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加速する地球温暖化との闘い 長期的な政策立案を

 加速する地球温暖化との闘いは、今後数十年間の世界の焦点だ。日本は温暖化防止を政策の柱にすえ、国際的にも「温暖化に責任を持つ国」との信頼を得たい。京都議定書を守るだけでなく、「2050年の地球像」を考えた長期的な政策が必要だ。しかし、今の日本にはそれがない。このままでは、環境先進国にはなれない。(編集委員・竹内敬二)

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石油産業で知られる米テキサス州は今、風力発電ブーム。設備量は全米一になった=同州西部のホース・ホロウ風力センターで、加藤丈朗撮影

変わる米国──議会に排出量取引の法案
産業界が削減義務受け入れ

 「京都議定書を離脱し、何もしない」といわれてきた米国の温暖化政策が、変わり始めた。

 民主党が勝った昨年の中間選挙後の動きが急だ。リーバーマン上院議員(民主)のスタッフは「長く続いた後ろ向き政策への不満が、ダムが決壊したように噴出している」と話す。

 2月8日、電力業界でつくるエジソン電気協会のキューン理事長が「我々は条件次第で排出量取引のような義務的削減を受け入れる用意がある」という趣旨の発言をした。自主削減だけを主張してきた方針からの大転換だった。

 排出量取引は各企業に排出枠を割り振り、企業は枠に収まるように省エネを進めるが、他社との間で枠を売買してもいい。各社が安い方法を選べば全体として安い削減ができる。

 州レベルでは話が進んでおり、ニューヨーク州やメーン州など北東部10州は合同で、09年に火力発電所を対象にした排出量取引を始める。二酸化炭素(CO2)排出量を10年間で10%減らす。カリフォルニア州を含む西部5州でも計画がある。

 議会も変わった。現在、全米の排出量取引制度をつくり温室効果ガスを長期的に減らす法案が数本も提案されている。リーバーマン議員は、共和党の次期大統領候補に名乗りをあげているマケイン上院議員とともに、「12年に04年レベルに戻し、50年に90年より60%削減」をめざす法案を出している。

 産業界は「いずれ全米規模の排出量取引ができる」と考え、反対をやめて制度設計に加わろうとしている。今の雰囲気は、だれが次の大統領になっても変わらないとみる人が多い。

 一方、欧州連合(EU)は、3月初めの首脳会議で「京都議定書がどうなろうと20年までに温室効果ガスを20%削減する」という先進的な目標を決めた。

 EUの強みは、加盟国の工場など1万1000を対象にした排出量取引を05年から運用していることだ。将来は、これを米国の取引市場と連結させようとしている。そうなると、米欧の温暖化対策が強く結びつく。

 一般に温暖化対策には、(1)自主取り組み(2)政府による規制(3)環境税などの経済的手法(4)排出量取引、などがある。

 日本の対策は、経団連の自主行動計画と、車や電化製品の省エネ効率を次第に上げる「トップランナー方式」の規制が中心だ。排出量取引がないのは、企業への排出枠設定に経団連が反対しているからだ。

 日本は、従来の米国の姿勢を風よけにして、思い切った政策をとってこなかった。その結果、「温暖化防止のため生活を見直そう」のかけ声は大きいが、それを後押しする社会の仕組みが足りない。

様子見の日本──長期戦略なし技術競争に不安

 日本にとって必要なことは、第一に現実を直視し、今後の戦略を立て直すことだ。

 英国の「スターン報告」は、今の調子では来世紀初めに約5度も気温があがり、世界の損害は国内総生産(GDP)の5〜20%にもなるとした。そのうえで、「今後10〜20年間の投資が今世紀後半以降の気候を左右する」と、早期の行動を求めた。

 水不足や異常気象は脆弱(ぜいじゃく)な途上国の農業基盤を壊し、地域を不安定にする。「気候の安全保障」の観点からも、日本のような先進国は「温暖化を放置する」という選択肢はとれない。

 日本はまず、議定書の目標を達成しなければならない。また、欧州と米国が手を結ぼうとしていることを考えれば、日本でも排出量取引の整備を考える必要があるだろう。自然エネルギーの利用もあまりに少ない。

 長期的な視点も欠かせない。温暖化を止めるには「50年ごろに排出量の半減が必要」とされる。英国は「50年に60%減」を法律化しようとしている。日本には長期目標の議論がない。

 第二に必要なのは、技術競争に後れをとらないことだ。

 米国の電力会社・PNMリソーシズのスターバ社長は議会証言で「クリーンエネルギー技術の競争に勝てば、米国は脱炭素技術のリーダーになり、技術の輸出国になる」と述べた。米国では、インターネットなど情報通信技術で世界をリードしたときのような国家計画を求める声が強まっている。

 国際条約に縛られることを嫌う米国だが、国内の政治や企業が動くときには急に本気になる。温暖化でも、京都議定書とは関係なく動いており、技術競争の準備ができたと見れば一転、主導権を握る形で国際交渉に戻ると考える人が多い。

 欧州は、「20年に自然エネルギー比率を20%に」という目標を掲げて、産業を育てている。

 温暖化との闘いは、技術開発戦略の競争でもある。目の前のコストだけで新技術を避けると、将来の競争に負け、巨大な商機を失うことにもなる。

 日本も安閑としていられない。技術開発を誘導し、国内市場で育て、海外に普及させる。成功例は太陽光発電だ。政府の補助金などが国内市場を成長させ、太陽光パネルの生産で、世界のトップ5社のうち4社が日本企業になった。

 京都議定書の削減期間が始まる来年、日本でG8サミットが開かれる。「温暖化を放置しない国」を見せる好機だ。

京都議定書

 97年、京都市で開かれた会議で採択。先進国に温室効果ガスの削減を課す。削減率(90年比)は08〜12年の平均で、EU8%、米国7%、日本6%。米国は離脱した。

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