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トミーのラグビーコラム・ノーサイド!

ラグビー選手の引退後

2006年09月11日

 本題に入る前に、まず社会人(企業)ラグビーについて紹介したいと思う。国内の社会人上位12チーム(2006年度から14チーム)が総当りで争う「ジャパンラグビートップリーグ」が産声をあげて4年目。そのリーグが誕生するまでは、「東日本社会人リーグ」(関東)、「関西社会人リーグ」(関西)、「西日本社会人リーグ」(九州)と3地域に分かれ、それぞれのリーグの上位チームがトーナメントで争う「全国社会人大会」という方式だった。

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新ジャージーを披露するラグビートップリーグ12チームの選手=2003年9月2日、東京・六本木で

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トップリーグ開幕戦前のセレモニーでビッグジャージーが登場。観客の手から手へとスタンドを巡った=2003年9月13日、東京・国立競技場で

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トヨタFW阿部(右)のタックルを振り切り突進する南アフリカ代表のNEC・ファンデルベストハイゼン=2004年12月26日

 この地域リーグは、年々地域ごとの実力差が広がっていった。特に九州の「西日本社会人リーグ」は、リーグ優勝しても全国大会では予選を勝ちあがれない状態が続き、東日本や関西との力の差は開く一方だった。

 地域差をなくし、日本のトップチーム同士がハイレベルなゲームを繰り広げることでラグビーの活性化につなげようと、「トップリーグ」が誕生したのである。

■「アマチュアリズム」は過去のもの

 トップリーグでは近年、各チームとも環境整備や外国人選手補強といった強化策に余念がない。専用クラブハウスはもちろん、専用芝グラウンドの整備、さらに栄養士、リハビリトレーナー、通訳の雇用、そしてナショナルレベルの代表選手(サッカーでいうならブラジル代表ロナウジーニョなど世界トップクラスの選手)の獲得と、完全にプロフェッショナリズムへと変化している。

 チームネーム、例えばサントリー「サンゴリアス」や東芝「ブレイブルーパス」、リコー「ブラックラムズ」などの呼称も定着しつつある。

 環境は整った。強力な助っ人も獲得した。あとは根本的な部分で選手、スタッフがどれだけラグビーに全力で打ちこめるか、にかかっている。企業人であるが、ラグビーにおいても結果を出さなくてはいけない、という時代になっている。

 一昔前まで、ラグビーはアマチュアスポーツの代名詞として、一種独特の美学があった。しかし、世界のプロ化に伴い、近年ではラグビーを職業とし、嘱託社員もしくは契約社員として雇用・採用する企業も増えている。それは「現役の間は思う存分ラグビーだけに打ち込みたい」という選手側のニーズと、「チームを強くしたい」という企業側の要望がマッチしていることの裏づけでもある。学生ラガーのプロ化志向も強い。

 「ラグビーはアマチュアのスポーツ」という定義は過去のものになりつつある。

■プロ化の良し悪し

 私個人は、ラグビーを職として生きることに全く反対はない。日本ラグビーの強化に直結するひとつの解決策であるなら、大賛成である。プロ選手よ、どんどん来たれである。しかし、重要なことを考えなくてはいけない。それは「引退後」の生活である。

 アマチュアの場合、当然ながら収入はラグビーによるものではなく、あくまでも業務による。その場合、昼間は職場で業務をこなし、定時後にラグビーのトレーニングに励む。つまり、「会社の業務を遂行しながら、ラグビーをする」わけだ。

 一方、プロ選手は「業務=ラグビー」であるため、終日トレーニングに打ち込む。両者の決定的な違いは、前者は仮に練習中けがをし、不幸にも現役選手としてプレーできない状態になった場合でも、「社員」として会社の業務に従事できる。後者は、プレーできなくなった時点で「契約終了」になる可能性が非常に高い。プロはラグビーに打ち込める反面、職を瞬時に失ってしまうリスクも常に隣り合わせだ。

 トップリーグに所属している選手は、上記2通りの雇用形態がほとんどであろう。ただし最近では、シーズンに入ると強化練習や合宿のため出社しなかったり、出社しても週に数日の出社だけなど、業務を遂行する時間が減少する例が出ていることも事実。

 そのため、社員としてのスキルや業務量が落ちてしまうことは否めない。この問題は個人の努力(現役中の業務への取り組み、引退後の努力)によるところが大きいが、企業側の採用、育成制度にもよってくる。

■ビジネスに生きるラグビー精神

 現役引退後、ラグビー選手は様々な道を進む。正社員すなわちアマチュアでプレーしていた選手の多くは、会社に残り社員として働いたり、スタッフとしてチームに携わるケースが多い。プロ選手は引退後家業を継ぐ、事業を始める、教員になるなどのケースが多い。

 どの道も、ラグビー引退後はあらゆる意味で「険しい」が、ラグビーで培った強靭な精神力、チームワーク、戦術眼を強力な武器に、活躍するケースが多い。困難なプロジェクトに立ち向かうチャレンジ精神や、チームプレーを大切にする統率力、そしてはきはきとした挨拶や礼儀などが、引退後のビジネスシーンに生きるのだ。

 痛く、きつく、辛いことを人の何十倍も経験してきたということは、なにごとにも変えられない財産である。

■おまけ 意外に多いラグビー部出身の著名人

・高橋克典氏(俳優)

 言わずとしれた「サラリーマン金太郎」こと高橋克典氏。青山学院高校ではウイングとして活躍。

・舘ひろし氏(俳優)

 愛知県千種高校時代は、キャプテンを務めた実績もあり、第79回全国高校ラグビー選手権大会では初出場を決めた母校を応援に花園へ駆けつけたことがニュースに。

・くりぃむしちゅー(お笑い芸人コンビ)

 上田晋也、有田哲平のコンビ。熊本県立済々黌高等学校時代、ラグビー部にて出会いコンビ結成。

・橋下徹氏(弁護士)

 大阪府立北野高校では第67回全国高校ラグビー選手権大会出場、ベスト16。更に高校日本代表候補、西日本高校選抜という肩書きを持つ。「行列のできる法律相談所」ほかバラエティ番組多数出演中。

・野尻佳孝氏(株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長)

 明大中野高校→明治大学出身。明大時代は俊足ウイングとして鳴らし、大学日本一を経験。2006年東証一部上場。


【プロフィール】 

トミー (本名:冨澤浩明)

 1975年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。現役時代のサイズは身長162cm、体重66kg。経歴は以下。
 鎌倉ラグビースクール目黒高校(現目黒学院):第51回全国高校ラグビー大会ベスト8→関東学院大学:第33回全国大学選手権ベスト4→NECグリーンロケッツ:第40回日本選手権優勝

 現役生活は18年。ポジションはスクラムハーフ一筋。NEC在籍時、日本選手権初優勝を機に、気分よく28歳で現役引退。引退後は会社員として働くかたわら、ラグビー人気復活のために子供達を指導したり、各種コラムを執筆中。趣味はロングボード、坦々麺食べ歩き。休日はラグビー指導、ロングボードに明け暮れる。ラグビー以外のスポーツではカバティにも興味あり!? 悩みは、初対面の人にラグビーやってましたとアピールしても殆ど信じてもらえない事。夢は自分が育てたスクラムハーフが日本代表として活躍する事。

写真・トミー
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