(29日、柔道全日本選手権)
優勝したのに敗者の表情。「(代表に)決めてもらう柔道じゃなかった。結果は真摯(しんし)に受け止めます」。石井は珍しく弱気だった。でも選考の結果、朗報が届いた。
決勝の序盤は圧倒した。鈴木対策で練習していた大内刈りで倒し、抑え込む。しかし一本勝ちまで残り2秒で逃してしまった。その後は逃げまくって反則を重ねる。「ふがいないし情けない」。猛追されながら、しのぎ切った。
技をかけられないために、相手の足にしがみついてかわすこともいとわない。一本を狙うのでなく、がつがつポイントを取りにもいく。勝ちの形にこだわらない石井のスタイルを「汚い」と批判する人もいる。だが昨年、100キロ級から階級を上げて以降、無敗で5大会連続優勝。批判を結果で封じ込めた。
石井を支えるのが、豊富な練習量だ。2月のオーストリア国際で優勝した夜。疲れ切った体にむち打ってホテルの部屋でけいこした。全日本男子の斉藤監督を、ベッドの上に何度も投げ込んだ。けがで練習不足だった今大会を「改めて練習が大事と痛感した」と振り返る。
きれいな一本を目指す「日本の柔道」からは遠い選手かもしれない。でも、五輪の金メダルには一番近い男だ。21歳。「北京までに一回りも二回りも大きくなって金メダルを取る。自分の柔道を見せても見せなくても、優勝したらいい」。最後に、石井らしい口調が戻った。(柴田真宏)