|
ここから本文エリア 現在位置:asahi.com > 新戦略を求めて
|
![]() ※クリックすると、拡大します |
陸上自衛隊は即応性を高めるため、重厚型から軽量機動型への転換をめざす。冷戦期には外敵が本格侵攻するのに数カ月を要すると考えられたが、「新たな脅威」とされるゲリラや特殊部隊の攻撃、大規模災害などには、遅くとも数日で対応しなければならないからだ。
元陸幕長の冨澤暉・東洋学園大客員教授は「核ミサイルの攻撃などに比べると、テロやゲリラは今後十分にありうる。国内では絶対に許さないという能力と気概が必要になる」と話す。
このため対機甲戦のための戦車や火砲など大型装備を削減。例えば戦車は900両から600両に減らす。その代わりに、対人戦闘を重視した編成や訓練へと見直しを進めている。
代表的なのは、3月に新編された戦闘部隊「中央即応集団」(約4100人)だ。テロやゲリラ攻撃に緊急対処するとともに、国際協力活動を仕切るという二つの任務を帯びている。
国際活動では迅速に対応できるよう、例えば「国連安保理決議の採択から30日以内、複雑な平和維持活動の場合は90日以内の派遣」(運用幹部)を目安にするという。同集団の山口浄秀司令官は「特定の地域に絞らず、世界各地のPKOを調査研究したい」と話す。
このため、先遣隊となる中央即応連隊(約700人)を栃木・宇都宮に、専門教育・訓練を受け持つ国際活動教育隊(約80人)を静岡・駒門駐屯地に作る。また全国五つの方面隊に輪番で、あらかじめ訓練や教育を施した部隊を設ける待機制度も導入する。
■海自――輸送艦の大型化へ着々 海外の被災地救援で実績
海上自衛隊の役割は、日本周辺の国際情勢が冷戦後、激変したのに伴って大きく変化した。日本のシーレーン(海上交通路)に対する脅威は、旧ソ連海軍から、テロ組織や武装海賊、大規模災害などの「新たな脅威」へと変質した。
各国の海洋政策に詳しい秋元一峰・元防衛研究所主任研究員は「冷戦期は、共同行動する米海軍のためのシーレーン防衛に力点がおかれた。現在は中東からの原油などの輸送路の安全確保が重要になったが、日本単独では難しく、沿岸各国との協力が一層求められる」と話す。
海自には、日本の防衛に加え国際活動という新たな主任務が加わった。このため主力となる約50隻の護衛艦の運用方法を見直し始めた。活動の基本単位を従来の8隻から4隻に減らし、迅速で小回りのきく態勢にすることで、国内外の多様な活動への柔軟対応をめざす。
またP3C哨戒機など作戦用航空機を170機から150機に、また護衛艦も数隻削減する一方で、国際協力業務に必要な物資や人員の輸送力アップのため、輸送艦や補給艦の大型化に取り組んでいる。
かつては基準排水量2千トン以下の輸送艦が中心だったが、現在は8900トンの大型輸送艦3隻(おおすみ型)や、長期活動のために必要な1万3500トンの大型補給艦2隻を保有。04年に起きたスマトラ沖大地震・津波での国際緊急援助活動では、陸自ヘリ5機を積んだ大型輸送艦を中心に護衛艦、補給艦で部隊を編成、現地で2カ月余に及ぶ救援活動を続けた。
国際協力活動としては、対テロ対策としてインド洋で続ける多国籍軍への給油活動が6年目に入った。11カ国の艦艇に燃料を補給。補給艦と護衛艦2隻からなる艦隊が、日本の原油タンカーの航路を事実上、安全確保する効果もあり、政府内には「長期化しても国益に合致している」という評価もある。
■空自――国際活動で空輸力に重点 次期型機の開発に着手
航空自衛隊は、外敵の航空攻撃対処を重視した冷戦期の態勢を見直す。戦闘機を約300機から約260機に減らす一方、国際協力活動に必要な空輸力の向上のため、輸送機の大型化・長距離化に取り組んでいる。
海外運航で物資輸送できるのは現在、C130(16機)と政府専用機(2機)だけ。事実上、愛知・小牧基地の第1輸送航空隊(約800人)に頼り切っている形で、同じ要員が繰り返し派遣されている。
C130は、92年のカンボジアの国連平和維持活動(PKO)以来、アジアから中東、中南米まで各地を飛んできた。ただ機体が小さく、国際緊急援助活動で飛んだホンジュラスでは到着に3泊4日かかり、インドネシアでも2回の燃料補給が必要だった。
このため防衛省は01年度からCX次期輸送機の開発に着手。国内運航用のC1輸送機の後継機として、搭載量、航続距離ともに約3倍の能力をもたせる。搭載量はC130と比べても約1・5倍増で、従来は無理だった自衛隊の手術車や水タンク車も運べるようになる。
空自は戦闘機などへの燃料補給のために今年、導入されるKC767空中給油・輸送機も輸送機として活用する。防衛省の構想では、海外運航が可能な輸送機の数は今の3倍になるが、新編部隊が本格稼働するのはまだ5年以上も先のこと。それまでの間は、今と同じC130に頼らざるを得ない。
「十分な態勢ができるまでは、機数も要員数も今のまま。高まる期待にどう応えるかが難題」と運用幹部は言う。
■ミサイル防衛――完成に予算1兆円超 米との付き合い、どこまで
政府が導入を急ぐ弾道ミサイル防衛(BMD)は、宇宙や大気圏を舞台に、日米が一体となって海上・地上の複数のセンサーや迎撃装置を連動させ、攻撃に対処する巨大なシステムだ。
防衛省は11年度を目標に、新型レーダー4基のほか、迎撃ミサイル・SM3を積んだイージス艦4隻、地対空ミサイル・PAC3の高射隊を16個それぞれ配備する。今年はその「配備元年」にあたる。空自はPAC3を3月末に埼玉・入間基地に初配備。海自も12月にイージス艦の迎撃実験を予定している。
今年度のBMD予算は前年度比約30%増の1826億円。北朝鮮による昨年の弾道弾発射が導入計画を加速させた。計画が始まった04年度からの累計は約5500億円にのぼる。
導入計画は順調に進みそうだが、その一方で「課題や問題は山のようにある」と軍事専門家らは口をそろえる。
米国は実験開発を重ねながら性能を逐次更新させるスパイラル方式をとっているが、日本の現システムがひとまず完成するのに必要な総予算は1兆円を超すのはほぼ確実。米側の開発はその後も続くことになるが、日本がどこまで付き合うのかは何も決まっていない。
また防衛省は命中精度やカバーエリアばかりか、米国から何発の迎撃ミサイルの引き渡しを受けるのかも公表していない。実は同ミサイルは生産に数年単位の時間を要するとされ、「十分な弾数というにはほど遠い」(同省幹部)という悩みの種を抱えている。
さらに日米両政府は実戦配備と並行し、99年度から能力向上型の迎撃ミサイルの共同研究・開発に取り組んでいる。
完成は10年近く先の見通しだが、米側はこの迎撃ミサイルの導入を、ミサイル防衛に意欲をみせるオーストラリアにも非公式に打診中。日本側に輸出を認めるよう求めるならば、武器輸出3原則をめぐる激しい議論になるのは避けられない。
ここから広告です
広告終わり