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NGOと協働し「新外交」 現場経験と高い専門性に期待

 現場経験や高い専門性をバックに、情報を発信したり政策を提言したりするのは、国際的に活動するNGO(非政府組織)の最大の持ち味だ。軍縮や貧困・開発などの分野では、NGOといくつかの政府が協働して現状を変える手法が定着しつつある。しかし、高い資金力をもつ欧米の団体と比べ、日本のNGOの活動の幅には限界があり、市民社会に浸透しきれていない面もある。NGOの底力を引き出す施策と、活動を支える社会基盤を確立することが必要だ。(井田香奈子)

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軍縮への存在感──クラスター爆弾禁止へ中堅国と連携
 各国政府を後押し

 しんしんと雪が降りつもる2月下旬のオスロ郊外。ノルウェーが主催した国際会議は、熱に包まれていた。

 46カ国が08年末までにクラスター爆弾の禁止条約を結ぶと宣言した。この武器を所有する英国、フランスなどの大国も名を連ねた。非人道性が批判されてきたクラスター爆弾の規制に向けた動きが、国際舞台で始まった瞬間だった。

 舞台回しをしたのはノルウェー、アイルランドなどの中堅国家(ミドルパワー)。被害者の多くが民間人で、不発弾によって戦争後も被害が続くクラスター爆弾の廃絶を急ぐべきだという理念を共有していた。

 その国々と連携してきたのが国際的なNGO連合体「クラスター兵器連合(CMC)」だ。昨年3月、この問題に関心のある9カ国を招いてロンドンで非公式な会合をもったのが始まりだった。ここで、やる気のある国による条約の枠組みを作り、参加国を広げていくやり方に各国が合意。CMCは各国議会への問題提起や30万人の署名活動も同時進行させていた。

 ノルウェーのヨハンセン副外相は「軍縮を現実的に進める上でNGOとの協力は不可欠。彼らはそれぞれの政府、市民とつながり、働きかけができる」と強調する。

 複数の国の利害、思惑がからむ安全保障や軍縮の分野は、最もNGOが関与しにくい部分と考えられてきた。そこから一歩踏み出したのが、カナダなどの国々とNGOの協力で97年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)に至ったオタワ・プロセスだ。クラスター爆弾禁止への動きも、これに重なる部分が多い。

 オタワ・プロセスにもかかわったスティーブ・グースCMC共同議長は「オタワ条約が意欲ある国々とNGO、市民社会が実現する『新外交』の形を確立した」という。子ども兵士の禁止、国際刑事裁判所の設立などにも生かされた。

 政府とNGOが対立する局面も、当然ある。オスロ宣言では禁止の対象を「民間人に受け入れがたい苦痛を与えるクラスター爆弾」とし、種類によって容認される余地を残した。不発弾への懸念は共有するが全面禁止に否定的な英国などの参加も促すためだ。全廃を求める立場からは妥協的と映るが、インパクトある出発点を作ることで政府とCMCは合意した。

 「私が対人地雷廃止運動で学んだのは政府とのパートナーシップ。NGOと政府の役割は異なるが、NGOだけではできないことは政府にやってもらう」とグース氏。互いをうまく活用する関係とも言える。

 クラスター爆弾の「オスロ・プロセス」の成果が問われるのはこれからだ。宣言に加わった大国に配慮するあまり禁止する対象を狭めれば、骨抜きになる危険もはらむ。

 クラスター爆弾を大量保有する米国、ロシア、中国は今のところ不参加で、これらの国への働きかけ方も課題だ。いずれも対人地雷禁止のオタワ条約にも加入していない。

 「それでも多くの国が『この武器を生産・使用しない』という国際規範を作って守っているとき、逸脱する行動は条約に入っていない国であれ、とりにくい」。地雷廃絶日本キャンペーン運営委員の目加田説子(もとこ)・中央大教授は、オタワ、オスロ両プロセスの意義をそう説明する。

 オタワ条約に加入する日本はオスロ宣言には賛同しないと議場で述べた。「クラスター爆弾の安全保障上の必要性より、禁止への動きに加わらない外交上のマイナスの方が大きいと政府は分かっている」。いずれ加わる、と目加田さんはみる。

 条約は政府間の約束事だが、その背後に市民社会の強い支持、要請があれば重みを増す。NGOと政府が協働する意義もそこにある。

エイズ治療も推進──安価な特効薬 途上国に普及図る
 活動に欠かせぬ経験や専門性

 90年代後半に先進国で普及したエイズの特効薬は、途上国にはあまりに高価だった。

 「国境なき医師団(MSF)英国」医療アドバイザー、トム・エルマンさんは90年代半ばからルワンダやカンボジアで活動し、エイズ患者を数多くみとった。「本当に薬が必要なところに薬はなかった」。NGOは99年以降、途上国の感染者が治療薬を手にできるようにする運動を強めていく。

