺れていたという。
「実力で入賞したか不安でした。世界選手権後のW杯で結果を残せなければ、スキーをやめようと思っていたんです」
現役続行に翻意すると「決勝進出」だった目標を「表彰台」に変更。昨オフから用具も一新し、筋持久力を中心に鍛え上げた。原因不明の痛みが足の甲に出ても焦らず、治療と並行して計画的に練習できたことが、今季の好調につながった。
ノルディックスキーで日本が唯一、表彰台に上れなかったのが距離だ。体格差がタイムに出やすく、上りではストックで押し出す上半身の筋力が求められ、下りでは体重差でスピードが変わる。そんな中で、外国勢に劣らない身長170センチの体格が生かされた。
スプリントに挑んで7季目。06年トリノ五輪前から専門的に強化を図ってきたことも功を奏した。スキーを踏まれ、体が激しく当たるこの種目を「始めた頃は嫌いでした」と話す色白の29歳が、日本のスキー史を塗り替えた。