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![]() 食糧援助の警備に立つ国際治安支援部隊(ISAF)のイタリア兵=アフガニスタン・カブール州パグマン郡で、大野明撮影 |
アフガニスタンの首都カブールから西へ約20キロ。今年早春、雪解け水でぬかるんだ道を1時間ほど揺られてパグマン郡に着いた。迫る白い峰はアルプスを連想させる。
この地域で最も貧しい160家族が、米や豆など46キロ分ずつを受け取った。配ったのは、国際治安支援部隊(ISAF)の一員であるイタリア軍だ。
兵士は住民の一輪車に笑顔で荷を積む。周囲では、雪の上も走れる装甲車が陣取り、兵士が銃を構え続ける。私も重さ約15キロの防弾チョッキの着用を義務づけられた。
国内でカブール近郊は比較的平穏とされているが、同郡では昨年5月と9月に爆発事件が起きた。山を隔てた地区では反政府勢力がなお力を持っており、パグマン警察署のラザク署長は「春になれば敵も活発になる」と警戒する。
郡の人口約20万人に対し署員は94人。1人の警察官が受け持つ人数は日本の4倍前後になる。彼らはドイツが実施している1〜3カ月間の訓練を受けて警察官になったばかりだ。この日、伊軍から贈られた日本車のトラック1台が、署の2台目のパトカーになった。
不安定なアフガニスタンの治安維持を支援するのがISAFの任務だ。国連PKOではなく、北大西洋条約機構(NATO)が主導する多国籍軍だが、国連安保理決議で任務遂行のために必要なあらゆる手段をとる権限を与えられている。
住民は警戒中の装甲車に手をふっていた。伊軍のフレゴナ中佐は「我々は平和的任務で来た」と話すが、「任務に必要と判断すれば、いつでも応戦する」とも。
イスラエルとシーア派武装組織ヒズボラの間で激しい戦闘があった南レバノン。2月に訪れた際には、国境を警戒する装甲車の自動小銃の銃口は布で覆われていた。地雷除去、モスクの改修、医療支援……。国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)に参加する各国は、競うように人道復興支援にも力を入れていた。
支援の充実につながる平穏をもたらした要因は、昨夏にあったUNIFILの権限強化だ。
78年の創設以降、主任務はイスラエル軍撤退の監視で、武器使用は自衛のためだけに許されていた。目前の戦闘を止める権限はなかった。レバノン国政府の権威が及ばないなか、反イスラエル勢力とイスラエルの紛争が続いてきた。
昨年8月の新たな国連安保理決議では、レバノン軍の支援が任務に加わり、アフガンと同様、任務遂行のためにあらゆる手段をとる権限が与えられた。南レバノンには初めてレバノン軍1万5000人が展開し、一時2千人だったUNIFILの人員は1万3千人を超えた。
日本の武器使用基準で考えると、旧来の権限は重なる部分が多いが、新たな権限は大幅にそれを超える。ミロス・ストゥルガーUNIFIL上級顧問は「武器使用は最終手段」としながら「強力になった権限があるからこそ安定した状況をつくることができる」と話した。
イラクでは日本の自衛隊も武装し、公共施設の復旧や医療支援を実施した。地域の治安維持を担ったのは英軍など多国籍軍だった。時と場合によって、強い権限を背景にした治安維持活動なしには人道復興支援が進まない現実もある。
■参加の仕方様々――独は海上任務で反発回避
自衛隊は武器を持たず輸送
武器の使用を含めた強力な権限の裏付けがある平和構築活動でも、参加国のかかわり方はそれぞれだ。
例えばドイツ軍。
武器密輸などを取り締まるレバノン軍支援のため、UNIFILの海上任務に1千人を派遣し、船舶の航行を監視している。
ドイツには第2次世界大戦時のユダヤ人虐殺の過去がある。
「イスラエル兵に対して銃は向けられない。地上任務ならだれも許さなかっただろう」とドイツ政府関係者は語る。国境監視など、イスラエルと相対する可能性が高い持ち場はイタリア軍、スペイン軍が中心となっている。
アフガニスタンでは昨年秋、首都地区を受けもつ仏軍が、タリバーン勢力が根強い南部のカンダハル州に援軍を出して掃討作戦に加わった。一方、伊軍は首都地区、西部地区に活動地域を限り、英米軍が進める掃討作戦には参加していない。
