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平和構築、国連生かすには 日本の発言権確保に向けて

 国連を日本はどう使うべきなのか。イラク戦争時に大国間の亀裂で機能不全になった国連は、潘基文(パン・ギムン)事務総長のもとで立て直しを図ろうとしている。改革の成果として、紛争後の国家の「受け皿」づくりを進める平和構築委員会が動き出した。日本は安全保障理事会の常任理事国入りを目指しているが、展望は開けない。まずは平和構築委の主軸となって、アジアを中心に平和構築に取り組むべきだ。その実績が安保理に対する発言権確保にもつながる。(ニューヨーク支局長・水野孝昭)

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国連で開かれた、平和構築委員会のシエラレオネ国別会合=ニューヨークの国連本部で

膨張するPKO──派遣増え現場を圧迫、関心薄い大国

 イラク戦争で亀裂の入った国連に、修復の動きが始まった。

 イランに対する追加制裁決議案が提示された3月15日の安全保障理事会に、ドビルパン仏首相が出席した。イラク開戦時は、仏外相として反対の急先鋒(きゅうせんぽう)だった「反米の顔」だ。だが、今回は5大国が足並みをそろえ、同首相も「我々は中東の危機を解決していかなければならない」と記者団に語った。

 同じ日、米国の次期国連大使に任命されたカリルザード前イラク大使は上院公聴会で、アフガニスタン復興で国連の果たした役割を評価し、「イラクでも国連がより大きな役割を果たす機会がある」と断言した。前任のボルトン氏が痛烈な国連批判を繰り返したのとは対照的だ。

 国連本部ビル38階の事務総長室にも、米国要人の訪問が目立つようになった。上院議員、国務次官……。「米国との関係が冷えたアナン前事務総長の時とは様変わりだ」と国連スタッフは指摘する。

 だが、米国との関係が密になったことが、国連では必ずしもプラスに働かない。就任早々に提案した「軍縮局を廃止して事務総長の直属にし、平和維持活動(PKO)局を『平和活動局』と『現場支援局』に分割する」という機構改革案は途上国から反発され、今月15日ようやく承認された。

 膨張したPKO局の効率化を目指したが、「軍縮の軽視だ」「PKOの指令系統はどうなる」と疑問が噴出。修正や要望を受け入れた末の決着だった。

 潘氏がPKO局の分割を進めたのは、紛争対応に追われた安保理がPKOを急増させたからだ。現在、各地で16カ所。予算、人員とも伸びきったつけが現場にしわ寄せされている。

 独立後の混乱を乗りきって選挙まで実施したのに、昨春に紛争が再発した東ティモールは、いわゆる「出戻り国」だ。

 「PKOの早すぎた撤退が問題だった」。現地で国連事務総長特別代表を務めた長谷川祐弘氏は残念がる。

 国連は独立、政府樹立と国づくりに関与してきた。日本も自衛隊を派遣してPKOに参加。そのまま安定政権ができれば、93年のカンボジア和平に次ぐ「成功例」になるはずだった。

 だが、当初3500人だった国連部隊と警察は03年秋からどんどん撤退し、8カ月間でゼロになってしまった。「指導者が国連の助言に従わなくなった。せめて国連部隊と警察が数百人残っていれば武力衝突は防げたのに」と長谷川氏は言う。

 「紛争のわな」と題した世界銀行の報告によると、内戦を終えた国の44%が5年以内に再び紛争に逆戻りする。「紛争経験国が安定するには3年から10年かかる。だが、大国の関心は中東や北朝鮮などに集中し、地域問題は後回しだ」(長谷川氏)

 その穴を埋める役割を期待されるのが、平和構築委員会だ。

平和構築委員の始動──内戦の再発防ぐ役割 民政支援は日本に強み

 テレビ画面を通じて、西アフリカのシエラレオネから代表が呼びかけた。「内戦の後も強制結婚や人身売買はなくならない。犠牲になるのは女性や子供です」。2月に開かれた平和構築委員会の国別会合。「紛争ダイヤ」が絡む内戦が続いた同国だが、安定に向かい、PKOも05年末に撤退。アフリカでの和平のモデルになれるか、注目されている。

 平和構築委員会は、紛争経験国が内戦に逆戻りするのを防ぐ「受け皿」として、昨年6月、国連に誕生した。国連改革の数少ない成果の一つだ。

 日本を含む31カ国が組織委員会のメンバー。アンゴラが議長に就任し、まずシエラレオネとブルンジを対象に国別会合を設置した。どちらも支援が集まりにくく、「援助の孤児」と呼ばれていたアフリカの国だ。兵士の社会復帰や警察再建などを統合した平和戦略を作り、世銀などの開発機関も加わる。