 すでにある薬と同じ有効成分を使ったジェネリック薬なら価格は劇的に抑えられる。MSFによると、年間1万ドルかかったエイズ治療費は140ドルに。ただし特許権を主張する企業やその利益を守りたい政府との対立は避けられない。

 00年のG8九州・沖縄サミット。欧州のNGOメンバーが沖縄入りし「エイズが依然猛威をふるう途上国の現実は、特許より重い」と説得して回った。

 企業の利益保護を強調する米国と、そこまでの姿勢とは距離を置きたい欧州。微妙な関係を測りつつ働きかけを続ける「オックスファム英国」政策アドバイザー、モウガ・カマルヤンニさんは「エイズ問題は特許、通商もからみ複雑化している。NGOは現場経験と高い専門的知識が欠かせない」と話す。

 ジェネリック薬をめぐる転機は01年に訪れた。安い薬の使用を可能にした南アフリカ政府を多国籍の約40の製薬会社が訴えたが、NGOのキャンペーンで国際的な批判に直面し、取り下げた。この流れが、途上国は自国内向けのジェネリック薬製造を妨げられない、とした同年の世界貿易機関(WTO)の「ドーハ宣言」に結びついた。途上国での医療へのアクセスは大きな課題であり続けている。

 世界のエイズ対策の中核となる民間基金「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(本部・スイス)は九州・沖縄サミットで日本が呼びかけ、02年にできた。理事会には拠出国とともにNGOや感染者も議席をもつ。

 日本の貢献を支援する「世界基金支援日本委員会」には、国連財団、ゲイツ財団など海外の団体から寄付が来る。山本正ディレクターは「感染症問題への日本での理解を深めてほしいという要請」と話す。

 NGOの支援、政府への働きかけに、国境はとうになくなっている。

課題多い日本──国際協力支える社会基盤に遅れ
 力の源は市民社会の成熟

 中田英寿さんらをCMに起用し、世界の貧困撲滅を目指した05年のキャンペーン。運動のシンボル、300円のホワイトバンドは計464万個売れた。

 売上金はNGOによる政策提言などにあてる趣旨だった。しかし「直接、途上国で使われると思っていたのに」と誤解した人もいて、混乱もあった。

 運動を発案し、世界に広げた英国のNGO「BOND」のアリソン・マーシャルさんは「英米でも注目されたが、日本の盛り上がり方は例外的だった」。

  英国では1個1ポンド(約230円)。現地への援助と混同されることはないという。「ホワイトバンドを市民が正義を求める象徴として作ったが、日本ではその感覚は根付いていなかったのかもしれない」と分析した。

 98年のNPO法人化以降、寄付した人に税制上の優遇がある認定NPO法人制度など、NGOの活動を後押しする一定の施策はあったが、国際協力の分野のNGOを支える社会基盤が確立したとは言えない。

 独立した活動には市民の募金が不可欠だ。しかし05年の財団法人国際開発センターの調査では、日本で20億円以上を集める国際協力NGOは二つだけ。欧米では500億円程度の募金を集めるNGOがいくつかある。

 新興NGOが伸びにくいのも課題だ。国際協力NGOセンターによると、スマトラ沖地震で05年、31団体に計130億円以上が募金されたが、日本赤十字社(90億円)、日本ユニセフ協会(30億円)に集中し、残り約11億円を29の団体が分けた。災害だと集まるが、長引く紛争への反応が鈍い傾向もある。

 欧米では珍しくないNGOと政府、国際機関間のスタッフの移動は、日本ではまれだ。政府系の調査機関によるとNPOスタッフの平均年収は正規職員で二百数十万円。日本国際交流センターの勝又英子事務局長は「優秀な人材を確保するには、人並みの給料を払える資金力が必要だ」という。

 活動への理解をどう広げるか悩むNGOは少なくない。紛争地の援助の経験が長い石井宏明さん(46)はかつて、現地の状況を撮影し、テレビ局を回ったことがある。「寄付を求める立場が撮った映像を使う抵抗感も分かるが、待っていても取材に来てくれない。市民に関心をもってもらうきっかけがほしい」

 NGOの力を引き出せるかは、市民社会の成熟ぶりにもかかっている。

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