日本も、厳しい武器の使用基準やPKO参加5原則などにのっとって、独自に平和構築にかかわってきた。イスラエルが占領したシリアのゴラン高原に展開する国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)もその一つだ。
「武器使用を考えなければいけない場面はなかった」。昨年9月から3月まで派遣された第22次隊隊長の高橋洋二3等陸佐は話す。赴任以降、持ち込んだ89式小銃も訓練で使う以外、武器庫に保管されたままだった。
停戦監視などが本来の任務で、日本は96年から輸送などの後方支援に携わっている。宿営地では、迷彩服を着た自衛隊員がブルドーザーでぬかるんだ地盤に土を足したり、トラックで運んできた水や食料を、フォークリフトを使って倉庫に納めたりしていた。
業務を着実にこなす働きぶりは「世界のどんな任務でも着実に遂行するだろう」(同じ任務にあたるインドのバクシ大隊長)と評価は高い。
だが、平和構築活動が必要な場は、UNDOFのような日本にとって理想的な場所ばかりではない。アフガニスタンやレバノンのような、ある程度軍事的な権限が必要な任務に対するニーズが増えている。
自衛隊は国際平和協力活動に主体的、積極的に対応するとしている。どんな活動に、どこまで参加するのか。日本らしい実績の重ね方とは何か。これまで以上に熟慮していく必要がある。
■転機のPKO――増える内戦・人道危機への対応
日本は国柄にあった関与を
![]() 冷戦後に急拡大する国連PKO |
「増派(サージ)」が国連PKOのキーワードになっている。国連が世界各地に展開しているPKO要員は昨年末時点で10万人近く。海外展開の兵力としては米軍に次ぐ規模だ。交渉が難航しているスーダン西部のダルフール地方などで展開が続けば、14万人規模までふくらむ見通しだ。
PKOは国家間の紛争を対象にしていた。イスラエル・シリア間のUNDOFによる停戦監視がその典型だ。それが今、活動の主軸として内戦や人道危機にも取り組むことが求められている。
停戦監視はもちろん、総選挙実施から軍や警察の再建、「法の支配」の確立など「内政そのものへの関与」が必要になっている。その結果、警察部隊や文民の役割が飛躍的に大きくなった。軍事要員も文民の保護や人道救援を求められる場面が増えている。
一方、米国主導の対テロ戦争の戦場となったアフガニスタンとイラクは国連PKOの対象外となっている。米軍がPKOは足手まといになると考えたからだ。アフガニスタンでは多国籍軍ISAFが治安を担う中、国連が復興支援を進めている。
国連PKOは何を対象に、どこまでやるべきなのか。56年のスエズ動乱以来61に上るPKOの経験を踏まえて、その原則をドクトリンとして明文化しようという作業が国連PKO局で始まっている。
「当事者の同意」を前提にするPKOだが、対立がからみあった内戦では「当事者」が誰なのかすらはっきりしない。「不偏性と中立の原則」や「自衛のための必要最小限の武器使用」についても、それだけでいいのかという議論がある。ルワンダやボスニアで目の前で起きている虐殺や民族浄化に国連が対応できなかった反省からだ。
当事国が自国民を保護する責任を放棄した場合は、国際社会が人道介入できる――「保護する責任」という考えが05年の国連首脳総会の成果文書に明記された。だが「内政干渉」への反発も強く、この理念をどう実行するかについては意見が分かれたままだ。
カンボジア和平から国連PKOに参加した日本だが、対テロ戦への協力を優先してPKOには足踏みしてきた。ようやく今年、ネパールと東ティモールへ要員を派遣したが、数人規模にとどまっている。
国連PKOが直面している新たな課題は、日本外交が進める「平和構築」や「人間の安全保障」とも重なり合う。国連の平和維持機能を強化することは、非軍事大国の国益でもある。多様なPKO活動をどう発展させるかは各国次第だ。日本も現場の経験を通じて、自らの「国柄」にあったPKOのルールづくりを提唱していくべきだ。(ニューヨーク=水野孝昭)
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