 「PKOのフォローアップです。和平合意直後は関心が集まるが、長続きしない。平和構築はPKOの撤退後も長く支援する。その代わり当事国に注文もつけます」と平和構築支援室のマカースキー室長は強調する。

 05年9月の国連首脳会合の成果文書に盛り込まれながら、発足が遅れたのは、途上国などが「内政干渉」を警戒したからだ。その位置づけをめぐっても、総会の機関か、安保理の機関かで対立。結局、総会には年次報告を出し、安保理には助言をすることになった。

 鳴り物入りで始まった委員会だが、手探りのスタートで次の対象国も決まっていない。「まず成功例を作ろうと慎重になっている」と外交筋はみる。

 平和構築は、日本外交の主軸のはずだ。小泉首相が02年に「平和の定着と国づくり」を表明。新ODA大綱でも重点課題として掲げた。アフガニスタンでは兵士の動員解除や地雷除去などを担当して実績を上げた。軍隊中心のPKOよりも民政支援が中心となる点も日本向きだ。実は発足時に「日本に組織委員会の議長国をやってほしい」という打診もあった。

 平和構築は、紛争予防から始まる長い期間が対象になりうる。現在はPKOの下で行われている選挙監視や人権部門などの活動も、平和構築の一環といえる。急増したPKOは、それぞれ「卒業」の時期がやってくる。安保理が助言を求める場面も今後は増えそうだ。

 現議長国アンゴラは、安保理が月末に開催する公開討論に招待されて意見を述べている。

 日本の安保理復帰には09年の非常任国の改選まで待たなければならない。だが、平和構築委員会で主導権を発揮していけば、安保理に一定の発言権を確保することも可能だ。平和構築の実績を積むことで、日本は「常任」ではなくとも、いつも必要とされる「常在理事国」の役割を果たせるだろう。

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ポール・ケネディ(米エール大学教授)
45年、英国生まれ。歴史家。著書「大国の興亡」はベストセラー。近著「人類の議会」で、国連の歴史と現状を描いた。

紛争への逆戻り防ぐ政治監視も必要
日本も自主判断でイエス・ノーを

 国連はどこへ向かうのか。国連との賢明なつきあい方は? 米エール大教授のポール・ケネディ氏に聞いた。

 国連を1945年に創設したときに、戦勝5大国は安全保障理事会の「常任」になり、拒否権も与えられた。歴史的に前例のない特権だ。将来、米国とソ連が脱退しないための配慮だった。「巨象をテントから出さない」ことを優先したのだ。

 5大国は特権を守ることでは一致する。安保理には権限が集中し、他の加盟国はその決定に従う義務がある。不公平だが、実際的だ。

 安保理改革には国連憲章改正が必要だ。3分の2以上の加盟国政府と、各議会からも批准の承認を受けなければならない。常任理事国の承認も必要だ。拒否権を持つ中国が「望まない」と言うだけで、他国は「それなら無理だ」と判断するだろう。

 歴史の古傷は容易には消えない。だが、45年の時点で、ドイツとフランスが和解できるとは誰も信じていなかった。日本の指導者が、中国と和解せずに常任理事国入りを実現できると考えるなら、馬鹿げている。

 日本が自国の国益に照らして国連に選択的な姿勢になるのは当然だ。中国とインドが台頭すれば、米国も欧州も相対的に地位は低下する。だが繁栄する民主主義国で、相対的な地位を気にかける必要があるだろうか。大国だけでなく、スウェーデンやカナダのような国も、自国の基準で国連活動に参加している。イエスとノーを場合によって使い分ける「実用的な国際主義」が日本の参考になる。

 ブッシュ政権も、イランや北朝鮮の核危機について、国際原子力機関(IAEA)を利用し外交で解決しようとしている。「イラク戦争は民主化のため」と信じた保守派も、米国の力だけではできないことを悟った。

 安保理も危機への対応が実践的になっている。アフリカのように地域機構に頼ったり、多国籍軍に任せたり。PKOができないなら、北大西洋条約機構でもよい。シニカルかもしれないが、「それで間に合うならやろう」という精神だ。

 ただ、紛争経験国の「持続可能な国家建設」が課題になっている。和平後の最初の総選挙は国際的な注目を集めて成功することが多い。だが、紛争に後戻りしないためには2回目が本当の試金石となる。国連機関は援助だけでなく、政治も監視し続ける必要がある。

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